第15話プライベート神海人
「神3正のプライベートって謎だよな。」
「確かに。」
「おい、そこの二人!私語は慎め!」
「はい!すみません。」
「後で話がある。副班長室に来い。」
「はい!」
そして訓練後…。
「木村2士、細谷3士入ります。」
「許可する。」
「貴様ら訓練中に私のプライベートを詮索していた様だが?」
「はい。それは事実です。」
「私は見ての通り堅物だ。これと言った趣味はない。強いて言えば推しのアイドルがいるくらいだ。」
「アイドル?」
「ののくろの春花ちひろだ。」
「かなりマニアックですね。」
「まぁ、ほぼ地下アイドルだからな。」
「彼女はいないんですか?」
「ちひろ様に失礼だからあえて彼女は作っていない。」
と、まぁ根掘り葉掘り神海人のプライベートを木村2士と細谷3士は思い切って聞いてみた。
「ののくろかよ(笑)。」
「神3正もマニアックだよな?」
「あぁ、まだ若いしな。」
「プライベートは人それぞれだからな。俺だって嫁がいなきゃ追っかけアイドルしたいよ。」
「え?キムさん結婚してはるんですか?」
「まぁ、人並みにな。」
「細谷も良い年頃なんだし、そろそろ真剣交際を考えてみれば?おせっかいかもしれないが。」
「自分はまだ早いっすよ。別に彼女いなくてもどうにかなってますから。」
「そう言って20代が過ぎ30代を過ぎ結婚適齢期を過ぎる奴を俺は何人も見て来た。だから何があるか分からない俺達みたいな職業の人間には伴侶が必要なんだよ。」
「地下アイドルなんて追っかけてないで、リアルな恋愛をしろとでも?」
「神3正!?」
「貴様ら今日この後時間あるか?」
「あります。」
「ちょっと付き合ってくれ。」
と、3人は勤務終了後ある場所へ向かった。
「キムさん…。ここ例の地下アイドルがいる場所じゃないですか?」
「おい、何してる?着いたぞ。」
「は、はい。」
そこは音響のボリュームマックスで、隣の人の会話も聞こえない様な正しく"地下アイドル"のライブ会場であった。すると、突然神3正はペンライトを二本出しオタ芸を開始した。
「どうだ?驚いただろう?史上最年少のSST副班長もただのオタクだったってな。」
「キムさん…。開いた口が塞がらないです。」
「俺もビックリだ。流石とも言えるな。ま、見守るか。つーか音スゲェ。」
「寝顔と歌声で世界を照らし出す…。」
ペンライトを握る神海人は普段のクールな様子とは正反対であり、その様子は正にオタであった。
「いつかいつか今こそそこにある。」
「決まった!!」
「他の隊員には内緒だからな?」
「はい。もちろんです。墓場まで持って行きます。」
「よし、腹へったな。何食う?」
「肉食いたいです。」
「自分もです。」
「じゃあ焼き肉だな。」
「今日は無礼講だ。飲んで食って騒げ!」
「神3正の奢りですか?」
「あぁ、ののくろのライブに付き合ってくれたお礼だ。」
「へぇ。キムさんには二人の御子息がおられるんですね?」
「はい。可愛い限りです。」
「5歳の男子と3歳の女子か。それは可愛い盛りだな。」
「細谷3士は独身貴族っぽいな。」
「はい。独身を謳歌しております。」
こうして、3人は絆と繋がりを深めた。
「部下にはあんまり知られたくなかったけど、オープンにしたことで、少しだけ気持ちが楽になった。」
と、神3正は語っていた。まぁ、人には誰も知らない秘密は往々にしてあるものだ。
「キムさん、これは大きなウィークポイントですね?」
「いや、ストロングポイントだろ(笑)。」