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神鳴りさんと夕立ちの午後  作者: 六青ゆーせー
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工場にあるもの

安彦たちは雑木林の中を走った。


よく手入れのされた、雑草もほとんどない林を必死に走ったが、川から飛び出してきた液状の黒い泥の塊が、安彦たちを追いかけていた。


泥人間なら、まだ安彦の赤い恋人で弾き飛ばすことも、白尾春奈ちゃんの折鶴で切断することもできたが、ほとんど液体の泥が相手では、赤い恋人も表面を跳ね飛ばすだけで精一杯だったし、折鶴はそもそも紙なので、水には相性が悪かった。


もっぱら吹雪ちゃんが弓で泥を破裂させたが「どうも力の無駄遣いみたいね…」と呟き、走ることに専念していた。


泥は、かすかに登り勾配の雑木林を、安彦たちに追いつくような勢いで登ってきていた。


「もう少し、白犬先生の授業をちゃんと受けておけばよかったぜ!」


牧名正が喘いだ。


「もう少し、この先だ!」


安彦はスマホで車の運転をしてくれている山本さんを呼び出していた。山本さんはGPSで安彦を探し、道の上で待っていてくれているはずだった。


神様が震えている。

もうすぐ、道に出られるはず…。


雑木林の先が、突然目に飛び込んできた。


「えっ、ここは!」


護岸工事でよく見る、格子状に凹凸の入ったコンクリート壁が、林の外に立ち塞がっていた。


「なんだよ、これは!」


牧名正が叫ぶが、安彦も言い返す。


「神様が言っているんだ。間違いはない!」


そうでなければ、万事休すだった…。


コンクリート壁にぶつかるようなスピードで、壁に向かって走っていく。


神様が先を示した。

震える先端がすぐ右横を指示した。

そこには、手摺もない、急で幅の狭い階段が壁を走っていた。


「おいおい、学校の訓練場より酷いぜ、こりゃ…」


牧名正の嘆きに、吹雪ちゃんは一言。


「早く登って!」


自分は立ち止まり、援護射撃を開始していた。

安彦は吹雪の横に立ち、赤い恋人を再び出現させた。


「吹雪ちゃんは上から援護してよ」


吹雪ちゃんは無言で階段を駆け上げる。


赤い恋人が両手を広げ、全力で泥を止めにかかった。


赤い恋人が両手を合わせると、なにか防御壁のような力でも発揮するのか、泥が止まった。


安彦と赤い恋人は必死で防御壁を維持したが。


突然、泥が爆発した。


上で、吹雪が援護射撃を再開していた。


「窪田君、早く上がって!」


白尾春奈ちゃんが叫んでいた。


安彦は、赤い恋人を体に収めながら、階段を上った。


「おいおい、こりゃあ何だ!」


牧名正が怒鳴っている。


階段を駆け上がった安彦が見ると…。


道路の先、川と道が重なる橋のあたりから、真っ黒いものが道路に上がり、さらに晴彦たちの方向に進んでいた。


「えっ…、あれも…、泥?」


泥は道いっぱいに広がり、安彦たちを載せていた車も、泥に飲まれまいとスピードを上げて安彦たちの横を通り過ぎた。


「どうする。車じゃあ走行不能だぜ!」


神様が振動した。


「あ、あれだ!

泥なんてへっちゃらな奴が入工場にいる。

パワーシャベルだ!」


安彦が叫んだが、吹雪が怒った。


「誰が、そんなもの、動かせるのよ!」


「僕、できるよ」


高嶋裕が手を上げた。


「大型免許とその辺の講習は済ませてる」


「君って、何を目指してるの…?」


さすがに伊沢直樹も呆れて聞いた。


「とにかく、急ぐんだ!」


安彦が叫ぶと、道の先から、山本さんが車を置いて戻ってきた。


「山本さんは逃げていいんだよ!

障りは俺たちに向かってるんだから!」


「若様を置いて、そんなことをしたら叱られます」


安彦は言い返したかったが、もう山本も安彦たちと一緒に走っていた。

安彦たちは、必死に廃工場を目指していた。



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