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新機能 ギルド

「続いてダンジョンシステムの仕様変更の連絡があります」

 むしろここからが本番だ。ヒロトは表情を引き締める。昨年にやられた<奴隷の奴隷>によるDP獲得の取り締まり。それと同じような事が今回も行われたのである。


 皆、色々やってるんだなぁ、と半ば感心しながらヒロトは説明を聞く。今回の仕様変更はヒロト達<迷路の迷宮>に関わらない物ばかりだったが、ルールの裏側を突く参考になるだろうと細かく内容を確認していく。


 ディアもその辺は予期していたのか、仕様変更の背景などを詳しく調べていてくれたようで、実に有意義な時間となった。


「さらに今期よりダンジョンメニューに<ギルド>機能が追加されます」

「ギルド?」

「はい、有体に言えば友好なダンジョン同士で同盟を結ぶというものです」

 <ギルド>は一定のDPを支払うだけで設立出来る。どれだけDPを支払ってきたかによってギルドランクが変わり、ランクアップすると所属可能なダンジョン数が増えていくようだ。


 ギルド設立には最低でも一〇〇万DPが必要になる。百位以内のランカーダンジョンでも結構厳しい額だ。中間層に位置するダンジョンでは実質、設立不可能と思って間違いない。


「ギルドを設立する事で使用出来るようになる機能は三つあります。まずは<会議>です。現状、ダンジョンマスター同士のコミュニケーションは匿名の掲示板でしか行えませんでした。個人を特定することは出来ませんし、機密性の高い会話も出来なくなります。

 しかし<会議>を使うことでモニター越しで顔を合わせて会話をする事が可能となるのです」

「スカイプが使えるようになったってことね」

「……主様、すかいぷって?」

 クロエが尋ねてくる。好奇心旺盛な彼女はヒロトが住んでいた地球の文化に興味津々のようでお気に入りのくの一衣装もわざわざ特注したものなのだ。


「ああ、ごめん、インターネットを使ったテレビ電話みたいな……」

「いんたーねっと……てれび……でんわ……」

 獣耳をたらし、ますます困惑した様子のクロエ。生まれた時からインターネットのある生活を送っていたヒロトには当たり前の知識だが、前知識のない彼女に説明していくのは中々に骨が折れた。


「次に<市場>が開放されます。こちらはギルド員同士で、召還した魔物やダンジョンで生成したアイテムなどを持ち寄り、交換出来るようになるというものです。各ダンジョンの特色を活かした魔物やアイテムを交換し合う事でダンジョン活動を活発にしようという狙いがあります」

 ダンジョン毎に持つテーマや属性などの関係上、召還出来る魔物や手に入るアイテム類は偏っていく。しかし市場があれば別ダンジョンで生まれた珍しいモンスターを手に入れる事が出来る。


「つまりメルカリが出来るようになったわけだ」

「めるかり……?」

 インターネットの説明でさえ付いていくのが精一杯だったクロエは目を回している。


「最後に<代理決闘>です。これはギルド員が受けたダンジョンバトルを他のダンジョンに代理で戦ってもらうという一種の救済措置になります」

 ダンジョンでは年に一度のダンジョンバトルが義務付けられている。しかし、生産に特化したダンジョン運営をしていくとどうしても同ランク帯のダンジョンに比べて戦闘能力は低くなってしまう。


 そこで戦闘に特化したダンジョンにダンジョンバトルを請け負ってもらう<代理決闘>を使うのだ。これにより戦闘能力は低くとも、きちんと活動しているダンジョンが一方的に叩かれるという事態を防ぐ事が出来るようになる。


 これによりペナルティを負わずとも済む。もちろん代理決闘を依頼する場合、対戦相手のランキング順位に応じたDPを支払う必要があるそうで、何の活動もせずに引き篭もっているダンジョンでは支払えない額が設定されるらしい。


 更にギルドマスターはギルドに貢献しない輩がギルドにのさばるのを防ぐため、ギルド員をいつでも自由に脱退させる事が出来るらしい。


「また今期からギルドランキングが設定されます。上位ギルドに所属していますと副賞が得られ、さらにギルド専用のイベントも開催される予定です」

 詳細は秘密ですが、とディアが説明を終える。


「これはまたいやらしい機能だね……」

 ギルドを立ち上げるには大量のDPが必要だ。必然、出資者であるギルドマスターは有力な上位ダンジョンとなるだろう。


 ギルドマスターが善人であればよい。しかし下位ダンジョンから希少な魔物やアイテムなんかを奪うような仕組みを作ることだって出来るようになるはずだ。


 更にこれまで独立して活動していたダンジョンが徒党を組むことになり、有力ダンジョンを筆頭にした派閥なども形成されていくに違いない。


 ギルド機能が与える影響を考えるだけで憂鬱になっていくヒロトだった。


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