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べとべとさん

作者: 土屋

 

 べとべとさん、という神様がいる。道を歩いているとべとべとという音がついてくる。足を止めると音も止まる。振り返ってもだれもおらず、前を向いて再び歩き出すとまたついてくる。驚いて足を速めると、音も速くなる。


 こんなときにどうすればいいか、大人から教わった。


 「べとべとさん、先へおこしください」


そういって、道を譲るのだ。人々が見えない何かに道を譲るのは奇妙に映るだろうが、この村では見慣れた風景である。


 私も道を譲る。最初こそ怖かったが、道の神様が見守って下さるのだと祖母に教わってから、むしろ安心した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 私は中学生になった。過疎化が進んだこの村から、隣町の学校までバスで通うようになった。クラスには馴染めなかった。べとべとさんなんていない、そんなものを神様だなんて信じているお前やお前のばあちゃんはおかしい、とからかわれたからだ。大好きな人を笑われてくやしかった。


 (そんなにいうなら、みせてやる)


4人の男女が、私の話に乗った。必ずしもべとべとさんに出会うわけではないことを説明し、1週間出会わなければ何でもすることを約束した。代わりに、私と共に学校帰りに私の家の前までついてくること、こちらの言い分が正しかった場合は、発言の撤回と謝罪を申し込んだ。


 約束の最後の日に、機会は訪れた。バス停を降りてからほどなくして、私達5人の後をべと、べと、と音がする。4人は、真っ青になり、ひっ、と声を漏らしながら今にも走って逃げ出したい様子だった。


 「なんなんだよこれ、なんなんだよ!!」


十分に信じてもらえた様子。満足したので私は、やり過ぎはよくないと、


 「べとべとさん、先へおこしください」


 道の端に寄り、頭を下げる。足音が近づいてくる。

私たちの目の前を通り過ぎるその時、1人が足を出した。まるで、そこに見えない足にひっかけるかのように。


 どんっ、と大きな音がする。私は確信した。転んだのだ。その瞬間、空気が震えた。直感が伝える、あ、やばい怒ってる。


 全速力で逃げた。その日は無事に帰ることができた。

 ただ、その翌日から私たち5人にはずっと、足音が付いてくる。追い越してもらうことは、もうできない。

3作目です。唐突ですが、私は妖怪が好きです。帰り道、と考えてまず連想したのが、1作目の送り狼と、この妖怪です。もともと妖怪図鑑とか鬼太郎とかに出てくる、このべとべとさん、という有名な妖怪を自分なりに解釈してもっと怖くできたらな、という思いを込めて書きました。少しでも、それができてたら嬉しく思います。


神様なのに、さん付けかよ!とか思ったりしましたが、そもそも昔の人がその土地の現れた何かをべとべとさんというビッグネームを使って、これはべとべとさんだから!ってことにしようとしたのに、妖怪がいる土地というのは外聞が良くないということで大人が神様ということにしようとしてる、なんてこの村にずっと住んでるお爺ちゃんは言ってます。じゃああれは、なんなんだよ、なんなんでしょうね、、、

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