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第1話 はじまりの日

 西暦2023年、カードゲームは新たな次元に変わっていった。

≪クラスターデュエル≫、それはカードに内蔵されたマイクロチップによりどこでも召喚したモンスターがそこに現れる、リアリティに特化したカードゲームだ。

発表と同時にカードゲーム人口はうなぎ登りに増えていき、全国大会がどんどん行われるようになっていた。

 これは、その世界に踏み出した少年少女達の物語である。


 ある冬空の朝、部屋中に響き渡る目覚まし時計の音。少女、星野莉那(ほしのりな)は少し目を細めて目覚まし時計を止める。そして、そのまま二度寝に入ろうとしていた。

「あっ!寝ちゃダメだ」

 莉那はそう自分に言い聞かせ、頬をパチンと1度叩く。そして、ベッドの毛布をまくりあげ、学校の制服に着替える。

 着替え終わると、スケジュール帳を開き、一枚のカードを見る。≪アレイスタードラグーン≫、それがそのカードの名前である。数秒ほど見続け、スケジュール帳を閉じてカバンに放り込む。ついでにデッキケースもカバンの中に入れる。髪型を三編みに整えて部屋のドアを開ける。階段を駆け下り、リビングへ向かう。

「お母さん、おはよう」

 莉那は母親に挨拶をし、朝食を食べる。

 トーストにバターを塗り、口に放り込む。サラダを食べ、牛乳を飲み干して、

「行ってきます」

と母親に言ってからリビングを出て、靴を履き、家を出る。

「あ、お弁当忘れてるわよ」

 母親の言葉に急いでUターンし、弁当を受け取って、駆け足でまた進んでいく。

(ついに……ついに発売されるんだ。新パック!)

 莉那はいつも使う地下鉄の駅の近くにあるカードショップに寄った。

 自動ドアがゆっくり開き、莉那は店内に急いではいる。

「おはようございます!」

 その挨拶に気がついた店員は

「おっ、莉那ちゃんおはよう。すでに入荷してあるよ。買ってくかい?」

 その質問に莉那は大きくうなずき、

「もちろんです!とりあえず二つください」

「ウキウキだねぇ。そりゃまぁそうか。待望の≪アイドル≫強化パックだもんな」

「はいっ!」

 お金を出して、パックを二つ購入し、店員にお礼を言って店の外に出る。

 そして、そのまま地下鉄の駅に直行する。自動改札機を通り、二つ先の乗換駅に向かう。

 カードパックはカバンの中にしまい、地下鉄を待つ間はスマホを開いている。友人とメッセージの交換をするためだ。

(おはよー)

(うん、おはよー)

(今日は早いね)

(うん、いろいろあってね)

 莉那は友人に≪クラスターデュエル≫をやっていることはあえて伏せてある。

(じゃあ、また学校でね)

(うん、まっててー)

 こんなやり取りをしていると地下鉄がやって来た。朝の地下鉄はほぼ満員状態で、乗るのが難しい。今回は奇跡的に空いていてすんなりと入ることができた。

 二つ先の駅につき、地下鉄を乗り換え、学校の最寄り駅に到着する。

 そこで、友人の中野理彩(なかのりさ)と待ち合わせをし、学校へと向かっている。

 赤髪で二つ結びをしている理彩を見つけると、莉那は手を振って理彩のところに駆ける。

「おはよう、莉那」

「あ、理彩おはよー」

 その後も談笑しながら学校に着き、教室へと入る。

「あ、莉那じゃん。珍しいね」

 いつも黒渕のメガネを掛けているクラスの委員長にそう言われ莉那はかぶりを振る。

「そんなことないよ。私だってちゃんと起きれるんだから」

 そう話をしたあと、机に荷物を置き、理彩と話をする。

「来週の土曜日って空いてる?」

「うーん、ちょっと待ってね」

 莉那はカバンに入っているスケジュール帳を開き、来週の土曜日に何か予定があるか確認をした。

「思いっきり暇だね。どこか行くの?」

「うん、ちょっと付き合ってほしくてね」

「あ、またあれね?」

 理彩には好きなアイドルユニットがいることを莉那は知っていた。そして、よくそれのグッズ販売などに付き合わされているのだ。

「そだね。うん、あれだよ」

「いいよー。行こう行こう」

 莉那は理彩の誘いを快諾し、スケジュール帳にその予定を書き込む。そして、スケジュール帳を閉じてカバンにしまおうとしていたとき、何かがスケジュール帳から落ちた。

「あっ」

 莉那はやってしまったと思った。落としてしまったのはカード≪アレイスタードラグーン≫だった。

 そのカードを見た理彩は大きく目を見開いていた。

 理彩はそのカードを見て莉那に問いかけた。

「このカードって……」

「うん、私のだよ」

 少し俯きながら莉那は答えた。

「≪クラスターデュエル≫……やってるの?」

「デッキは組んであるけど、あんまり対戦はしたことないよ」

 莉那は本当のことを答えた。カードショップに行ってもあまり相手をしてくれる人はいなかった。たまに相手をしてくれと話しかけてくれる人がいるくらいだった。

「じゃあ、今日勝負してみる?」

 理彩のその言葉に莉那は目を輝かせた。

「理彩もやってるの?」

「うん。やってるよー」

「じ、じゃあ今日の放課後やろう」

「いいよー」

「あ、そういえば、これ買ってきたんだ」

 そう言って莉那はカバンから今日発売されたばかりのパックを取り出した。

「え、もう買ったんだね」

「そりゃもう、ね?」

「いや、ね?って言われてもわからないよ」

「あはは、それもそうか。理由はデュエルすればわかるよー」

「そうだね。じゃあよろしくねー」

 今日の放課後、デュエルの約束をして、その日の授業を受けた。莉那は初めての理彩のとデュエルにワクワクしていて、授業のことがあまり頭に入らなかったほどだった。


 莉那と理彩は莉那が通っているカードショップに行き、お互いの前にプレイングマットが置かれている机の前に立った。

「じゃあ、始めよう」

「うん」

 お互いデッキをマットに置いてカードを6枚ドローした。

 そのときはこれが運命の始まりだとは莉那は思いもしなかった。

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