障りの正体
秩父総合病院の窓という窓からは、大量のウジ虫が溢れ出していた。
「くっそう!
あの標本を教えたのは、奴だったんだ!」
安彦は叫んで走り出した。
すぐに皆が追いかけて走ってくるが、牧名正が疑問を発した。
「で…、その悪者って言うのは何なんだ? トトサと、どう違うんだ?」
「双葉さんの話を聞いていないから、今一つはっきりしないけど、おそらくトトサは、本気になれば沼倉村を一夜で沈めたように、工場を沈めることも出来たんだよ。
だから、五十嵐さんの見た泥人間は、あくまでも警告だったと思うんだ。
見つけたぞ、っていう、ね。
滝沢さんに本当に祟っていたのは、声と、あと背中をさする手、だったんじゃないかな?」
安彦が言った。吹雪ちゃんも頷き。
「同意見よ。
おそらく三人の子供は、カシマサマの力で滝沢さんを救おうとしていたのよ。
それとは別に、緑の部屋の老婦人は、トトサに見つかった、という先祖の、霊力の強い人からのメッセージだった、という気がするわ。
それが一遍に来てしまい、滝沢さんは混乱してしまったのよ。
それともう一つ、養蚕の神を祭っている場所では、いわゆる肉や卵などの生臭物は大抵嫌われるわ。禁忌、と言ってもいいでしょうね。
目が悪くなるというのは、そういう時によく現れる障りなのよ。
つまり滝沢さんは、目が悪くなった時点で、すでに障り、に侵されていて、出来れば早い時点で祠をどうにか出来ればよかったんだけど、神を信じていなかったので、それが障りだとは気が付かなかったね。
いよいよ、となって先祖や沼倉村からのメッセージがあったけれど、声と一緒になってしまって、良い物も悪い物も区別できなかったのね」
ふーん、と牧名正は首を傾げるが、再度、問うた。
「で、その悪い物って何なんだ?」
安彦は肩を竦めるが、白尾春奈ちゃんは、立ち止まり、白いウジ虫を持ち上げた。
「ねぇ、これ、ウジ虫なんかじゃないわよ。
これはカイコよ」
全員が驚いた。
「あの少年は、カイコの山から出てきていた、って事か?」
安彦は頭を捻った。吹雪は。
「ここのオシラサマは他の地方とは違って、信仰自体が、交互に祭ったり、トトサに見つからないようにしたり、とか自分たちは娘と馬の子孫だ、と言ったりしていることを考えると、あれは、もしかすると、子供、なのかもしれないわね」
「子供って…?
娘子サと馬子サの、いわゆる子供、ってこと!」
安彦は叫んだ。
「男の子、っていうところは、滝沢さんの日記と、あたしたちが見たもの、で共通しているわ。
いずれにしろ…」
吹雪ちゃんは病院に入った。
「もう、見れば、たぶん分かることよ」




