第20話ゲロッグの後ろ盾
「皆、聞いてくれ。」
と、矢部班長はセカンドユニットのメンバーを集めてこう切り出した。
「今朝、防衛省からイスラム武装勢力ゲロッグについての情報提供があった。」
「マジですか?」
「まぁ、聞いてくれ。ゲロッグの後ろ盾は、はっきり中国だと分かったそうだ。武器や弾薬だけではなく、食糧や資金援助までしているそうだ。」
「そうですよね!そうでもしなきゃアフリカの内陸国のスーダンから南アフリカの喜望峰で海賊活動なんて出来ないですよね?」
「つーか、それが分かった位でどうしようもなくないすか?」
「そこなんだよ!一応ジブチにいる海自の部隊に喜望峰周辺のパトロール任務を依頼したんだが、分かっている通り中東地域は一触即発の状況で手が回らないそうだ。」
「米国に依頼するのは?」
「お前馬鹿か?日本の海保如きの発言で動いてくれる訳無いだろ?」
「確かに。」
「海自と連携して対応するしかなさそうですね。」
「報告は以上だ。解散。」
「矢部班長!」
「どうした、神3正?」
「ゲロッグの実態について、もう少しこちらの方でも調べてみては如何でしょうか?」
「好きにしたまえ。だが我々の力ではどうしようもないテロ組織だぞ?」
「とにかくやらせてください!」
「分かった。やってみろ。」
「はい!」
「ゲロッグ テロ組織 スーダン 検索。」
「おっ。あったあった。」
「矢部班長?良いんですか?神3正に丸投げする様な真似をして?」
「丸投げ?それは違うな。これは神3正の方から志願して来た案件だし、調べて絶望するのは折り込み済みだ。」
「そんなにヤバイ奴等なんすか?」
「ゲロッグの支持母体は最近見なくなったがあのISだ。」
「中国は、ISを利用してアフリカ中央部の最貧国スーダンを支援する形でその見返りとして、アフリカ中央部に眠る莫大な資源開発に着手している。」
「スーダンには、まだ未開発の資源が?」
「あぁ、スーダンはずーっと内戦していた国であり、欧米や日本の開発の手が回っていない地域だからな。」
「忘れられた戦争…ですね。」
「スーダンでは300万人以上の罪の無い犠牲者が出たからな。欧米の代理戦争としては最悪だな。」
「結局内戦は国連の協力で国を南北に分断する形でなんとか終結させた。」
「それって最近の話ですよね?」
「まぁそうだな。」
「ゲロッグが暗躍し始めたのはその頃からだな。習近平国家主席の打ち出した一帯一路政策により、中国のアフリカ進出は加速した。」
「どうだ?神3正、調べても無駄だっただろう?」
「いえ、まだリサーチは終わっていません。確かにゲロッグの支持母体はISや中国が関わっている様ですが、どこまで中国が関わっているか浸潤度は不明でそれを突き止める必要があります。」
「それを知ればさらなる無力感に苛まされるだけだぞ?」
「良いんです。それは分かっていますから。本当に良いんです。」
「国際テロ組織ゲロッグは、2018年頃から本格的な海賊行為を開始。2020年代に入り米国から国際テロ組織のレッドリストに指定。中国は表立ったテロ行為への関与は否定するが米国のCIAが発見。スーダンをテロ支援国家に再指定。」
「なるほど、こりゃやべぇや。」
「だろう?言った通りやないか?」
「矢部班長!?」
「調べはついてんだ。そんな表立った情報くらいはな!ISの隠れ蓑にされてんだよ。スーダンは。悲しいよな?内乱で困っているのに、ISやら中国やらが絡んで来ちゃ、そりゃあ恨みの一つや二つ有る訳だ。そう言う国際秩序を生み出す日本や欧米にも恨みは向く。」
「確かにな。でもそれはお門違いだって事を分からせなくてはな。」
「あのISにですか?」
「あぁ。」




