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神鳴りさんと夕立ちの午後  作者: 六青ゆーせー
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地下駐車場

安彦が消火器を泥人間に向け、発射すると、泥人間は白く染まるが、別段、苦しむ様子は見られなかった。


足元に置いたドアを取り、盾に使ってじりじり階段に向かおうとするが、泥人間が白く染まったため、背後の廊下から泥が押し寄せてくるのに気が付いた。


安彦は、力いっぱい泥人間を押し返し、階段を上った。三段ほど階段を上ったところで、泥が階段に到達した。

安彦は必死に階段を駆けあがり、地下二階で皆に聞こえるよう、泥が来ている、と叫んだ。


階段は泥で満たされ、その泥の中から巨大なイソギンチャクのように泥人間が長く伸びてきた。

人間の胴体が泥で繋がっているようで、無数の手足が安彦を引き込もうと、わらわらと伸びてくる。泥から出ている部分だけでも、おそらく重量はトンに近いだろう。

その体を支えるためか、長く続いた足は一本一本が力士のように太い。

さすがに安彦の剛体術でも、これを止めるのは難しい。


非常階段を上ると、地下一階、地下駐車場に出た。

駐車スペースは一本道になるように、広い敷地を構造壁で、互い違いに仕切っていて、この壁の両側に車が停められるようになっている。

人間は壁に作られたスチールドアで、直線を進めるように便宜的になっていた。


泡消火器。


ふと目にした壁に、そう書いてあった。


泡消火、というのがどんなものか分からなかったが、この人間イソギンチャクをこのまま外に出すのは、かなりマズイ。


安彦は五十嵐老人と山本さんに逃げるよう叫びながら、駐車スペースに走った。


ドアで壁をショートカットし、ちょうど空いていた駐車スペースを走る。

人間イソギンチャクも、扉を折れて、安彦の背後を追ってきた。


安彦は、壁に作られた、泡消火器のボタンを押した。

ボイラーが動くような音が、どこからか響いた。

安彦は駐車スペースを選んで逃げて行った。

人間イソギンチャクは、背後に迫っていた。


突然、天井から白い泡が沸き上がり、安彦と人間イソギンチャクの上に降り注いだ。

人間イソギンチャクは、泡にまみれながら安彦を追っていたが、不意に体が、ぐんにゃりと崩れた。


安彦は泡だらけになりながら、駐車場を走り出た。が、コンクリートの床で盛大にすっ転んだ。


足が滑って、ツルンツルンだった。


このツルツルが、泥人間の体を壊したものらしい。


安彦は、靴と靴下を脱ぎ捨て、素足で駐車場出口に走った。


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