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ポセイドンズ~海上保安庁特殊警備隊(SST)~  作者: 佐久間五十六


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35/103

第34話同期の死

 横浜沖で発生した2隻のオイルタンカーシージャック事件はなんとか海保が制圧し、人質の全員救助にも成功した。がしかしSST隊員1名が殉職してしまった。

 ファーストユニット班長大山尊(24)2正(死亡後二階級特進で、三等海上保安監)神の保大同期であった。相当な至近距離から発射されたカラシニコフ小銃の弾丸は、大山の防弾チョッキを貫通。ギリギリまで大山は気付いていなかった。と、近くにいたSST隊員は語る。一説には倒したと思い込んでいたゲロッグ戦闘員がまだ生存していて、大山班長は発砲を受けたと言う報告もある。

 「大山2正!」

 「まだまだ人生これからじゃないですか?」

 「小さなお子さんと奥さん残して何してんすか?」

 「蘇生は無理か?」

 「はい。残念ながら既に死亡しています。」

 「よし、後は横浜海上保安本部にまかせてSSTは撤収だ。」

 「はい!」

 「同期の親友が亡くなったのに、神隊長冷静っすね?」

 「神隊長は元々感情を露にする様なタイプじゃねーからな。」

 「でも、心中穏やかじゃねーぜ?あの目は。」

 「確かに作戦はほぼ成功したのに、全然喜んでませんしね。」

 「今はそっとしておいてやろうぜ。」

 「そうですね。」

 「大山…。まだ実感出来ねーわ。貴様と出会ったのは保大合格発表日の事だったな?たまたま近くにいた貴様と合格を喜びあったのはまだ6年前だぞ?それからは色々あったな。つーか大山、貴様家族を残して逝くのは駄目だろ?まぁ、もう過ぎた事だ。独身の俺が未亡人の由香里さんと美緒(みお)くんの面倒は見てやるから安心しろ。死ぬの早すぎだろ?馬鹿野郎…。」

 「神さん!」

 「由香里さん!」

 「あぁ…。貴方…ううぅ…。」

 「パパどうしちゃったの?」

 「美緒くん?パパはね遠い所へ行ってしまったんだよ。」

 「遠い所?もう会えないの?」

 「うん美緒くん。パパとはここでお別れなんだ。」

 「え?何でパパ死んじゃったの?パパ起きて‼起きてってば!」

 「やめなさい美緒!神さん?尊(夫)は立派な海上保安官でしたか?」

 「はい。立派な最後でした。由香里さん、今だけは沢山渇れ果てるまで泣いて泣いて大山尊をしのびましょう。」

 こうして大山三等海上保安監の葬儀はしめやかに行われた。ファーストユニット班長には大山に代わり、野田3正が昇格し2正となった。

 「神?ちょっと良いか?」

 「林次長?」

 「何言ってるんですか?こんな時に?」

 「ファーストユニットの班長が殉職したんだぞ?来ない訳にはいかないだろ?」

 「まぁ、そうですけど…。」

 「海保内ではSSTは何をやってるのかと、お叱りの声もあってな。」

 「そんなのどうとでも言えるじゃないですか?」

 「まぁ、そう怒るな。それよりゲロッグは大怒りだぞ?」

 「そりゃあそうでしょ?ゲロッグの戦闘員は容赦無く射殺しましたからね。」

 「米国からもいきすぎた武力行使は避けるよう国交省に通達があった。もう少し理性的に…。」

 「ざけんなよ!こちらとら大山を殉職させてしまったんすよ?」

 「落ち着け。神?私は今回の一件の結果に不満はない。断っておくが。」

 「大山は簡単に死ぬ様な(タマ)じゃないですよ?同行していたファーストユニット隊員の話からしても、これは限り無く事故(アクシデント)ですよ?」

 「SSTがそんな事では困るな?」

 「ゲロッグ戦闘員はA船B船合わせて150人以上いたんですよ?しかも標的はオイルタンカーでのシージャック。ベストは尽くしましたからね。」

 「そうか?」

 「これだから現場の実情を知らない幹部海上保安官は困りますね?」

 「あれほど、死者を出すなと忠告しておいたのに…。」

 「死んじまったのは仕方無いっすよ。大事なのは再発防止と遺族のケアでしょ?」

 「それはそうだな。間違った事は何も言っていない。」

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