表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか  作者: 宮崎世絆
幼少期編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/61

44 限界突破なんです

 腕輪が砕け散り、封印の効力がなくなった。


 封じられていた自身の魔力を無理矢理引き出した反動なのか。

 レティシアがゆらりと立ち上がったと同時に、ダムが決壊した洪水の様に、身体から膨大な魔力が一気に溢れ出した。


 鍛錬場が一面、魔力の光で眩く輝く。


(っ?! ……ま、まずい、このままじゃ魔力が暴走する……!!)


 溢れて出す底無しの魔力をどうにかして抑えようと、体内に魔力を戻すイメージで両手で両腕を抱き締め、強く歯を食い縛り俯いた。

 震える身体を押さえ付ける様に、力の限り腕を握り締め、暴走しようと暴れる魔力を懸命に抑えようとするが、一度溢れた魔力は一向に収まらない。


 上手く魔力をコントロール出来ない事態に、本気で泣きそうになった。


 もし、このまま暴走すれば。鍛錬場どころか、アームストロング屋敷が吹っ飛ぶ。

 多分、領土内にも多大な影響が及ぶだろう。


 ならば被害の出ない上空に魔力を撃ち放とうかと思ったが、それだとのちに面倒になる事は目に見えている。


(だ、駄目、抑えきれない……! 考えろレティシア! どうすれば暴走しないで魔力をコントロール出来るか、落ち着いてよく考えろ!!)


 このまま抑え込んでいるだけでは暴走は避けられない。


 なら、この収まらない魔力を、いっそこの場に()()()()()事が出来れば、と咄嗟に考えた。


(そ、そうだ! ()()のではなく、()()イメージで身体に定着させれば……!!)



「「レティシア!!」」



 レオナルドとルシータの緊迫した声が、遠くから聞こえた。レティシアの魔力に気付いた二人が、駆けつけて来てくれたようだ。


 これ以上心配させる訳にはいかない。


 レティシアは気合いを入れ直し、焦らずゆっくりと、自分の身体に魔力を纏わせていく。

 身体の隅々まで。髪の毛に至るまで。


 全身に自身の魔力を纏わせていった。


 暫くして、漸く全ての魔力を纏わせると、どうにか魔力を安定させる事に成功した。


 自身を抱き締めていた両手をゆっくり解きながら、張り詰めた糸を切る様に、深く長い溜息をついた。


(あーーーー……マジで、びびった)



「レティシア……」


 すぐ側で戸惑う様なレオナルドの声が聞こえた。


 閉じていた眼を開いて、声のする方へ顔を向けて安心させる様に微笑んだ。


「心配させて、ごめんなさい。もう、大丈夫だから」


 レティシアを呆然と見つめたレオナルドとルシータは、レティシアの顔を見て、更に驚いた様に目を見開いた。


「? どうしたの? 二人揃って、そんなに驚いた顔をして」


「……レティシア……。身体は……何ともない、のだな?」


 レオナルドは唖然としながら、っといった感じで尋ねてくる。何だか様子がおかしい。


「?? う、うん。何ともないけど……?」

「……レティ……。今の、自分の姿に……気付いて、いないのか?」

「えっ?」


 ルシータの呟く様な声の、その言葉の意味が分からず、首を傾げた。


 するとその時。


 髪留めが外れていたのか、背後からの冷たい風にレティシアの髪が靡いて、美しく()()()自分の()()の長い髪が、サラリと風に乗って見えた。



「……は?」



 お尻まで伸びる自分の髪を勢いよく掴むと、マジマジと凝視した。


 髪の毛は、一本一本綺麗に発光していた。



 なるほど。道理で夜なのに、やけに明るいはずだ。



(って、なんじゃこりゃあああ嗚呼ぁぁぁーー!!)



「レティ、両瞳も色が変わっている。髪と、同じだ」


(えええええぇぇぇーー?! 目も!?)



 レティシアは自分の姿を想像した。



(まるでスーパー○イヤ人?!)



 いや、発光した直毛に変化だけで髪は逆立ってはいない。この長すぎるロングヘアが逆立ってたら、もう目も当てられない。



(……大丈夫だ。多分今の私は、ただ神々しいだけだ)


 レティシアは落ち着きを取り戻した。


「えっと、……多分、暴走しそうになった全魔力を、全身に纏わせてたから、だと、思う。時間が経てば元に戻る、と思う、……多分」



 それを聞いたレオナルドとルシータは、同時に大きな溜息をはいた。


「……兵を向かわせず、我々が来て良かったな。このような女神のレティシアを見られたら、大変な騒動になるところだった」

「レティ!! 膨大なレティシアの魔力を感じて来てみれば、女神が降臨していたと思ったぞ!? 少しはこちらの身にもなってくれ!!」


「はい……。お父様、お母様。面目次第も、ございません……」



 ひたすら謝り続けていたら、何とか元の姿に戻った。


 ドナドナの様に二人に連れられ、騒がしくレティシアを心配する、従者達の居る屋敷へと戻るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ