第14話保大出でも
「SSTにいる人って海保校(海上保安学校)出身の人が多いですよね?」
「ああ、一応年齢規定があるからな。」
「でも神3正みたいに保大出身の人もいますよね?」
「神3正は特別だよ。小野田元副班長がいれば神3正はSSTに来る事は無かったとは思うけど?まぁ、保大出でも特別視はしないと言う上の判断なんじゃない?」
「とは言え、慣例なら保大出のキャリアは2~3年で転勤し階級を上げる仕組みだから、SSTにいるのもその位と考えるのが一般的かな。」
「え?それは流石に寂しいっす。」
「そんな事言われてもな。海保の伝統だし。」
「神3正?保大って入るの大変でしたか?」
「うーん。まぁ、それなりに勉強したけど、俺の年代は比較的倍率低めだったし、すんなり合格したって印象が強いよ?」
「保大では具体的に何を学ぶんですか?」
「そうだな。色々学んだよ。口頭では言い表されないくらい沢山ね。」
「海保校でも色々学びましたが、やはり保大出の人にペンで勝つのは無理なんですかね?」
「まぁ、学士号(一般大学卒業程度)を得て行こうと思えば大学院にも行ける様になったからな。海保校とはその辺りが違う所かな。」
「保大卒業後は直ぐにいきなり3等海上保安正っすよ?3等海上保安士スタートの海保校出とは大違いじゃないすか?」
「まぁ、保大出ってチヤホヤされるのは最初だけだよ。保大を出たら任務と訓練に集中するだけだよ。」
「神3正は全然エリートっぽくないですね?」
「まだ若いからじゃねーか?23だぜ?」
「年下の指揮官なんて最初は抵抗ありましたけど、いざ任官されたら超腰の低い副班長だからビックリしましたよ。」
「あんまり偉そうにするなって保大できつく言われたからな。」
「でも、言われて簡単に出来る事じゃないっすよ?」
「保大出=エリートって言う認識がないからかな。」
「周りは色々言いますよね?」
「そうだな。色々雑音は耳に入って来るな。」
「それでも自分なんかエリートじゃないって思えるのってある意味凄い事ですよ?」
「そうかな?」
「そう言う素直な所が神3正の良い所なんだろう。」
「矢部班長!?」
「細谷3士と神3正がいなくなったって班内では大騒ぎ。まぁ、大阪特殊警備基地も広くない。ヒソヒソ話をするのは喫煙所位かな思うたんや。神3正俺にも一本吸わせろ。」
「矢部班長どうぞ!と言うか矢部班長喫煙者だったんですか?」
「それセカンドユニットでは常識っすよ?神3正。」
「俺は班内一、いや隊内一、いや海保一のヘビースモーカーだろうな。」
「潜水班以外は喫煙許可されてるんですね。」
「保大では学内全面禁煙でしたけど。」
「学生のうちはそれでもいいかもしれないが、それは建前だ。現実は違う。酒もタバコも自己責任の範囲内で許可されている。」
「矢部班長の様な破天荒な班長が上司で良かったです。」
「俺は海上保安官の鏡なんかじゃねー。こう言う班長が一人位いても良いだろ?」
「自分には正しくも悪くも判断しかねますが、鏡の様な海上保安官なんていません。皆同じ人間ですから。」
「お!話が分かるね。神3正!君海上保安官の素質あるよ。」
「説得力がまるでありませんね。(笑)」
「これ吸ったら戻るぞ!」
「はい。」
「何処行ってたんですか神3正!」
「いや、ちょっと細谷3士と小話を…。」
「それは勤務時間後にして下さい。」
「すみませんでした。」
「細谷3士は悪くないんだ。自分が誘ったからな。」
「そうなのか、細谷3士?」
「ええ。まぁ、そんな感じです。」
「副班長でもルールはしっかり守って下さいね?神3正?」
「あぁ、すまん。以後気を付けるよ。」
と、ノムケン(1士)にたっぷりお仕置きを喰らった神3正であった。