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4 テンプレな美幼女でした

「お、おおきなかがみだねー。はこんでくれてあいがと」


 お礼を言われるとは思っていなかったのか、顔を赤らめて最敬礼をする使用人達。


 レティシアはソファーから飛び降りると、テクテクと鏡の前に歩み寄った。


 初めて見る自分の姿が大きな鏡に映し出される。今着ている若草色のフリルたっぷりのドレスを着た、小さなーーー。


 天使がいた。


 胸元まで伸びる髪は緩く波打ち、金髪と若草色の色が混ざったような…。上手く表現出来ないが、比喩するなら木漏れ日の様な髪。

 森林浴で木々の上を見上げると葉の間から太陽の光が見えてキラキラと輝いている。あんな感じ。


 象牙色のプルプルの肌にプルンプルンの桃色の唇。


 そして一際目をひくのは大きな瞳。


 右の瞳はエメラルドのように美しい緑、左の瞳はアメジストの様な紫。


(オッドアイ……)


 父親の眼の色は緑。母親の眼の色は紫。上手く両方を受け継いだ。と言ったらいいのか。


 とにかく一言で言えば。


「おとめげーむのひろいんかあくやくれいしょっしゅか…? わたち……」

「レティシア様?」


 呆然として思わず呟いてしまったが、慌てて天使の微笑みを浮かべた。


「ほんとかわいーネックリェシュね! わたちきにいっちゃた!」


 とびっきりの笑顔に皆顔を赤らめている。あまりの可愛らしさに身悶えそうなのか、掌を握り締めて僅かに震えている者までいる。


「オホンッそれはようございました。とても良くお似合いでございますよ」


 シンリーは少し顔を赤らめながらも、落ち着いた口調で褒めてくれた。


「他のプレゼントはこちらで整理しておきますので、レティシア様はそろそろご朝食に参りましょうか。誕生日ケーキがございますよ」

「けーき!」


(自分の容姿端麗な件は後で考えるとして、今はご飯だ! 公爵家なだけあってご飯美味しいんだよねー! ケーキも楽しみだし。難しい事は寝る時にでも考えよう!)


 何だか精神まで幼児化している気がしたが、悩んでも何も変わらない。悩むだけ損だと、今はそう思うことにした。


 シンリーに連れられて長い廊下を歩きながら、ボンヤリと前世の自分を思い出していた。


 前世ではつまらない事でいつもうじうじと悩むタイプだった。


 『変わりたい』


 いつもそう思っていた事だけはよく思い出せる。


 でもまさか異世界に、それも前世の記憶を持って生まれ変わるとは思わなかったけれど。


 ここが乙女ゲームの世界なのか別の何かなのか分からない。でももし()()()()()なら由々しき事態だ。


 だが折角前世の記憶を持ってこの世界に生まれてきたのだ。破滅回避とかはおいおい考えるとして、前世では出来なかった『変わりたい』を今世でやってみたい。


 ならやる事は決まっている。


(この世界で、色んなことを頑張って自分に自信を持ちたい。前世ではやってみたい事を見つけても、理由を付けては諦めて逃げてた。そんな自分には……もう、戻りたくない。それに……)


 胸元に煌めくストロングカレイドを、優しく手の平に包み込んだ。


(乙女ゲー小説の主人公みたいなのは嫌だけど、素敵な()()の恋愛はしたい!! 欲を言えばお父様の様なイケメンで愛妻家な人プリーズ!!)


 残念な思考は変わりそうにないレティシアだった。




 ***




 豪華な朝食後、レティシアの遊び部屋でシンリーとは別のメイド達に絵本を読んでもらいながら、まったりと過ごしていた。

 暫くすると何やら廊下が急に慌ただしくなったことに気が付いた。


「あれ? もちかちておとーたまとおかーたま、かえてきた?」


 読み聞かせをしていたメイドも扉の方に目を向けた。


「はい。そうかもしれませんね。もしそうであれば、シンリー様が知らせに来るかと思いますが……」


 丁度その時、部屋の扉がノックされた。


「レティシア様。シンリーでございます」

「どーぞー」


 扉を開いたシンリーは一礼してレティシアの元に歩み寄ると、読み聞かせをしてくれていたメイドに目配せをし絵本を閉じさせた。


「レティシア様。旦那様がお帰りになられました。レティシア様をお呼びでございます」

「え? おとーたまだけ? おかーたまは?」

「お帰りになられたのは旦那様だけでございます。私も詳細は存じ上げておりませんが、至急レティシア様をお連れするようにと申し付けられております」


(一緒にラシュリアータ辺境伯に居た筈なのに、お父様だけ先に帰ってくるなんて。お母様の実家で何かが起こっているみたいね)


「わかったー。あんないしてシンリー」

「はい。では参りましょうか」


 シンリーに連れられて長い廊下を歩き出した。


 トコトコテクテク歩きながらレティシアは思った。


(いつも思うけど、幼児に公爵家は広すぎるわ……)

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