#2
妹は姉になっていた。
そんなこと起きる訳ない。ありえない。非科学的とかそんなレベルの話ではない。
俺は俺の知っている世界とは違う世界に飛ばされてしまったのだろうか。
こんなことがあり得るとしたらそれは…夢だ。
そうだそうだ、確かにあの女も言っていた。あれがヒントだったんだ。
今ここでベッドに入って眠れば全て解決だ。
いや、夢って夢の中で眠れば覚めるんだっけ?どうすれば夢から覚めれるんだっけ?
ほっぺをつねるとか?
痛かった。
これそもそも夢じゃないことを確認する方法じゃなかったっけ!?
痛かった。
いやでも!だからといって!これが夢ではないなんてことにはならない筈だ。夢だってほっぺをつねれば痛いさ。
とりあえず寝てみよう。一旦この状況から逃げよう。それでこれが全部夢ならそれで良いじゃないか。
俺は意を決してベッドに潜り込んだ。
見慣れた天井。寝慣れたベッド。こうしているとさっきまでのことが本当にあったことなのか全然信じられない。
俺の部屋は、家は、あの女もとい雪菜お姉ちゃんの存在以外何もいつもと変わらない。
やっぱりあんなこと起こる訳ないもんな。妹が姉に代わってしまうなんて、俺はなんて夢を見てるんだ。
最近妹のことを意識するようなことがあっただろうか。俺は本当は姉が欲しかったんだろうか。
とりあえず目を瞑ろう。
そして俺はこの夢から覚める。
現実に戻ろう。現実に…現実……
「晴くーん!いつまでもそうしてると学校遅刻しちゃうよー!私はもう学校行くからね!朝ごはんはテーブルの上にあるからー!」
いってきます、と。ドアの閉まる音がした。
一気に現実、いや夢に引き戻されてしまった。
夢なら遅刻も関係ないけど。万が一これが現実なら俺の高校生活1年ちょっとで初めての遅刻になってしまう。
皆勤賞を狙っていた訳でないけど、自分の決めたルールを破るのは俺が俺でなくなってしまうようで辛い。
遅刻はしたくない。
遅刻じゃなくて、体調不良ってことにして今日は学校を休もうか。
お姉ちゃんは制服を着ていた。俺の高校の。俺の姉なのだから高校三年生ということになるのだろうか。
部活に入っているかどうかは定かではないけど、同じ学校なら帰りの時間は大体分かる。
お姉ちゃんが帰ってくるまでに家の様子を確認しておかなくては。他にも変わっているところがあるかも知れない。
とりあえず妹の部屋、だと俺が記憶している部屋に行ってみよう。
この状況を打開するとまではいかなくても、把握するくらいの手掛かりならあるかも知れない。
そう思って俺がベッドから起き上がった時、
コンコン、と俺の部屋のドアが鳴った。
鳴ったというかノックされた。
誰から?
お姉ちゃんなら今さっき学校へ行った筈だ。
半分まで起こしていた体を一気に起こしてベッドから飛び出て、勢いよくドアを開けた。
「誰だ!」
そこには雪菜がいた。
さっきまでの見知らぬ女ではない。よく見知った顔がそこにはあった。
つまり、妹の方の雪菜がいた。