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魔王城を攻略せよ 上

「よう、二日ぶりだな。ゲイル」


「やっと来たか。待ちくたびれたぜ」


 この魔界に来てから二日が経過し、俺たちは約束通りに巨大な城の目の前に来ていた。そこにはすでにゲイルがいて、俺たちを見るとニカッと笑う。


「それじゃあ、行くとしようか」


 この二日間、俺は悪魔に直接聞いたり掲示板などを活用して魔界について調べたが、あまり新しい情報は手に入らなかった。


 わかったことと言えば、今のところ魔界を発見したプレイヤーはいないということと、そもそもそんな場所があるという言い伝えやフラグが一切ないということだ。

 似たような場所で天界や冥界などがあるのだが、それらに関しては行った人こそいないもののNPCがその存在をほのめかしたりしているらしい。


 しかし、魔界などという単語はどこにも存在しないのだ。


「まだ不可解な点が多いが、とりあえず俺たちがやるべきことは一つだな」


「そうですね。とりあえずこの城の中に入りましょう」


 俺はビオラの言葉に頷くと、重く大きな扉を開けて中に入った。

 瞬間、一通の電子メッセージが届いた。


《ダンジョン『魔王城』に入りました》


 ダンジョンは、このゲーム上では女神が作り出した建造物という設定だったか。それにしても、魔王城とはまたぴったりな名前だな。


「オレも初めて入るが、こりゃあ思わずしり込みしちまうぜ」


 そう言いながら、ゲイルはあたりをうろうろ見渡しているが無理もない。何せ雰囲気がすごく醸し出されているのだから。

 全体的に暗い城の中にろうそくが光源としてぽつぽつと置かれている。どうやらしばらくは一本道のようで廊下が長々と伸びているが、その廊下の先が見えず恐怖を掻き立てている。


 要するに、俺は今かなり怖かった。


「ふぅ……」


 一度大きく深呼吸をすると、俺は意を決して一歩を踏み出そうとした――その瞬間。


「何かを望むなら、それに見合う力を見せなさい。それができなければ、大人しく引き返しなさい」


 突然白く透き通った女の人間が目の前に現れそう警告をすると、すっと消えた。間違いなく、あれの正体は幽霊だろう。

 このダンジョンをだれが作ったのか知らないが、趣味が悪いことだけは分かった。


「べ、別にオレは全く怖くないぜ! そ、それより早く先へ進もうや」


 悪魔らしからぬおびえっぷりをしながら、ゲイルは奥へと進んでいく。俺とビオラもそれを追いかけて行った。


「おいゲイル、一人で先へ進むと危ないぞ!」


 俺がそう言ってゲイルを制止させて追いついた刹那、廊下の奥から三匹ほどのモンスターが現れた。レベルは30付近で、オオカミ型のモンスターのようだ。


 おそらくこのモンスターにおける最下層として設定されているモンスターだろう割にはレベルが高く、俺は少し冷や汗を垂らすが今更引き返すわけにもいかない。


「今回は俺とゲイルで倒す。ビオラは魔力を温存しておいてくれ」


「わかりました。それではご武運を」


 ビオラの力はおそらくこの先戦うであろう強敵のためにとっておく必要性がある。だからこそ、ここは俺とゲイルだけで切り抜けたいのだ。


「行くぞゲイル。俺は右の二匹を担当するから、左の一匹を頼んだ!」


「あいよぉ!」


 俺は右の2匹に狙いを定めると、一気に間合いを詰める。黒いオオカミたちは勢いよく噛みついて来ようとするが、それを盾で受け流して逆に俺の剣で切り裂く。

 無防備な背中を狙って三連撃をお見舞いした

 

 流石は白虎βをもとに親方さんが作ってくれた剣だ。

 一撃で敵を切り裂くと、そのままパリンというエフェクトと共に消え去った。


 それを見届けてすこし俺は油断していた。故に、俺が一匹を倒した一瞬のすきを狙って襲い掛かるもう一匹への反応が遅れる。


「――ッ、まずい!」


 俺が何とか反応しようと体を反転させるも、間に合わずに噛みつかれそうになった――その時。


「詰めが甘いんだよ、お前さんは」


 オオカミの真下から黒い棒が突き出て貫いた。それによって倒されはしなかったが、少しでも時間が稼げただけで十分だった。


「ありがとよ、ゲイル!」


「へっ、ちったぁ気を付けることだな」


 相変わらず口が悪いゲイルだが、やつが根はいい奴だということはもうわかっていた。俺は少し笑いながら、オオカミにとどめの剣戟を加え切り裂く。


 そうして戦闘が終わると、何事もなかったかのようにすぐに歩みを進めた。

 そこからしばらく様々なタイプのモンスターが立て続けに出てきたが、それをできる限りビオラを温存しながら撃破して進む。

 

 上の階に上がれば上がるほどモンスターのレベルも上がり苦戦を強いられるようになってきたが、それでもまだ絶望するほどのモンスターは出てきておらず、意外と見掛け倒しのダンジョンなのではとさえ思い始めていた。


 さらに上に続く階段をのぼりながら、こなれてきた俺はゲイルに一つ気になっていたことを尋ねる。


「なぁ、ゲイルはどうしてこのダンジョンの最上階に不可視の壁を破壊するスイッチがあることを知っていたんだ?」


 俺の疑問に対し、ゲイルはまるでそんな当たり前なことかとでも言いたげな顔で答えた。


「理由は分からないけれどよ、この魔界にいる悪魔は全員このことを知っているんだ。圧倒的な力を持ったら、この城の最上階へ向かえ。そうすれば不可視の壁は壊れ、自由が手に入る。でも――」


 ゲイルが途中まで言いかけた瞬間、ビオラが割って入ってきた。


「……どうやら、最上階にたどり着いたようです」


 確かにビオラの言う通り、眼前には最上階にふさわしい大きな門がそびえたっていた。恐らくこの奥にダンジョンのラスボスがいて、スイッチもあるのだろう。


 そう考えていると、入り口で見た白い少女が姿を現した。

 少女は門の前に立つと、俺たちをみて重々しく言い放つ。


「この先にいるのはダンジョンのボスである、魔王です。しかし、その強さはここまでの道中の比ではありません」


 彼女の言葉に俺たちは息をのんだ。わかってはいたが、いざそういわれると心配になるものだ。


「私はあなたたち悪魔に死んでほしくありません。ですので、ここで引き返すことを推奨します。別に魔界を出なくとも不便はないでしょう?」


 彼女はそう俺たちに訴えてくる。恐らく最上階に来た相手にそう言うようにプログラムされているのか、悪魔ではない俺たちであっても特に変わった反応はないようだ。


 これはつまり、このダンジョンの創設者が自由を求めて悪魔がこの城に来ることを予見しているということに他ならない。


「あぁ、確かに不便じゃねぇ。ただよ、世界はこんなに狭くもねぇんだ。オレは他のみんなにも、世界の広さを知ってほしい。この町以外の景色を見せてやりたいんだ!」


 ゲイルがそう叫ぶ。それを聞き入れたからかもともとのプログラムゆえかは知らないが、少女は言葉を返した。


「私は忠告しました。もし命を賭して自由を手に入れたいのならこの門を開きなさい。ただ、自由には代償があるということを、お忘れなきよう」


 そう言い残して、少女は消えた。しかし、ここまで来て引き下がるわけにもいかない。


 俺たちは覚悟を決めて、ゆっくりと門を開いた。


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