1 果ての無い草原
空から落ちる光があった。
重苦しい空をゆっくりと落ちる光は人気の無い草原へとゆっくりと着陸する。
しばらくただの眩しいだけだった光はぐねぐねと動き始めると人の形になっていく。
大きい人になったり、小さい人になったりを繰り返して丁度真ん中くらいの大きさになると光に色が付き始め光がどんどん無くなっていった。
そして光のあった場所に一人の男が大の字に寝転んでいる。
未だ目を開けないその男の顔は若く、髪は短く切りそろえられており服は普段着なのかぶ厚めのグレーのパーカーにジーンズ、それからよく目にするブランドのシューズを履いているどこにでも居そうな少年だ。
風が吹き、軽い草が飛んで少年の鼻をくすぐるとふてぶてしく眠っていた少年の顔が煩わしそうに動いて瞼が持ち上がっていく。
「んあ……なんで眠ってるんだ。ていうか何で外にいるんだ」
上半身を起こした少年、新貝抗は周囲を見渡して胡散臭気な顔をする。
そこには低い背丈の木か足首ほどまでしか伸びない草しか無く、地平線の端は曇った空しか無いまさに一面草原という地球であれば絶対に見ることが出来ない景色だ。
「どこだよここ」
見慣れない、あるはずもない世界に抗は疑問を思わず呟くがそれを応える相手はいなかった。
生温く吹く風やカサカサした草の感触と木と草の揺れる音、抗が潰して草と土の匂いがやけにリアルだったが抗は余りにも現実離れした光景に一つ頷くと。
「なんだ夢か」
と結論付けた。
しばらくぼうっと揺れる草や木を眺めていたが自身に何らかのことが起きる気配が無いことに抗は気付く。
どうすれば夢から覚めるかとどんやりとした空を見上げると何やら上の方に黒い物体が浮かんでいた。
それは徐々に大きくなっていき、次第に色や形がはっきりと見え始めて体を丸めた人っぽい何かが猛スピードで飛んできているのだと認識すると抗の目の前に着弾した。
「うおおおおおおおお!」
咄嗟に飛び退いて草まみれになりながらゴロゴロと転がると轟音と共に土と草が弾け飛んで音で揺れる木に降り注いでいく。
抗は驚きながらも立ち上がると腕を体の前に出して土と草を払う。
その先にはゆっくりと立ち上がる黒い何かがあって顔の辺りに赤い光が二つ灯ると共に。
「ガアアアアアアアアアアアアッ!」
「っ!」
裂帛の気合を込めて吠えた。
その敵意むき出しの声と音量に抗は驚き、口を開くことが出来なかった。
「奇妙な気配を感じたと思ったら侵入者カッ……。我が領域からタダで出られると思うナッ!」
どこかぎこちない喋り方をする黒い巨体が体を縮めたかと思うと飛び跳ねるかのように跳躍し、抗へと襲いかかってきた。




