第9話 オーディションデュエル(2)+α
先日、活動報告、Twitterにて休載の知らせをしました。
但し、この作品は休載しません。
莉那のフィールドは、≪トップアイドル・クナミ≫と≪売れっ子アイドル・ナナ≫の2体がいる。それに対して結愛のフィールドはがら空きだが、莉那の攻撃はもう終わっている。しかし、ライフは結愛が12と初期のライフを上回った数値となり、苦戦を強いられている。
「た、ターンエンド」
それから数十ターンも激闘を繰り広げた。
「私の……ターン!ドロー……あっ」
莉那は自分の山札のカードが一枚もないことに気づく。
「デッキ切れ……私の負けのようだね……」
莉那は目に涙を浮かべそうになったが、堪えて結愛と握手を交わした。
「ありがとうございました。いいデッキだったよ……これから先も頑張って!」
莉那はそこまで言うのが精一杯だった。
「莉那さんも、まだもう一戦あるんですから、それに勝てば……まだ上がれます!だから……だから、諦めないでください!」
「えへへ……年下に励まされちゃったね……」
目尻に浮かんでいる涙を指で拭き取り、
「次のデュエルで勝ってくる!だから、待ってて!」
「はいっ!」
結愛は大きく返事をした。そして、結愛はその奥の部屋へと吸い込まれるように入っていった。
(私、頑張って次のデュエルで勝つ!それでまた会おう、結愛)
そう心で言った時のことだった。
─君はまだ力の存在に気づいていない。
どこからともなく野太い声が聞こえるので、莉那は回りを見回したが、その事を話したような形跡はなかった。
(誰?)
─君が持っているカードさ
そう言われたのであわてて自分のデッキを確認する。そこに一枚、黄色く輝くカードがあった。
そのカードの名は……
≪アレイスタードラグーン≫
莉那が唯一持つドラゴンのカードだった。
(君……なの?)
─はい。私は≪アレイスタードラグーン≫です。
その返答に莉那は少し戸惑った。ただのカードでしかない≪アレイスタードラグーン≫が自分に話しかけてきていることに驚くことしかできなかったからだ。
(どうして……話せるの?)
恐る恐るそんな質問をした。
─私はこのカードに刻まれた本物の≪アレイスタードラグーン≫の魂だからです。
(えっ?)
莉那はその回答に驚き、言葉がでなかった。
(つまりあなたは本物の力を持つカードってことなの?)
─はい。そう言うことになります。
(それで、私に何か用があって?)
莉那は次の質問をする。
─はい。あなたは先ほどの試合で負けられましたね。
(……はい)
─これは何が原因かわかっていますか?
(…………!?)
その質問の答えは莉那は見つけることができなかった。答えはすぐに≪アレイスタードラグーン≫が答えた。
─それはあなたがカードの真の力を把握していないのです。そして、勝つこと事態が奇跡だったのです。
(そ……それは……)
≪奇跡≫という単語に莉那は反論ができなかった。
実際今まででも勝つことの方が少なかった。そして、勝つことがあってもそれは相手がプレイミスをするなどのことが多かったときだったのだ。
(前回も同じだった……≪奇跡≫で勝っただけ……)
─ならばその≪奇跡≫をただの≪偶然≫ではなく≪完璧≫な勝利をてにしてください。今こそこの力を使うときです。
(それは……だめ……だって……だってあの力は封印したんだから。だから君の力を使っていないんだから……)
莉那は数年前に≪アレイスタードラグーン≫を使ってデュエルを行ったとき、≪アレイスタードラグーン≫の言う力が暴走して、勝利したものの対戦相手は一時的な気絶、その店は責任をとって閉店という結末になったことがあったのだ。さらに、莉那はその時の事を覚えていないのだ。警察による話によるとそのようなことが起きたと説明され、何事もなくまた日常に戻っていった。
─今のあなたなら制御できます。これは私が断言させていただきます。数年前とは体力も変わっているんです。しかも、数日前まで特訓してたじゃないですか。だから、私を信じてください。
(…………)
莉那は少しの間黙った。そして、答えを導かせた。
(うん、わかった。やってみる……けど、無理だったらすぐにやめるよ)
≪アレイスタードラグーン≫は優しそうな声で答えた。
─それは私もサポートさせていただきます。だから、安心してください。
その言葉に莉那は小さくうなずくと、≪アレイスタードラグーン≫を手に取った。
その瞬間、莉那はカードの光に飲まれた。しかし、その姿を見たものは誰もいなかったため、何が起きているかを悟ったのは誰もいなかった。
ただ、世界で数枚だけ今の状態を知ったカードがあった。
≪アレイスタードラグーン≫は莉那にばれないように、莉那の意識を自分の意識に取り込んだ。
そして、自分の意識と融合させ、彼女の魂を≪再起動≫させた。
姿は変わらないが、目付きが鋭くなり、眼の色は赤く輝いている。
「キィィィ」
という声だけを発し、ただ呆然と立ち尽くしていた。
光に飲まれた莉那は目を覚ますと、暗闇の中にいた。回りを手探りで触ろうとするが、触れるのは冷たい空気だけだった。
「そうだっ!オーディションは……」
そう意識を集中させたが、光に飲まれるときの前後の記憶がなかった。
(また……暴走してしまうの……)
莉那は過去の事を脳裏に浮かばせ、どうにかしなくてはと考えていた。