第7話 オーディション当日
≪オーディション≫当日までの間、莉那は理彩にレクチャーを受けながら、特訓をした。
早朝に起きて、ランニングから始まり、腕立て伏せなどトレーニングをしながら、カードの効果などを覚える練習をした。
「これって、意味ある?」
莉那はふと疑問に思ってしまい、理彩に聞いた。理彩は腕を組見ながら
「当たり前だよ!アイドルのオーディションを受ける以上は体力もつけなくちゃいけないよ!」
と、言って莉那にスクワットの指示を出した。
それに歯向かうわけにもいかず、莉那はしぶしぶスクワットを始める。
そのようなことを毎日2週間にわたって行われた。そのなかにはダンスの練習もあった。実際にモンスターを出してのことは不可能なため、個人での練習になるが、必死にやった。
その成果を示す日である、≪オーディション≫の日が近づいてきた。
会場は高層ビルが建ち並ぶ繁華街の中にあるビルで行われた。
受付を済ませると、ひとつのメガネが手渡された。
「こちらはこれからも必要となりますので、そのままお待ち帰りください」
と受付の人は言った。
「ありがとうございます」
とだけ言い、階段を上ってオーディション会場に向かった。
莉那が最後だったらしく、会場ではデッキの確認や、動きの確認を行っていた。
すると、審査員らしき人が階段を上って部屋に入ってきた。
スーツ姿で、手にはグリップボードを持っている。
「えー、それではオーディションの概要について説明します。まず最初にここに集まっている60名を半分の30名にします。それについては普通のデュエルを行っていただきます。勝者は一次試験合格となります。負けた方に関しては、もう一戦していただいて、≪特別選考枠≫として、15名選出します。二次試験に関しては通過した45名のなかから5人グループを9組作り、そのグループでの勝ち抜き戦を行います。それのルールは≪歌唱デュエル≫とします。ルールについては後で説明します。今から1から30までの数字がかかれた紙を渡します。その紙に書かれている番号の人とデュエルを行ってください」
審査員はそう言うと、紙を手渡し始めた。
莉那もその紙を受け取り、番号を確認する。番号は16だ。
「それではお互い顔合わせの後デュエルに入ってください。デュエルのフィールドに関しては隣の部屋に審判つきでございます。そちらをご利用ください」
と言う指示があり、受験者は続々と対戦相手を見つけて、隣の部屋に入っていった。
莉那も16番の人を探し始める。
「16番の人のいますか?」
と大きな声で聞いてみる。
「……はい」
と心細そうな声で返事が聞こえた。その返事が聞こえた方向を見ると、手をもじもじさせながら立っている年齢が13歳くらいの少女がいた。髪はポニーテール、髪の色は明るめの茶色だ。
「あ、あの……16番の方ですか?」
と少女は聞いてきたので、
「うん。私が16番の紙を持っているよ。じゃあ始めようか」
と、隣の部屋に行こうとすると、少女は制止したかったのか
「ち、ちょっと待ってくだ……さい」
と言った。莉那はすぐに少女の方を向くと、少女の方へと歩いた。
「どうしたの?」
と莉那は聞くと、少女は心細そうな声で答えた。
「私……デュエルをあんまりしたことがなくて……」
莉那はなんだぁ、そう言うことかと感じ、少女の方を叩くと、自分のことを話始めた。
「それは……私もそうだよ。私がここにいる理由は、友人にデュエルで勝ったから。それでやってみないかと言われて、自分を見つけたくてやることにしたの。だから、このオーディションに初神者も上級者もないよ。だから、このデュエルを楽しもう」
その言葉にホッとしたのか、少女は方を撫で下ろし、手を胸の前で組んだ。
「良かったです、あなたに励ましてもらえて。ありがとうございました。えっと……」
莉那は自分が名前を名乗っていなかったことに気づき、すぐに自分の名前を伝える。
「星野莉那。莉那でいいよ」
そう言い、莉那は手を差し出した。
「私は平野結愛といいます。きょ、今日はよろしくお願いします」
結愛は莉那が差し出した手をガッチリとつかんだ。
「うん、よろしく。じゃあ、始めようか」
「はいっ!」
二人は隣の部屋へと歩みを進めた。
隣の部屋に入ると、そこには十数台あると思われるのデュエルフィールドとその中心の映像モニタが置かれていた。
「16番の紙を持っているものはこちらへ」
と、スーツを着た審判は手をあげて場所を示した。
「はいっ!」
と、莉那は返事をした。
それに遅れて結愛も返事をした。
「お互い、デッキをプレイマットの上に置いてください」
審判の指示通りに、莉那と結愛はプレイマットの上にデッキを置いた。
すると、音声が流れた。
「デッキの設置を確認しました。自動シャッフルを行います」
と言い、デッキの回りに仕切りが現れ、自動でシャッフルが行われた。
「それでは、両者はデッキを6枚ドローしてください」
二人はカードをドローする。
「カードを入れ換える場合はカードをデッキの外に置いて、置いた枚数分ドローしてください。自動的にカードがデッキに戻り、シャッフルが行われます」
莉那は手札を確認し、変更しなくてよいと感じ、なにもしなかった。結愛も同じくカードを確認し、カードの変更はないとして、動きを止めた。
「それでは始めてください」
との審判の合図のあと、莉那達はいつも通りの言葉を発した。
「クラスト!」