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年間王者決定戦 開幕

―――――――――――――――――

【年間王者決定戦 対戦表】

闇の軍勢

 使用DP:九五〇〇万DP

聖なるかな

 使用DP:五五〇〇万DP

メラゾーマでもない

 使用DP:三三三三万DP

宿り木の種

 使用DP:九五〇〇万DP

―――――――――――――――――


「事実上の一騎打ちだね」

 最強のギルドが決まるこの日、ディアから渡された対戦表を見てヒロトは呟いた。


 ギルド<聖なるかな>と<メラゾーマでもない>はリスクを考慮して戦いを挑んできている。


 ダンジョン序列第二位<逆十字教会>が率いる<聖なるかな>はこのギルドバトルのために五五〇〇万DPを投じてきた。順位が三位までに入る事が出来ればギルド解消だけは免れられるというリスクヘッジである。


 最も消極的なのがメラミ先輩が率いるギルド<メラゾーマでもない>だ。投資額は三三三三万DP。彼女の事だから一の桁まで三が続いているのだろう。妙なところでこだわりを持つ人だから。


 ちなみにこの投資額ならば最下位でも三ツ星級ギルドの最低資本金額二五〇〇万DPまでは残す事が可能だ。どう転んでもギルドメンバーが追放される事はない。


 逆に上位狙いなのが、ダンジョンランキング第一位<魔王城>が率いる<闇の軍勢>とヒロト達の<宿り木の種>だ。一時的にでもギルドメンバーを追放、ギルドランクを一ツ星級に落としてでもギルドバトルに賭けている。


 バトルの順位が三位以下だった瞬間にギルドを解散させられてしまうリスクさえ無視した全力勝負であった。


 その自信も理由あっての事だった。両ギルドは前回のギルドバトルで大勝していた。<闇の軍勢>は五〇〇〇万DP以上のハイスコアを叩き出した名実共に最強集団であり、<宿り木の種>は僅か四〇〇万DPという少ない軍資金で圧勝した戦巧者である。


 最強ギルドはこのどちらかであろう事はもはや疑いようがない。ダンジョンシステムの掲示板はそんな噂で持ちきりだった。








 ――僕のやっている事は本当に正しいのだろうか。


 ダンジョン<メラではない>との会談後、ヒロトがその事を考えなかった日はなかった。


『魔王さんって何でそんなに必死なんだと思う?』

 と、メラミは言った。


 確かに魔王の動きには不審な点がある。四ギルドを同時に相手取っても完勝出来るような大戦力を保有しながら、なぜギルドメンバーを切り捨てるような真似をしたのだろうか。


 別に負けたって構わないはずなのだ。ギルドバトルは所詮遊びである。ギルドが保有するダンジョンを使って戦わせるわけで、命が懸かっているわけでもない。


 それなのにギルドバトルのために近隣ダンジョンを脅して仲間に引き入れたり、バトル直前で追放して傷付ける。


 そこまでして挑戦する価値はあるのだろうか。


 今回だけの臨時イベントならそれでもいいだろう。しかしギルドバトルは定期的に行われるイベントだと運営側も通知している。長い目で見た場合、こういった自分勝手な行動は不利益を生みかねない。


 それが分からない魔王ではあるまい。


 ――そもそも僕がここまでやる必要、あるのだろうか。


 この年間王者決定戦に勝利したところで得られるのは他ギルドに先んじて四ツ星級ギルドへとランクアップ出来るという事だけだろう。たしかにそうなれば次回以降のギルドバトルでも有利に事を勧められる。


『それは頭一つ抜けている<闇の軍勢>を――袋叩きにしたいから?』

 魔王を止められる勢力が存在しなくなる? 別にいいじゃないか。ギルドなんて所詮お遊び。やりたいようにさせてやればいい。


『魔王さんがやっている事と何が違うの?』

 変わらないよ。同意の上での加入とはいえ、結果的にはギルドから追放している。


 魔王は本当に邪悪な存在なのだろうか。


 ――分からない。今の僕には知る術がない。


「ヒロト様、ご準備はよろしいですか?」

 ディアの声がする。凪いだ湖面を思わせる柔らかな音の響き。


 ヒロトは瞑目し、大きく息を吐いた。


「もちろんです。行きましょう!」

 ヒロトはそう言ってダンジョンを出た。


 それを今から確かめに往くのだ。





 いざ、決戦の地へ。

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