第26話昇進の目安
海保での昇進の目安は年齢だ。とは言え、実績や経験値も加味される。だが、保安監クラスになると単純な年功序列と言う訳にはいかない。また、海保は国土交通省の出先機関の為、昇進人事を預かるのは、国土交通省の官僚達である。それに加え、海保制服組トップが次長・海上保安監であるのに対し、海保トップの長官は時の内閣の任命を受けた政治家が務める事になっている。だから、どんなに頑張っても、現場にいる内は海保のトップには立てない。
だが、神の様な保大出のキャリア組ならば、5年もすれば3等海上保安監クラスには成れるだろう。そこから先は結果を出した者にしか見えない景色がそこにはある。海保も警察や消防や自衛隊と同じ階級ピラミッド型の組織である。階級上の人間の命令は年齢を問わず"絶対"であり、逆らえば最悪の場合懲戒解雇となる。
「お呼びでしょうか?林次長?」
「遅いぞ神2正!やっと揃ったぜ。待ちくたびれたよ。」
「大切な話があってな。こうしてSST各班長に集まって貰った次第だ。」
「そんな事今時メールで良いのに。」
「まぁ、そう言う訳にもいかないからこうして集まって貰った訳。」
「海保長官山久茂より通達。日本国内にある国際テロ組織ゲロッグのアジトに強制捜査に入れ。場所は…。」
「と言うか、それは警察の仕事では?」
「警察も暇じゃないとさ。やれるなら海保に任せるって。」
「まぁ、我々は海の警察ですからね。」
「公安は何を考えてんだ?」
「特別警備隊を導入すれば事は早いじゃないですか?」
「そうだぜ。何でわざわざSSTが出張らなきゃならないんですか?」
「それがどうやらあるらしい。ゲロッグの日本支所には相当ヤバイ"ブツ"や武器を大量に密輸しているらしい。」
「マジかよ?」
「ある程度内調は終わっているらしいんだが、ガチでヤバイぞ?」
「林次長、脅さないで下さいよ?」
「本来なら自衛隊にお願いする様なレベルの案件だが、SSTなら何とかしてくれるだろうと思い引き受けた次第だ。」
「そう言うのを無茶ぶり言うんですよ?」
「詳しくは加藤2等海上保安監と梨田一等海上保安監・乙より聞いてくれ。」
「はい‼」
「気合い入ってるね!」
「良い傾向ですね。」
「SSTとしても、海保長官の勅命とあれば、退くわけにはいかないんですよ。なぁ、神2正?」
「は、はい。」
「何、今から緊張してるねん?そんなんじゃ本番ガクブルだぞ?」
「若いんですから無理もない。」
「つーか、何でキャリア組がSSTにいるんですか?」
「まぁ、それは色々ありまして。訳ありって事で。」
「まぁ、良いじゃねーか。配属2年目で2正なんてとんだエリートだ。」
「無駄話は済んだか?」
「無駄話って…。」
「梨田一乙の言う通りだ。そろそろ作戦内容のブリーフィングをしたいのだが?」
「ここは仲良しクラブじゃねぇ!海上保安庁最精鋭部隊SSTが聞いて飽きれるぜ。」
「加藤2監の言う通りだ。油断してると死ぬぞ?それ位危険なエネミーと言う事を理解して貰いたい。」
「SST総出の今作戦。失敗は許されないぞ?作戦内容はこの書類に書いてある。各ユニットに戻り次第部下に説明しろ。」
「了解!」
「作戦名はブレークダウン。日本でのゲロッグの活動は全て終わらせるぞ!」
「はい‼」
「矢部隊長と神セカンドユニット班長を残して解散!」
「神、ファイト!」
「あざっす。」
「君達ファーストユニットとセカンドユニットはゲロッグメンバーを生け捕りにして貰いたい。」
「加藤2監?激しい銃撃戦も予想されますが?」
「そんな事は百も承知だ。出来る範囲で構わない。ゲロッグの日本支所には200人のゲロッグメンバーがいると見られている。」
「梨田一乙?死を覚悟でそこまで部下に無理強いは出来ません。」
「神班長、矢部隊長、君らなら出来る。」
「なんすかそれ?俺達は道案内しますから加藤2監と梨田一乙で生け捕りにしたら良いじゃないですか?」
「おい!神…。」
「分かった。道案内だけしてくれ。加藤2監と私で何人か生け捕りにしてみる。道案内はセカンドユニットに任せたい。良いなそれで?」
「分かりました。」




