3話 ルームメイト③
「……成程、事情は分かりました。 とんだ災難でしたね、エリア様」
「エリア、で良いですよ、カーロンさん。 今日は本当に、ありがとうございます」
一応の納得は出来たカーロンだった。
さて、今エリアは彼に対し礼を言った。 ――と言う事は、彼女はカーロンに対し、少なくとも礼を言うだけの恩義を感じているわけである。
彼女はわかっていない。 男性と二人、宿を共にすると言う事がどういうことなのか。
性欲や使命感、嗜虐心や性欲……ともかくそんな感情がカーロンの中で渦巻き、
「――!?」
手が伸びた。
体が動いた。
良心は白旗を上げ、欲望が勝利の凱歌を謳い始める。
今宵は宴。
酒池肉林の宴である、と――
「ど、どうされたのですか、カーロンさん」
彼女は、いまだに状況を把握できていない。
恐らくエリアは、『男性に襲われる』というのがどういうことなのか、わかっていない。
村娘なら、良い。
商家の娘でも、大きな家でなければ大丈夫だ。
冒険者など人によれば日常茶飯事だろう。 コンバットハイはなかなか消えない。
――だが。
こと貴族、王族、あるいは名家の子女にとって。
『場合によっては自刃もあり得る』事態である事に、エリアは気づいていないのだ。
予定、変更。 ――否、強がるでない。 元から手など出すわけがなかったろうに。
「――カーロンで良いですよ、エリア。
それと、今後男性と二人きりで宿に泊まるのは、止めたほうが良いと思います」
エリアを押し倒していた手をどける。 カーロンは何事もなかったかのように立ち上がって、
「性的に襲われかねません。 ――今の、俺の様に」
そうやって、忠告をした。