沼倉村へ
周囲の木がバタバタと倒れ、大地は唸っていた。
安彦たちは、よろめいて地面に倒れた。
地面が揺れている。
だが、これが地震ではないことぐらいは、日本人には誰でも判ることだった。
地面そのものが、生物のように、蠢いているのだ。
木が、地下に広がった根を噴き上げて、土砂とともに飛び出すように倒れていく。
ごう、と地面が唸ったと思うと、安彦の真横の大木が、仲間に向かって倒れてきた。
安彦は、倒れてきた木を、剛体術で受け止めた。
「早く、沼倉村に!」
「何を言ってるんだ、あそこには泥しかないんだよ!」
五十嵐老人が叫ぶ。
「とにかく、木が危なすぎる。木のない所に行かなきゃあ!」
言いながら、大木を横に投げ捨てた。
五十嵐老人は、安彦の理屈に説得されたのか、腕力にビビったのか分からないが、素直に山を下った。
木は天に向かって伸びているものと思っていたが、実は地下にも長く伸びていた。
十メートルの大木は、こうして地面から飛び出してきてみると、優に二十メートルの物体だった。
それが、あっちでも、こっちでも、大地の震動に合わせて、バタバタと倒れていく。
先に伊沢直樹たちを逃がし、安彦と吹雪が最後を走っていると、不意に地面が爆発した。
うわぁ、と叫びながら、風吹をかばって盾になった安彦が見たのは、地面から飛び出してきた巨大な岩石だった。
ヤバイ…。
地面を操れるものは、木を倒すだけじゃあなく…。
ドカン、ドカンと地面が爆ぜ、巨石が飛び出してくる。
転げ落ちるように安彦たちは山の下の平地に飛び出した。
土から、斜めに傾いた茅葺屋根の民家や、枯れた庭木が逆方向に傾いたまま泥に埋まった村、それが沼倉村だった。




