表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神鳴りさんと夕立ちの午後  作者: 六青ゆーせー
78/94

川の中州

沼倉村は、廃工場の裏山を挟んで滝沢村と向かい合っており、僅かな平地の先は、この地方によくある小さな岩山に挟まれた谷間だった。


村のはずれは山の尾根で遮られていたが、少し登ると荒川に繋がる細い支流になっていた。


安彦たちは尾根を上り、岩を下った。

言葉にすると登山のようだが、実際は昔からできていた細い道もあり、数メートルを下れば、川に出る。


この昇降で少しは泥人間から距離を取れると踏んでいたのだが、安彦の計算は脆くも崩れた。


泥人間には、およそ痛覚らしきものは無いと見え、川への急傾斜を、自ら転げ落ちていった。

登りで出来た僅かなリードを潰され、安彦たちは河原で包囲されてしまった。


咄嗟、安彦は手近にあった直径数メートルの岩石を泥人間に投げつけた。


「馬鹿ね! 剛体術を使う体力があったら、赤い恋人の維持に使いなさい!」


「あっ、そっか…」


吹雪ちゃんに怒られながらも、包囲のほころびを突いて、安彦たちは飛び込むように川へ入った。


五月とはいえ、水は雪解け水のように冷たかった。


「…冷たすぎて、痛いね…」


伊沢直樹が青ざめる。


だが、背後には泥人間が数十、群れを成して追ってきている。


安彦たちは、ともかく、川の瀬の中洲に辿り着いた。

これ以上、川の深みに進むのは、どうやら無理のようだった。


安彦は赤い物を拾い上げた。

…おそらく、これが…。


「見ろよ、奴ら溶けていくぜ!」


牧名正が、喜びに叫んだ。


川に足を踏み入れた泥人間たちは、数歩歩くうちに足が溶け、グラリと倒れた。

そして胴体が水につかると、もう、顔面が溶解し始めていた。


泥が、内部で水を吸い上げていくらしい。


顎がよじれ、顔面がボロり、と崩れた。


「これはグロいね…」


伊沢直樹は完全に引いて、顔を背けた。


「よ…、よーし、作戦成功だ…」


安彦は言うが、吹雪ちゃんが遮った。


「まだよ! 下流で泥が集まっているわ!」


ふと、流れの先に目をやると、泥人間だったものらしき泥は、透明な水の中で、まるで生き物のように水中を蠢き、徐々に中州に近づいて来ていた。


「やばい! どうしよう!」


牧名正は一転、悲鳴を上げるが。


安彦は叫んでいた。


「ほら、滝沢邸に向かう途中で橋を渡っただろ、この川が橋の川なんだ!

だから川沿いを進めば、道に出るはずだ!」


吹雪ちゃんも叫んでいた。


「もう、やるしかないわ! 走るわよ!」


声を発した時には、吹雪は水飛沫を上げて川に入っていた。


沼倉村の尾根道沿いに河原を走ると、雑木林が茂っていた。


「木はヤバイ!」


避けようとする安彦だが、不意に、わっ、と叫んだ。


安彦の横に浮かぶ神様が、震えていた。

神様の先端が、雑木林に向かっている。


安彦は、嫌そうに雑木林を見上げたが…。


神様は震え続ける。


「みんな、こっちだ!」


安彦は雑木林に飛び込んでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ