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カノジョも彼女?


千代・・に紹介したい人たちがいる」


 千代と恋人になってから、すぐのこと。

 俺は彼女に、そう言った。


「そ、それって……」


 俺の真剣な表情を見た千代は、照れくさそうに視線を背けてから、


「まだそういうのは早い気がするというか、心の準備ができてないっていうか……もちろん、嫌ってわけじゃないのよ?」


 彼女は早口にそう言った。

 俺はふむ、と頷いてから、『あ、これは誤解してるな』と瞬時に理解した。


「でも、友君・・が紹介したいって言ってくれるのは嬉しいから……。そうね、うん。分かった、会わせて欲しいです」


 しかし、千代は一人で気持ちの整理をつけ、納得をした。

 俺が両親を紹介したい、と言っているのだと思っているのだろう。

 もちろん、それは違う。

 違うのだが……。


「ありがとう」


 俺は彼女の誤解を解かないまま、そう答える。


「良いの。……誰を紹介してくれるのかは分からないけど、楽しみにしているわね、友君?」


 彼女の言葉に、俺は無言のまま微笑むを浮かべ応える。 

 顔は笑みを浮かべつつ、俺は心配をしていた。

 

 誤解が解けた後、刺されたりしないよな……? と。



 そして――


「こちら、伊院千代。俺の彼女です。よろしくお願いします」


「え、と。……よ、よろしく?」


 俺は亜希、瑠羽、麻衣ちゃんに千代を紹介した。

 俺の両親を紹介されると思っていた千代は、困惑しつつも挨拶をした。

 彼女の言葉に、三人はニコニコと笑顔を浮かべていた。

 しかしそれが作り笑いだと、俺は気づいている。全然目が笑っていないからだ。


「……こちら、真木野亜希、愛堂瑠羽、主麻衣ちゃん。亜季と瑠羽は千代も同じクラスだから知ってるよな?」


「え、う、うん……」


「麻衣ちゃんは一年生、ちなみに公人の妹だ」


「う、うん……?」


 突然、クラスメイトとクラスメイトの妹を紹介された千代は、混乱を極めていることだろう。


「彼女たち、俺の恋人です。というわけでよろしくお願いします」


 俺が紹介すると、


「よろしく、伊院さん」


 と亜希が微笑み、


「よろしくね」


 と瑠羽も微笑み、


「よろしくお願いします」


 と麻衣ちゃんも微笑んだ。

 それから彼女たちは、「せーの」と声を合わせてから一斉に俺を見てから、中指を立ててきた。

 さすがは俺のカノジョたち、チームワークは抜群だ(棒)


「……ごめんなさい、私疲れているみたい、彼女たちが日本語で話しているのに、全く意味が分からないの」


 ひどく疲れた表情で千代は言った。


「伊院さんがおかしいんじゃないわ、この男がおかしいだけだから、気にしないで?」


「亜希ちゃんの言う通りだよ。恋人が既に3股をしていて、しかも平然と紹介してくるなんて、普通考えられないもんね」


「逆に、伊院先輩がこの後、友馬さんを包丁で刺しても私たちは驚きませんけど」


 亜希と瑠羽、麻衣ちゃんが疲れた千代に駆け寄り、励ましの言葉を掛けた。


「麻衣ちゃんったら面白い冗談を言うなぁ、あっはっはー」


 俺の言葉を聞いた三人は、先ほどと同じように微笑んでいた。

 目が笑ってなくて怖いんですけど――。


「ええと、つまり――」


 千代は三人の言葉を聞いてから、その内容を整理するように言う。


「友君とあなたたちは恋人同士であり、私は4人目の恋人である、と」


 頭を抱える千代。


「そしてあなたたちは、友君に複数の恋人がいることに理解があって、これから先も恋人が増えることに対して、何の文句もないってことなのかしら!?」


 千代は三人に向かって問いかけた。


「文句がないわけじゃないわ。出来ることなら、私だけの友馬でいて欲しいわよ」


「でも、誰に対しても真剣で、決して中途半端な気持ちで付き合ってるわけじゃないのは、分かってるし」


「それに、正直伊院先輩も友馬さんのことを好きになるんだろうなってのは、察していましたし……」


 亜希と瑠羽と麻衣ちゃんは、千代の言葉に理解を示しつつ、現状を受け入れていると言った。


「麻衣の言う通り、この間友馬とみんなで話したときにはもう、ある程度覚悟してたわよね」


 亜希が言うと、瑠羽も深く頷き、麻衣ちゃんは「ねー」と呟いていた。

 そんな様子の三人を見た千代は、俺を睨んでから叫んだ。

 

「ふざけないでっ! ……こんなの、認められるわけないでしょ!?」


「ごもっともだわ」


 憤りをあらわにする千代に、亜希が頷きながらそう言った。


「でも、私たちは誰も友馬君を譲るつもりないし、友馬君も彼女皆のことが大好きだから、誰とも別れたくないと思っているの」


「……でも、伊院先輩が友馬さんに愛想を尽かして振るんだったら、解決しますね」


 瑠羽の言葉の後に、麻衣ちゃんがそう言うと、


「それはっ! ……それは、嫌よ」


 千代は即座にそう答えた。

 こんな風なわけが分からない状況にもかかわらず、相変わらず俺のことを好きでいてくれる千代に対し、好意と罪悪感で胸が苦しくなる。


 千代は、目尻に涙を浮かべて、俺を見る。

 それから彼女は、縋るように言う。


「お願い、友君。……私だけを好きでいて? 私だけの恋人でいて!?」


 その言葉に、俺の胸は更に締められ、苦しくなる。

 この場で包丁で滅多刺しにされた方が、ずっと気持ちは楽に違いない。

 だけど、それでも。俺は言わなければならない。

 俺は千代に歩み寄ってから、彼女の両肩を掴んで言う。


「俺は、みんなのことが好きなんだ! 誰か一人だけじゃダメなんだ。俺は、みんなのことを、幸せにしたいんだ……っ!」


 俺の言葉に、千代はきゅん、とトキめいたような表情を浮かべたのが分かった。


「……なんで今のでトキめくのよ?」


「伊院さんも、結構重症みたい」


「でも、私も気持ちはわかります。好きな人に幸せにしたいって言われたんだから……」


 3人も千代の表情を見て、気持ちを汲み取ったのだろう。

 千代の表情を見て、そう反応をしていた。


「……そ、それでも! やっぱりこんなの駄目よっ!」


 千代は声を振り絞るように、そう言った。


「僅かに理性が勝ったようね」


「私たちには出来なかったことなのに……」


「凄い精神力です。これは、強敵ですね」


 三人は冷静にそう分析していた。

 千代との温度差が激しかった。


「この中の誰が一番友君にあ、あ……愛されているか! 勝負よっ!」


 ビシッと俺を指を差した千代は、そう言った。

 どんな勝負をするのかは、まだ不明だが――。

 愛されているって言うのが恥ずかしくって赤面をする千代は、可愛いなぁ……と。

 他人事のようにそう思う俺だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 続きがすごい気になりますね。まさに修羅場のように(笑)納得いってない千代が幸せにしたいって言われてときめいたのは可愛いかったですね。 友馬に1番を決めれるのか気になりますね(笑)
[一言] みんなチョロイン! 漫画「カノジョも彼女」とどちらが多く彼女になるでしょう笑? 下記の所名前が間違っているように思います。  俺が紹介すると、 「よろしく、伊院さん」  と千代が微笑…
[良い点] 千代が一途なタイプなところです。 [気になる点] 千代は尽くすタイプですか?
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