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神鳴りさんと夕立ちの午後  作者: 六青ゆーせー
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新しい神

安彦は双葉さんの病室を見回し、唸った。


部屋に出来た六つの繭。

どれも、中に人間が入れそうにデカかった。


牧名正、伊沢直樹、中島裕、それに山本さんは結界を維持すべく風車を支えていた。


吹雪ちゃんは、何か儀式的なことをすべく準備をしており、白尾春奈ちゃんはそれを手伝っていた。


安彦と、後は五十嵐老人だけが、立って六つの繭を凝視していた。


「あの…、いったい何が起ころうとしているんだね…。トトサは君たちが返してくれたんだろう?」


不安げに五十嵐老人が聞いた。


「どうやら、滝沢社長さんのお母さんが亡くなってから放置されていた祠が、最悪の形で祟ってしまったようなんです。

吹雪ちゃんが考えているのが確かなら、あれは娘子サと馬子サの子供…、になります」


「こ…、子供…? 

私らは娘子サと馬子サの子孫と教えられたが?」


「それは、正しい、信仰上の人間の子孫です。

でも、娘子サと馬子サが一緒になってしまったら…、交互に祭らなければならない神を、出会わせてしまったら…。


滝沢社長のお母さんは、娘子サと馬子サが出会わないように、間にカシマサマを入れて壁を作っていたんですが、祠を祭る人がいなくなってからは、誰も娘子サと馬子サを遮らなくなっていました。


そして、出会ってはならない二柱の神は必然的に出会い…。


あれは、神としての、娘子サと馬子サの、結ばれた結果としての子供なんです…、たぶん」


「う…、馬と人間の…、間の子供…?」


「そうです。

現実世界ではありえませんが、それが神の世界ならば…、出来てしまうのです。

そういう神話だったから…、そういう信仰だったから…、です…」


なんとも言い表しがたい叫び声をあげ、五十嵐老人は、床に膝まづいた。


安彦は、これほどの恐怖の表情の現れた顔を、初めて、見た。

人にこんな顔が出来るとは、つい、さっきまでは思わなかった。


「…なんてことだ…」


この土地に生まれ、昭和一桁というから、ぎりぎり滝沢村と沼倉村で、交互に正常に祭られている信仰の姿を知っている人だからこそ、その恐怖に腹の底から震えていた。


脅かされてる、とか見た目が怖い、とか言った表面の怖さとは本質的に違う、それは神への畏れだった。

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