第39話新たなる脅威
「子分をやっつけたら、もっと厄介な親玉が出て来たって感じだな。」
「そんな冗談言うてる場合ちゃいますよ?」
「流石に中国軍は無茶だよな。」
ゲロッグは一応制圧したが、ゲロッグに資金及び物資を援助していた中国が新たなる脅威として浮上した。まぁ、それは今に限った話ではない。中国はいよいよ世界の脅威になっていた。
「中国海警局(中国版海保)には散々な目に遭わされて来たからな。中国海軍は今や米国を凌ぐ世界最大級の実力を持つ。その脅威の度合いはゲロッグの比ではない。」
「流石のSSTも中国海軍相手だと、分が悪いですね…。」
「海自でもきびしい、つーか無理だろ?」
「これじゃあイタチごっこじゃないすか?」
「だとしても我々のやる事は一つ。日本の海上交通を維持する事だ。中国がその気なら我々にもやれる事はあるはずだ。」
「つーか俺達軍隊じゃねーし。」
「海外からは準軍事組織である沿岸警備隊相当に見られてますが?」
「外国からどう見られていようと、日本の法律では海保は海の警察だ。軍隊色の強いSSTがグレーゾーンギリギリのラインだ。」
「確かにSSTの使用している武器は防衛省・自衛隊が開発したものですもんね。」
その頃本庁では…。
「ゲロッグは叩くべきではなかったか?」
「まぁ、いずれはこうなる事は分かっていたから、眠れる獅子をどう黙らせるかは、課題だろうな。」
「とは言え、現時点で中国が日本に戦争をしかける確率は低い。と専門家はみている。日米豪印の枠組みもあるしな。」
「どこまで機能するんですかね?中国には1000発以上の核兵器があるんですよ?」
「山久長官?そんな事で怯む事ではありませんよ?こちらには米国の核兵器が抑止力としてありますから。」
「核の傘か…。」
「しかし、ロシアや北朝鮮等とも蜜月関係にあります。道を間違えれば第三次世界大戦に発展しかねません。」
「まぁ、それはさておき、米国海兵隊と当初の目的であったゲロッグの壊滅には成功したんだ。それでまずは良しと言う事にしようではないか。」
「あ、長官!この事は内密にお願いしますよ?世間では海自のSBUと米軍がゲロッグをやっつけた。と言うシナリオで通してあるんですからね?中井総理にはくれぐれも余計な事は言わないで下さいよ?対ゲロッグ戦でSSTは死者を出してしまっているんですから、そこはオブラートに包んで下さいよ?」
「分かった。でも何故SSTの手柄なのに、わざわざ海自に手柄を譲る事になったんだ?」
「海保が海外で軍事行動に参加したと言う事実が明るみに出れば、世論がうるさいですから。と言うより海上保安庁法に抵触する恐れはあります。」
「日本側(SST )に1名の死者を出してしまっている事も隠しています。」
「しかし、それでは亡くなった大山の死が浮かばれません。嘘の報告で首をしめるのは、山久長官貴方なのですよ?」
「残念だが、大山の死は闇の中だ。すまん。大山の死を政争の具にはしたくないからな。それ位の事は分かっている。」
「そこまで分かっていながら、何故SSTを出動させたのですか?」
「シージャックの借りを返したいと神隊長が直訴して来てな。練度的にも不足はないし、出動を許可した。米国側からも人を出せと突っつかれていたしな。それにこの案件は林次長に一任していた。全ての決定権を私は次長に託した。」
「現場を一番よく知る男の判断だ。それに対ゲロッグ戦において、SSTは不可欠の部隊であった。史上初の海保によるテロリスト制圧作戦。まぁ、85点くらいかな。大山の死は不運だったが、日本は米国と共に国際テロ組織ゲロッグを壊滅に追い込んだ。海自の手柄になったのは非常にシャクだが、SSTに対する米国海兵隊の評価はうなぎ登りだ。米国政府高官の話だと、相当な戦力を日本のコーストガードは持っているとたちまち噂になったらしい。」
と、山久長官は誇らしげに語っていた。




