第8話 オーディションデュエル(1)
≪オーディション≫でのデュエル一回目が、始まった。
莉那 ライフ10 コスト5 手札6
結愛 ライフ10 コスト5 手札6
先攻は莉那だ。
「私のターン、まずはこのカードだよ。≪見習いアイドル・ルカ≫を召喚。さらに、≪売れ出しアイドル・スイ≫を召喚。召喚時の効果で、≪駆け出しアイドル・ラン≫を召喚。コストがなくなったからこれでターンエンドよ」
映像に写る三人のアイドルはマイクを武器に構えて立っている。
「そ、それじゃあ私のターンです。」
ターン2
莉那 ライフ10 コスト5 手札3
結愛 ライフ10 コスト6 手札6
「ドローします」
結愛は山札からカードをドローする。
少し悩む動きを見せ、小さく頷くと、カードを取り出した。
「このカードを出します。≪見習いシェフ・アカリ≫です」
(なるほど……結愛はシェフデッキか)
莉那はそう確信した。
≪見習いシェフ・アカリ≫コスト:2、種族:亜人、攻撃力:800
「この子の効果で、相手フィールドに≪料理人≫を召喚します」
莉那のフィールドに、アイドルとは一風変わったコック姿の亜人が現れる。
「こ、このモンスター達は私が攻撃するときは相手フィールドにいないとみなされます」
(そ、そんな……こんなモンスターがいたら、モンスターの展開ができなくなる……)
2ターン目にしていきなり莉那は窮地に落とされた。
≪料理人≫コスト:99 種族:亜人 攻撃力:0
モンスターの効果でのみ召喚可能。相手の攻撃宣言時にこのモンスターは存在しないものと考えてもよい。
と言った効果の内容を審判に渡されたカードにより莉那は確認した。しかし、莉那はその部分のみを読んだので、重大な部分を逃していた。
「次はこの子です。≪シェフ・シンジ≫を召喚します」
≪シェフ・シンジ≫コスト:3 種族:亜人 攻撃力:1700
「このモンスターはバニラモンスターなので、召喚効果はありませんが、≪見習いシェフ・アカリ≫の効果で、召喚効果だけ付与されます。それにより、莉那さんのフィールドにもう一体の≪料理人≫を召喚します」
莉那のフィールドにもう一枚の≪料理人≫が召喚され、莉那のフィールドはオブジェクトカードを除いて、あと一枚のモンスターしか召喚ができなくなった。
(自分フィールドにモンスターが展開できない……)
「私はこれでターンエンドです」
結愛は攻撃することなくターン終了の宣言をした。
(そんな、攻撃をしないなんて……)
「じ、じゃあ次は私のターンね」
莉那は震えた手でカードをドローしようとする。その地点で困惑しているのは明らかだ。
ターン3
莉那 ライフ10 コスト6 手札3
結愛 ライフ10 コスト6 手札5
「ド、ドロー!」
(自分フィールドにはモンスターは5体。そのうち2体が≪料理人≫……ならば、それを排除するのみ!)
「私は、≪売れっ子アイドル・ナナ≫を召喚!続いて効果発動。自分フィールドのモンスター3体を生け贄にして、デッキから≪アイドル≫モンスターを召喚する。私が生け贄にするのは≪料理人≫2体と、≪見習いアイドル・ルカ≫よ!」
≪売れっ子アイドル・ナナ≫コスト:5 種族:亜人 攻撃力:1200
その宣言に結愛は少し笑った。
「ちょっと待ってください。ここで≪料理人≫の効果発動です。このモンスターは相手モンスターの効果で墓地へ行くことは出来ません。つまり、効果を発動するなら他のモンスターを選んでください」
そう言われ、莉那は効果を読み忘れていたことにようやく気づき、迷ったあげく、効果の発動を続けるため、他のモンスターを生け贄にすることを考えた。
「私は≪見習いアイドル・ルカ≫、≪売れ出しアイドル・スイ≫、≪駆け出しアイドル・ラン≫を生け贄にして、≪トップアイドル・クナミ≫を召喚」
映像で、トップアイドルが、姿を現した。後ろにはファンらしき姿も見える。
「効果で自分フィールドにいる≪アイドル≫モンスターの数×300アップ!続いて、攻撃っ!まずは≪料理人≫2体を消すわよ!≪料理人≫2体で≪シェフ・シンジ≫を攻撃!」
≪料理人≫が、料理を振る舞う様子が写し出されるも、≪シェフ・シンジ≫が、それを投げ返し、それが直撃してあっけなく倒された。
「この瞬間!≪料理人≫の効果発動です。≪料理人≫が、倒されたとき、私のライフは倒された≪料理人≫の数分ライフを1回復します!」
映像では倒されたはずの≪料理人≫が、結愛側の指導者に料理を振る舞い、それを食べる様子が写し出される。その後、黄色の光が現れ、ライフが回復した様子が写された。
「な、ならば相手のモンスターをすべて倒す!≪トップアイドル・クナミ≫で≪ただのシェフ・シンジ≫を攻撃!」
宣言と同時に、≪クナミ≫の後ろにいるファンが≪シンジ≫に押し掛ける。それに押し潰され、≪シンジ≫は床に張り付き、そのまま息絶えた。
「次っ!≪売れっ子アイドル・ナナ≫で≪見習いシェフ・アカリ≫を攻撃っ!」
次はマイクスタンドを手に持った≪ナナ≫が、≪アカリ≫に物理攻撃を仕掛け、そのまま倒した。
「これであなたのフィールドにモンスターはいない!」
「でも、ライフはこちらの方が上です。さて、どんな戦略で来るんでしょうね」
二人の女の戦いはまだ始まったばかりだ。