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レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか  作者: 宮崎世絆
幼少期編

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41 お友達が出来たその後なんです

 その後も終始、穏やかな雰囲気のままお茶会は無事終了した。


 手紙をやり取りする約束をして、待望のお友達を三人ゲットする事に成功した。



 その日の夜、友達が出来たことを転写書に書いたら、おめでとうといった内容が直ぐに返ってきた。


 ユリウスは魔術学園の契約魔法の縛りのある中、学園に関することを書いてくれていたが、最近はレティシアに会えなくて辛い、寂しい等の内容が綴られる事が増えてきた。


 手紙と言えば、例の公爵トリオ達との手紙は結局ずっと続いている。


 アルバートからの手紙の内容が、いつも妹の我儘に苦労している。といった苦労話が多くなったので、思春期が始まるとワガママになりやすい事を、それとなく説明した手紙を送るようになった。


 ウィリアムからの手紙は、やはり魔法に関しての内容が多かったが、魔術学園で何を学ぶか最近迷ってるとあった。

 取り敢えずは、一番興味が持てそうなものを選べば良いと思うよ。と手紙に書いた。


 マクシミアンからの手紙には、勉強尽くめで嫌になると愚痴が多くなってきた。

 勉強は将来役に立つはずだからコツコツ頑張れ、辛くなったらとにかく休め。と応援や慰めの手紙が多くなった。



 ……何だか人生相談されてる気がしてきた。



 前世の記憶がある為か、どうしても年下や弟の様に思えてしまい、手紙でのやり取りでお姉ちゃん気質が発揮してしまう様だった。……前世では一人っ子だったが。


 魔術学園の入学を一時期迷っていたが、個人の悩みを相談されていたら、何だか親近感が湧いてきてしまい、学園生活を見守ってあげたくなってきた。それに折角友達になれた、ファンクラブの子達も同じ学年になる。


「姿が変わるし、どうなるか分からないけど。やっぱり、魔術学園行きたいな。……もう一度、学園生活満喫してみたいし」



 お友達三人を含め、全員への手紙を書き終えたら、自分の気持ちに整理がついた。


(もし破滅しそうになったら、ちゃんと家族に相談しよう。強制力でどうにもならなくなったら、変装石ふんだくって、変装して逃亡して夜逃げ冒険者になる! そんで旅しながら、世界を周るんだ!!)


 となるとルシータの特訓は是非受けておきたい。


 今でも身体強化魔法を全力で使えば、ルシータの会心の一撃も受けきれる気がするが、やはり実践の経験値が圧倒的に足りない。


 窶れて干からびそうなシシリーとの特訓は、そろそろ終わりしても良いだろう。



「シシリー? いるー?」


「はーい……。ごよーですかー……?」


 物陰から、忽然と姿を見せた。


 何でも疲れると壁と一体化したくなるのだそうだ。


 最近、壁に張り付いているのをよく見かけた。


「なんだ、そんなとこに居たんだ。お母様に話しがあるから、暇な時に声掛けてって、伝えてくれる? そろそろシシリーの特訓から、お母様の特訓に変えようか。その相談をしようと思ってね」

「!!!! 直ちにお伝えして参ります!!」


 瞬間にシシリーの姿が消えた。流石忍者。是非その技を教えて欲しいものだ。



 シシリーの忍術に感心しつつ、レティシアは窓から見える景色を、何気に眺めた。



 お茶会を開いた時は、立夏の頃だった。


 アームストロング領は比較的、過ごしやすい気候が長い。しかし四季と同じような、気候変化がある。


 今は風に揺れる木々が、うっすら紅く色付いている。


 暑かった夏がいつの間にか終わり、気が付けばもう秋。

 冬、年末にはユリウスと会える。そこで、ルシータの特訓を受けてると自慢したい。



「レティシア様! 今からでも大丈夫だそうです!! 一刻も早く参りましょう!!」


 シシリーはレティシアの前に忽然と現れた。もはやシシリーに、部屋の扉は意味を成さないかもしれない。


「ありがとう。でもね、シシリー。どんなに気が急いていても、ちゃんと扉を使って出入りしなさい」

「はい! 参りましょう!!」


(もはや聞いてもいない)


 レティシアは溜息を吐きつつ立ち上がった。




 ***




 辿り着いたのは、ルシータのプライベートルームだ。


 シシリーはノックをして、応答をもらってから部屋の扉を開けていた。


(シシリーが応答を待って扉を開けるの、初めて見た気がする)


「お母様、失礼します」

「どうぞ!!」


 ルシータのプライベートルームには、数える程しか来たことがない。


 壁紙はベビーピンク。窓には花柄のレースカーテン。チェストの上にはやや気持ち悪……お高そうなビスクドールが、ちょこんと座っている。


 以外にも乙女チックな部屋なのだ。


 ルシータ曰く。自分には似合わないので着飾るのは好きでは無いが、可愛い物を愛でるのは大好きなのだそうだ。


 因みにレオナルドの事も、可愛いらしい。まあ、気にしないでおこう。



「お嬢様! どうぞしっかりと、ご相談なさいませませ!! 後でお茶をお持ち致します! それでは失礼致します!!」

「はいはい」


 シシリーが部屋を出ていくと、レティシアはルシータと向かい合う様に、対面のソファーに座った。

 因みにソファーに置かれたクッションはうさぎ型だ。


 ルシータの歌劇団の俳優の様な出で立ちに、乙女チックな部屋は心底不釣り合いだった。


「それで? 相談との事だが! 何か心配事でもあるのかな?」


「あのね。シシリーとの特訓に歯応えが無くなったから、お母様の特訓を受けたいんだけど、駄目かな?」

「あー……等々来たか。思っていたよりも、かなり早いな! シシリーには荷が重かったか!!」


 ルシータは脱力した様に、背もたれにもたれ掛かった。


「シシリーには悪いけど、そうかも。このままだと、侍女として仕えてもらうには、負担が大きいみたいだから」


 背もたれから体を起こすと、肘を膝に乗せて、少し前のめりにレティシアを見つめてきた。


「……レティ。どうしてそんなに、私の特訓を受けたがるんだ? シシリーの技量はかなりの物だ。S級の魔物を倒したい訳でもないのだし! 今のままで十分だと思うのだがな!!」


 レティシアが、なぜそこまで強くなりたいのか。ルシータは釈然としないようだった。


 夜逃げ冒険者になるかも知れないからです。とは言えないので、それらしい答えが必要だ。



「……お母様、前から聞きたかったのだけど。お母様は公爵夫人なのに、どうして冒険者の様に、魔物討伐に積極的なの?」

「! ……それは」

「何か、事情があるんだよね? 言いたくなければそれでも良いよ。無理に聞きたい訳じゃないの。……ただ。私も、生半可な気持ちで、特訓を受けたいって言ったんじゃないんだ」


 僅かに揺れ動くルシータの瞳を、レティシアはしっかりと見つめた。


「私ね。出来る事は、可能な限り頑張りたい。だって、大人になった後、後悔したくないから。『あの時、頑張っておけばよかった』なんて、思いたくない。絶対に」

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