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運命を変える!


 亜希と瑠羽。

 二人のヒロインを攻略し、俺は改めて自分の行動で、彼女らの運命を変えられるのだと確認できた。

  

 そして、俺が運命を変えられるのは、何もヒロインに限った話ではないということも。

 例えば、亜希を轢きそうになったトラック運転手。

 バッドエンドとなる世界では、彼はあの場で亜希を轢き殺すことになっていた。

 亜希を救う傍ら、彼の運命も変えたのだ。


 そして、恐らく瑠羽の時も。

 俺は一人の男の運命も変えてしまった。


 瑠羽のストーカーだった男「スネイクマン」だ。

 彼がストーカー男なのは間違いなかったが、俺が瑠羽と一緒にいるところを、過去の記憶を生かして立ち回れば、彼の凶行を回避することや、ストーカー行為をやめるように説得することも、恐らく可能だった。


 そうしなかったのは、瑠羽との攻略を急ぎたかったからだ。

 瑠羽は多忙なアイドルであり、単純に接触できる回数が限られているヒロインだ。

 俺が把握していない死亡イベントが、この世界で発生する可能性も否定はできない。


 ――だから俺は、自らが把握していた死亡イベントを発生させ、その後に折った。

 瑠羽の身に危険が及ぶ可能性があることもいとわずに、そのイベントを利用して、彼女からの好感度稼ぎさえ行った。

 目論見通り、瑠羽は俺に対して好意を抱いたが……。

 代わりに、「スネイクマン」は豚箱にぶち込まれることになった。


 亜希を、瑠羽を救い、彼女らと恋人になれたのは、俺の望み通りの展開だ。

 だけど……どうしても。

 彼女たちから笑顔を向けられると、罪悪感に似た感情を抱く。


 今の俺の状況を考えると、トロッコ問題を思い出す。


 線路を走っている制御不能のトロッコがある。

 このままでは、線路の先にいる5人の作業員が死んでしまう。

 ただし、分岐器を操作してトロッコの進行方向を変えれば、作業員Aの犠牲のみで済む。

 分岐器を操作できるのは俺だけ。

 ……要約すると、多数を助けるために、少数を犠牲にするのは許されるのか? という問題だ。

 この問題に、正解はないと俺は思っている。


 だが俺がやっていることに関しては……正解ではないと断言できる。

 死ぬはずだったヒロインを生かすために、その他大勢を不幸にし、その上救ったヒロインの気持ちを、二股、三股という形で、俺自身が裏切っているのだ。


 ループを回避するため。

 そしてヒロインを生かすため。

 いくら大義名分があるからといって、俺の行いを正当化するわけにはいかない。


 今後もループを繰り返し、理想的なエンディングに辿り着くまで繰り返せば、不幸になる人数を限りなく0に近づけることも可能かもしれない。

 公人が脇谷と恋人になる、という不測の事態が既に起きている。

 このままループを繰り返せば、勝手に最高のエンディングを迎えるルートも、ありえないと言い切れない。

 

 だが、そのために、何度も試行錯誤をすることはできない。

 それはすなわち、ヒロインたちが死ぬ可能性を放置することに繋がるからだ。

 だから、俺は――多くの人間を不幸にしてでも、ヒロイン達の攻略を進めると決意したのだ。


 このままヒロインたちの攻略を続け、予想通りにループを抜け出し、幸せなアフターストーリーが始まったとして。


 俺が最後に行きつく先は……地獄に違いない。


 それでも良い。

 俺はただ、これ以上ヒロインたちの死を見たくないという自分勝手な考えで、彼女たちを欺き、心を奪っていくのだから。


 俺の行いを、彼女ヒロイン)たちの命を救うため、なんてお題目を掲げるつもりはない。

 その考えでは結局、俺が多くの人間を不幸にする責任の片棒を、ヒロイン達に押し付けてしまうことになる。

 だから俺は、誰に言われるでもなく、俺自身の意思で、たくさんの人間を不幸に突き落とすのだ。


 ……その上で、俺は彼女たちを必ず幸せにしなければならない。

 亜希と瑠羽――それ以外のヒロイン達も含めて。

 同時に複数の恋人がいるからと言って、愛情に優劣をつけず、彼女たち全員を絶対に幸せにする。

 そうしなければ……俺が切り捨ててきたものが、全て無駄になってしまうから、


 俺自身の結末が、地獄行きが決定していたとしても構わない。


 重ねて言う。俺は選んだのだ。

 誰を傷つけようと――それが彼女ヒロイン)たち自身だとしても。

 彼女たちが生きてくれるなら、どれだけの犠牲を払っても構わない、と。


 ――感傷に浸るのは、一先ずここまで。

 うじうじと迷っている時間ももったいない。

 すぐにでも3人目の攻略を、始めないといけないのだから――。

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ主人公も好きでハーレム築きたい訳じゃないしね… いつかは主人公も救われて欲しいな!
[一言] うん、覚悟があって、自ら道を選択しているなら、君は立派だよ。何も選択しないで流される人はとても多いのだから… その道に、幸あれかし、だなあ。 まあ、行きつく先はハーレムなんだけれど。
[一言] 最後に主人公にはヒロイン達が救であげてくださいね。
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