第35話報復その①
「たかが、SST隊員一人死んだ位で何を弱気になってる?これで我が国がゲロッグに対する報復をする要因が出来たではないか?」
と、山久海上保安庁長官は中井総理に言われたと言う。
「林君?この事は絶対に現場には知らせるな。」
「そうですね。しかし総理は本気でその様な事を…?」
「思っているのだろう。総理にしてみれば只の海保隊員一人。駒の一部わずかでしかない。」
「官邸はどうやってゲロッグに報復するつもりでしょうか?」
「海保や海自による日本単体の報復ではなく米国や西側諸国を巻き込んだ形でのゲロッグ解体を目指していると推察される。」
「たかがSST隊員とは、総理の発言とは言え聞き捨てなりませんね。」
「中井総理は政界きっての毒舌の持ち主だからな。それに大山が死んだのは海保にとっては不覚だからな。ここを突かれると痛いのは確かだな。」
「総理、ゲロッグとしては150人以上の戦闘員を全員射殺した訳ですが、逆の立場からすれば、日本への圧力を強める事にもなりかねませんよね?」
「我が国の自衛隊と米国の力があれば、ゲロッグ壊滅等造作もない事だよ。」
「とりあえずスーダンとは国交を断絶する。善良なスーダン国民には申し訳ないが、こちらとて被害を被っている。ゲロッグには地獄を見て貰う。」
「海保と自衛隊はゲロッグ壊滅にあたって準備を進めて欲しい。」
「了解しました。」
「ジブチの自衛隊基地に戦力を集結し、米国海軍原子力空母ロナルド・レーガンを支援しつつ、スーダン国内のゲロッグ本隊を叩く。」
「米国側とのコンタクトは?」
「安心せい。既に米国側も了承済みだ。いかんせん喜望峰を航海する船舶の被害が甚大だからな。米国としても目の上のたんこぶで、ゲロッグ壊滅にはかなり乗り気だ。」
「大山2正の死は無駄では無かった様ですね。」
「と、思いたい。」
「でも後ろ楯となっている中国の刺激にはならないのでしょうか?」
「中国海軍は空母4隻、原子力潜水艦50隻以上を持つ今や、米国と肩を並べる戦力を持つ。とは言えゲロッグ暗躍の裏には大量の中国マネーが流入しているのは間違いない。だからといってこれ以上ゲロッグの悪行に目をつむってはいられない。と、日米の首脳は考えているのだろう。」
「海上保安庁にあっては、国内のゲロッグ海上テロ行為を防ぐのが主任務となる。任せたぞ、山久君、林君。」
「はい!」
「大山の死は無駄では無かったな。」
「はい。寧ろゲロッグ壊滅のキーマンになりましたね?」
「まだ24歳か…。人生これからだって時に。神様も残酷な運命を与えたな。」
「大体人事に問題があったのでは無いですか?」
「余りにも若いファーストユニット班長の人事が?」
「それだけの実力がある奴だからファーストユニット班長に抜擢されたんですよ?そこは確かです。」
「保大出のキャリアだから気を使ったのでは?」
「例えそうだとしても、もっと支援を待つべきだったのでは?」
「でもSSTの実力は世に示せた訳じゃないですか?」
「150VS1ですからね。」
「そこは海保の誇るポセイドンズだからな。当然の結果と言えば当然ではあるがな。」




