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2話 母のくれたもの①

あらすじ

 主人公 は 村 を出た!

 セーレンは、旅立つ息子に剣を送った。

 まぁ、剣と言ってもナイフの類。 あくまで護身用に過ぎないものだが。


 それは、彼の荷物の中に入っていた。

 息子出立の前夜。 自身の無力を恨みながら、何もしてあげられなかった息子に、せめてもの力になるように――と鞄に忍ばせたのは、村の鍛冶屋の自信作であり、教会のシスターの初仕事でもあった。


 勝利の祝福を持ったナイフ。 ――と言っても、彼の元居た世界にあるようなエクスカリバーなんて言う聖剣等とは格が違う。 あくまで小さな、気休め程度の物だ。


 魔術師は聖職者とは相入れない。 小説にでも出てきそうな設定だ。 ……しかし、事実としてそうなのだから仕方がない。 セーレンはその事を知っていたがために、ナイフを教会に預けたのだ。 真に聡明なるは誰なのか? それは決して、才能で決められるものではないのだろう。



 「全く、母上も粋な計らいをするもんだ」

 

 思わず頬が緩む。 見上げる空は快晴。 雲ひとつ見当たらない、旅立ちには最高の天気である。 


 彼は歩みを進める。

 馬車に乗っていけるわけもない。 帝都へは徒歩である。 『体裁を保つため』父がくれた資金は思いのほか多く――おそらくこれも母の()()だろうが――宿に泊まる金も、飯を食う金も充分にある。


 「さて、と。 そんじゃ、行きますか! ()()の声は結局、十八年間聞こえずじまいだったけど仕方ない!」


 きっとこれが、神様の意思なんだろうな、と。 凡人は凡人らしく、這いつくばって生きろ、と。


 踏み出す足は迷いがなかった。

 彼の道に果てはなかった。


 いつかあの二人、見返せるといいなぁ――



 そんなことを思いながら、新天地へと向かう少年。


 

 偶然とは、いくつも重なり合うものだ。 一つ一つは小さなことでも、集まれば大きなことになる。

 バタフライエフェクトと言う言葉もある。 一つのさざ波がやがて、竜巻を起こすこともあるのだ。



 春の初め。

 この日、この時間に彼が出発したことにこそ、意味があったのだ。


 


 


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