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神鳴りさんと夕立ちの午後  作者: 六青ゆーせー
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仁王像

安彦は戸惑っていた。


自分も見た、あの蛆虫の山の中から現れた少年が語られている、とばかり思っていた。

それが、泥が膨らんだ姿は仁王様のような大男だという。


安彦は口を挟もうとしたが、吹雪が手で止めた。

続きを促されて、五十嵐老人は語った。


「泥の巨人は、自分の足で、ドシドシと歩き、黒々とした巨大な足跡が床に付きました。

まさに、私らが悪ふざけだと思ったのは、その非現実的な三十センチ以上もある足跡のせいでした。


泥の仁王は、作業部屋の真ん中まで歩き、一番汚れては困る場所で自ら破裂したのです。

しかし…」


五十嵐老人は言葉を飲み込んだ。


「その寸前、隠してあったはずのカメラを見上げ、仁王はこう言ったのです。

悪鬼のような恐ろしい顔に目を剥き。


この事、絶対に話してはならんぞ


と、そう言ったのです。

岩石を擦ったような、不気味な声でした」


五十嵐老人は叫ぶように顔を歪めながら、語った。

その瞬間。


「…喋ったな…」


安彦は森を見上げた。


全員が、あらぬ方向を、思い思いに見上げている。


それは、どこか、高い所から響いた声のようで、方向も、場所も、なにも見当が付かない。


ギャア、と鳥が鳴き、森中で一斉に飛び立った。


森がざわざわと、揺れていた。


何か、とんでもないことが起きる!


そう思った瞬間。


祠の横に、祠を護るように立っていた木が、突然倒れた。


ゆっくりと、傾き、倒れていった。


地面がメキメキと盛り上がり、枝よりも長い木の根が、大量の土を巻き上げながら地面から姿を現し、祠を押し潰し、地下の石や砂や様々な堆積物を噴き上げながら、大木は根っこから横倒しになって倒れた。


空から大量の土砂が降り注ぐ。


大地が揺れ、安彦はうわぁ、と頭を抱えて、蹲った。


その自分の足の下から、地が崩れ、巨大な木の根が飛び出して、奥にある木が、祠の木と同様に、横倒しになった。


これはまずい!


地面が鳴動していた。

あの声は、おそらく地下から響いたのだ。


「逃げろっ!」


安彦は叫び、祠から右に折れる道に進んだ。

そこを降りた先には、たぶん沼倉村があるはずだった。


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