第三夜:『失った「自分」と一筋の希望』
9月8日分です。
お題は、「雑踏」、「不在」、「不眠症」です。
お題として、「不在」を使用してます。
⚠︎投稿してる分なのですが、本文入力の分では、自分が行った段落わけ(1字下げる)がどうやら読む方で見ると反映されていないようです。
原因はわかりませんが、また時間のある時に直します
長くなってしまいましたが、それではどうぞ
この世界はありふれている。
そう、例えばそれは物。実用的なものから何に使うかわからないようなものまで。とてもたくさんの物がある。
この世界はありふれている。決して良いものではないものさえ。
そう、例えばそれはゴミ。この世の中には、たくさんのゴミが存在する。勿論人が生活している以上ゴミが出るのは当たり前のことだ。しかし、現実としてゴミの処分ができないものが大量にあり、日夜それは大地へと埋められていく。まさにゴミの島へとなりつつあるのだ。人は利便性を求めるが故に、大きな爆弾を抱えたのだ。
この世界はありふれている。
そう、例えばそれは人。街を歩けばそこには人、人、人。まるでゴミのようだ、とは誰が言った言葉であったろうか。人がいないところはない。だって、それは仕方ない。それこそが人のコミュニティなのだから。生き残る知恵なのだから。
この世にありふれたものなんてたくさんあるのだ。
僕が!私が!俺だけが!特別なんじゃない。皆、平凡なのだ。その平凡の中の極々1部だけがすこしばかり突出しているだけなのだ。
だからこそ、特別なんていやしない。俺だってみんなと同じ平凡でしかないのだ。
いつからだろうか。俺がこんなことを考えるようになったのは。大人になってから?ほんとにそう言えるのだろうか。馬鹿みたいな夢を見てた子供の時だけは、それは違うと言えるだろう。
いや、いつからだったのかなんてそれは些細なことだ。問題はそこじゃない。いったい「俺」はどこに行ってしまったのだろうか。
大学を卒業したあと俺は、就職して会社に勤めていた。
満員電車に乗り、雑踏を乗り越えて会社に着く。定時になると、少し休憩を挟み、そのまま残業へと移行する。勿論残業代なんて出ない。そして、夜遅くになり、帰れるギリギリの時間になるとようやく帰路へとたてるのだ。
それが毎日のように続く。
そうするとどんどんと心が霞んでいくのだ。もう新人だった頃、あのまだ輝きを放っていた頃の自分なんて思い出せやしない。眩しくて見ることさえかなわない。
家に着いたところでろくに寝られやしない。そして、また繰り返される日々が始まるのだ。
「俺」は、ずっと思っていた。いったい何をしてるんだろうって。ずっと思い続けていたんだ。
でも最近は、何も感じなくなってしまった。見えない社会の歯車の一部へと徐々に同化していくのだ。自分のはずなのに、「俺」がいつのまにかいなくなってしまっていたんだ。
ソウダ。ワタシハ、タダマイニチヲクリカエシテイクノダ。ナニモオモワズ、ナニモカンジズニ。ワタシハロボットダ。カンジョウヲモタズ、クリカエスノダ。
意識が闇へと落ちていく。
ゆっくりと堕ちていく。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
もう諦めてしまうのか?
ふと、どこからか声が聞こえた気がした。おかしいな。今の自分には何も聞こえないはずだ。
ここで諦めてしまうのか?
もう何も聞こえないはずの自分に届く声が続く。
本当にここで終わってしまってもいいのか?
お前さんがここで終わるとあの子達はどうなる?孤児院のあの子達は
孤児院?そうだ、自分は孤児院の出身だ。身寄りなんてない。
あの子達こそが身寄りだ。
全てに絶望した顔をして入ってくるあの子達を見て、お前さんは誓ったんだろう。
僕が・・・いや、俺がお前達の希望になると。
誓った。確かに誓った。あの子達の絶望した顔を笑顔に変えてやりたいと思って、誓ったんだ。
でも無理だった。希望になんてなれなかったんだ。
こんな話を知っておるか。
決して開けては行けない箱、それを開けてしまったがために世界に絶望が溢れてしまった。しかし、その箱には、唯一希望が残されていたことを。
お前にとっての希望はあの子達だ。
皆、心配しておる。
あの子達が?
いや、そんなはずはない。
この繰り返される日々をすごしている中であの子達とはあっていない。何かの間違いだ。
いいや、事実だ。
あの子達はいまなおお前に向かって必死に声をかけておる。
あの子達はがんばって戦っているのだ。闇を抱えながらも。
・・・・・・。
唖然としていた。
何故そんなに頑張っているのだろう。何故、闇と戦いながらも頑張れるのだろう。
わからなかった。何一つわからなかった。でも、何かが一滴落ちていったような気がした。
あの子達が頑張れるのはお前がいるからだ。
さて、これ以上の問答は意味をなさんだろう。
ここに一筋の道を用意した。もし、ほんの少しでもあの子達のことを今再び思えるのであれば、進んでいくがよかろう。
あとはお前さん次第だ。
声がかききれると同時に、目の前に一筋の光が差し込んだ。
決して、今何一つわかったわけじゃない。それでもここを行くしかないと自然と思えたのだ。
自分の歩みは、牛歩かもしれない。いや、もっと遅い亀の足かもしれない。それでも決して歩みをとめることだけはしない。それだけはできないとばかりに進めて行ったのだ。
失ったはずの「自分」を少し取り戻したことに気づくことなくその歩みを進めて行った。