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祝勝会と分配

 ギルドの会議室へ転移する。ギルドランクが上がったおかげで会議室は王侯貴族が使うような煌びやかな空間に変っていた。家具はもちろん柱や天井にまで装飾が凝らされ、椅子やテーブルに至っては金色に輝いていた。


 部屋も広く一〇〇名以上が余裕で集まれるほどの広いスペースである。奥には休憩所やバーカウンターがありサンドウィッチなどの軽食まで置かれていた。どうやらこの辺はサービスのようで、飲み放題食べ放題のようである。


「おい、見ろよミルミル。この椅子、金で出来てるぜ。一脚持って帰れねえかな?」

「止めて下さいよ、ユウダイさん。みっともないですよ」


「このハム美味いぞ、コポゥ。お前も食べてみろよ」

「コ、コッポッポポル(わし、ツナサンドのほうが好き)」


「ふふ、ふはは、どうだいピッピ君。この空間は? 高貴な私にぴったりでしょう?」

「はい、ゴロウさん。座られている感がとっても素敵です」


 農園、漁船、天空城の三ダンジョンマスター達が品評会を始めていた。前回の戦略会議と異なり、今回のギルド会議は祝勝会も兼ねている。みんな思い思いにはしゃいでいる。


「みんな、早いね……あ、これ差し入れね」

 ヒロトがダンジョンで調理した偽和食をテーブルに置くとダンジョンマスター等は歓声を上げて駆け寄ってくる。


「ギルマス、アンタ最高だな。おーい、ミルミル! ダンジョン戻ってワインや肉持って来てくれ。バーベキューしようぜ」

「馬鹿言わないでくださいよ、ユウダイさん。こんな豪華な部屋でバーベキューなんてやれるはずないでしょう」

 いいじゃんいいじゃんと強請るユウダイ、ミルミルは渋々といった風にダンジョンへ戻って行った。二人は恋人関係らしく何だかんだミルミルは尽くすタイプらしい。


「まじかよ、やるな園長さん。コポゥ、ダンジョンから今日釣ったマグロ持って来てくれよ。マグロの生解体ショーしてやるよ」

「デゥフコポ(行って来る)」

「ピッピ君。我等も対抗して高原で取れた新鮮な薬草ジュースを!」

「ゴロウさん、あの苦くて臭い薬草ジュースなんて罰ゲーム以外で使えません!」


 するとそこに<王の剣>のケンゴが現れる。


「随分と楽しそうだな、ヒロト、一体何があったんだ?」

「うん、まあいろいろと」

 ヒロトは微苦笑を浮かべるのだった。


 その後、会議は祝勝会となり、ユウダイ園長主導のバーベキュー大会とマサル船長の重さ一トンを超える巨大生マグロ解体ショーを終え、ゴロウ大佐が青汁一気飲みをした所でお開きになった。


 みんなが好き勝手にやりはじめたおかげでギルドの会議室は煙臭く、生臭く、そこはかとなくアルコールと青汁の臭い漂うひどい空間になってしまったのだった。







 翌日、仕切り直しで開催されたギルド会議でヒロトは口を開いた。


「改めて分配を始めるね。まずはDPから。獲得した賞金が二八七七万DP。ケンゴ君のところに七五〇万、残りのみんなには二五〇万DPずつ配ることにします」

 全員から拍手が上がる。


 <宿り木の種>の出資比率は<迷路の迷宮>が二〇〇万DPで五〇%である。更に<王の剣>は一〇〇万で二五%、残りの三ダンジョンが三三万DPほどで八%ほどなっている。端数は一〇万DP単位で切り上げしておいた。


「ああ、ありがとう。早速だが二〇〇万DPをギルドに出資させてもらうぞ」

 ケンゴが言うとギルドメニューをその場で操作した。資本金はダンジョン使用分も含めて三一五〇万DPになった。


 すると他の三ダンジョンも顔を見合わせて頷く。


「今回、俺は何もしてねえからな。出資する事にするぜ」

「だな、あぶく銭を後生大事にとっておいても仕方がねえしな」

「ふふ、次回の王者決定戦に期待させて頂きますよ」

 これで三六五〇万DP。


「じゃあ、僕も限界まで出資しようかな」

 これで四〇五〇万DPとなり、ギルド会員全員の上限額まで出資する事となった。


「あとはチケットだね。チケットは二〇枚ずつ。僕が九枚ずつもらうから、ケンゴ君は五枚、皆は二枚ずつでいい?」

 ヒロトはそう言って全員に各チケットを配布した。


「ヒロト、俺は眷属チケットだけあればいい。残りはヒロトが使ってくれ」

 <王の剣>は配下モンスターを召喚できないため、継続して単独行動させるためには大量の<眷属チケット>が必要だった。<レアガチャチケット>は兎も角、<原初の渦>は使用さえ出来ない。


「じゃあ、ケンゴ君。僕のチケットあげるよ」

「いいのか? 悪いな……いや五枚貰えれば充分だ。それ以上は貰いすぎだ」

「そんな事ないよ」

「いや、価値が違うだろう?」

 確かにレアガチャは兎も角、レアモンスターとDPさえあれば<渦>は作成する事が出来る。ある意味、非売品であるレアガチャチケットと眷属チケットの価値が高くなるのは当たり前の事と言えた。


「え、トレードありなのか? なら俺はレアガチャチケットが欲しい。他の二枚と交換でいいから誰か交換してくれ」

「あ、俺っちもレアガチャが欲しいぜ。レートは同じで」

「では、私もレアガチャを」

 三人の視線が一斉にこちらを向く。彼等、非戦闘系ギルドは強いモンスターを手に入れられる可能性があるレアガチャチケットが欲しいようだ。


「あー、よかったら交換する?」

 こうしてヒロトは眷属チケット一〇枚、レアガチャ五枚、原初の渦を二〇枚手に入れた。


「ちょっと貰いすぎかなぁ」

「気にする必要はない。そもそも今回のギルドバトルはヒロトのおかげで勝利出来たようなものだ」

「そうだぜ、ギルマス」

「俺っち、なんもしてねえしな」

「全くだね」

 ギルドメンバー達からフォローが入った事もあり、ありがたく頂戴する事にする。


 少し申し訳ない気持ちになるヒロトであった。



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