第12話 真の姿
3ターン目にして、夕貴は主力のモンスターを場に出した。
「まずは《妖怪・カラカサ》で直接攻撃‼」
《妖怪・カラカサ》は自分の体を細めて莉奈に突き刺すように、攻撃した。
これで莉奈のライフは夕貴と同じ6になった。
「次っ‼《妖怪王・ザ・ファントム》で直接攻撃‼《ザ・キングスブレス》」
《ザ・ファントム》が口から紫色の煙を吐き出した。そしてその煙は莉奈に直撃する。ライフが5に減った。
「まだまだ‼《目覚めし妖怪・オニサマー》で直接攻撃‼《目覚めし一閃》」
《オニサマー》の目から、ビームのようなものが発射された。ライフが4に減る。
「ここで《オニサマー》の効果発動‼手札から《妖怪》と名のつくカードを墓地に送って、立ち上がる‼《オニサマーイリュージョン》」
《オニサマー》がもう一度立ち上がり、莉奈に攻撃した。これで莉奈のライフは3になった。
「うぐ……」
莉奈は小さく唸った。
「私はこれでターンエンドだ‼」
夕貴はこれまでの痛みなんて関係ないと言わんばかりに大きな声でターン終了を宣言した。
ターン4
夕貴 ライフ:6 コスト:6 手札:3
莉奈 ライフ:3 コスト:7 手札3
戦況は夕貴が押しているように見える。しかし、莉奈は秘策があった。
「私のターン‼ドロー‼」
莉奈は手札の数を確認すると三枚のカードを手に取った。
「私は《宵闇のアイドル・クリシュ》と《無駄王アイドル・ムー》を墓地に送りこのカードを召喚する‼」
その宣言の後突如として莉奈から闇のオーラが現れた。
夕貴はその様子をただ茫然と眺めるだけだった。
「宵闇に封印されし輝きの龍よ、今この封印を解き姿を現せ‼出でよ、《アレイスタードラグーン》‼」
これこそが莉奈の最強のカードであり、今の莉奈の分身でもあるこのカードがついに場に現れた。
二体のモンスターが生贄にされ、天へと消えた。聖なる光に包まれながら一体の龍は天からゆっくりと現れた。そして、莉奈のもとへと降り立った。
その瞬間、莉奈の顔の頰に3本ほどの赤い線が現れた。
それこそが莉奈の本当の正体であるという事実に他ならなかった。
「こ……攻撃力3700……これが本当の姿……ということなのか……」
夕貴は今自分がデュエル中だということを忘れて、ただその姿を目に焼き付けるだけだった。
「そうだ。これこそが私の本当の姿だ‼︎さあ、ひれ伏すが良い‼︎」
《アレイスタードラグーン》コスト:X 種族:ドラゴン 攻撃力3700
効果:①このカードを召喚するとき、手札、自分フィールドからモンスターを2枚墓地に送る。このカードの召喚は無効化されない。②このカードは召喚されたとき、相手モンスターを全て破壊する。③召喚されたターン、②の効果が無効化された場合、相手のライフを2減らす④1ターンに1度、このカードが相手モンスターを攻撃して倒したとき、自分の墓地のモンスターを一体ノーコストで召喚する。⑤1ターンに1度、手札が2枚以下の時発動できる。このカードが攻撃して相手モンスターを倒した時、もう一度攻撃ができる。
「アレイスタードラグーンの効果発動‼︎このカードが召喚に成功した時、相手フィールドのモンスターを破壊する‼︎《ドラゴニックヴァイパー》‼︎」
アレイスタードラグーンから黄金のブレスが発射され、夕貴の場にいるモンスターに一直線に伸びていった。
「《目覚めし妖怪・オニサマー》の効果発動‼︎このカードの下にあるカードを墓地に送り《ガード》を発動‼︎このカードの破壊を一度だけ無効化する‼︎」
《オニサマー》だけが破壊されず、他のモンスターは破壊された。
夕貴は莉奈の方を見た。すると莉奈は不気味な笑みを見せていた。
(なぜここまで追い込まれているのに笑っていられるんだ……)
「よくやってくれたよ。けどこれで効果が発動できる。《アレイスタードラグーン》の効果発動‼︎」
夕貴はその宣言に驚いた。自分の行ったことが裏目に出てしまったからだ。
「な、何ですって⁉︎」
「このカードの破壊効果が無効化された時、相手のライフを2つ削る‼︎《ライフブレイク》‼︎」
《アレイスタードラグーン》から、次は闇に染まったブレスが発射され、夕貴にブレスが当たった。
「うわぁぁぁぁぁ‼︎」
夕貴はそのあまりにも強い衝撃と痛みに悲鳴が堪えられなかった。体はボロボロになり、着ていた服も所々破れてしまっている。
「どうだ‼︎これが真のデュエルだ‼︎」
夕貴はゆっくりと立ち上がり、よろめきながらもプレイマットが置かれた机に手をかけた。
「真のデュエルだかなんだか知らないけど……私は勝つ‼︎勝って元の世界に戻るんだ‼︎」
夕貴のその発言に莉奈は大きく笑った。
「ハハハッ‼︎ まだお前にそんなことを言う気力が残っていたとはな。だが、そんなことを言えるのも今のうちだ。更に手札から《裏のトップアイドル・ジュン》を召喚‼︎」
フィールドに闇のオーラを纏い、スキャンダルをたくさん抱えていそうなアイドルが現れた。
《裏のトップアイドル・ジュン》コスト:4 種族:亜人 攻撃力:1500 効果なし
「バトル‼︎《アレイスタードラグーン》で《オニサマー》を攻撃‼︎《アレイスターバースト》‼︎」
《アレイスタードラグーン》が黄金と闇色の混ざったブレスを《オニサマー》に放った。《オニサマー》は自身の武器でブレスを止めようとするがその防御も虚しく、ブレスに飲まれ、散っていった。
「ここで《アレイスタードラグーン》の効果発動‼︎このカードが相手モンスターを破壊した時墓地からモンスターを一体ノーコストで召喚できる。甦れ、《裏のアイドル・レン》‼︎」
「こ、ここで更にモンスター…だと⁉︎」
夕貴は自分のフィールドを確認する。自分のフィールドにはモンスターは0体。相手のフィールドにはモンスターが3体。そのうち1体はすでに攻撃済みだ。つまりこのターンさえしのげば、夕貴は勝てる可能性があるのだ。
「更に《アレイスタードラグーン》の効果発動‼︎相手モンスターを先頭で破壊し、自分の手札の枚数が2枚以下の時、このカードはもう一度攻撃ができる‼︎」
「な、何ですって⁉︎」
夕貴は今度こそ目が飛び出しそうだった。
「さあ、総攻撃だ‼︎」
「で、でもこれでもライフは1残る。次のターンさえあれば……」
「残念だったな。次のターンはない。《アレイスタードラグーン》はライフを2つ削れるモンスターだ」
「そんな……もう……終わりなのね……」
夕貴は目を閉じ、最後の攻撃を受けた。
「きゃあぁぁぁぁぁぁ‼︎」
そして大きな悲鳴とともにデュエルの世界から消え去っていった。