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神鳴りさんと夕立ちの午後  作者: 六青ゆーせー
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トウモロコシの団子

「もう…、この祠のことを知るものは、地元でもいないでしょう…。


元々は、どこかから養蚕の技術が伝わってきた時に、同時に入ってきたものではないか、と思うのですが、私らは、オシラサマの伝説の最後に、こう教わったものです。


首を切られた馬の首にまたがり、娘は飛び立った。

娘と馬はこの地に辿り着き、根を下ろした。

だから、私らは、娘と馬の子孫なのだ、とね。


そして、トトサは、今も二人を探しているので、決して見つかってはいけない。

トトサは、全てを泥の中に沈めてしまう、と」


「え、泥に沈めるんですか? 沼倉村みたいに?」


安彦は驚いた。


「沼倉村をご存知でしたか。

ここ滝沢村では娘子サ、沼倉村では馬子サを交互に祭ってまいりました。お祭りは毎年あるのですが、一年ごとに滝沢村と沼倉村、主催する村が変わっていたのです。


ですが、昭和十九年、沼倉村は一夜で泥に沈んだのです。

お祭りの前日の事でした。

その日は別に雨も降ったわけでも無かったのです。

ただ、夜が明けると、もう沼倉村は泥に埋まっていたのです」


「ちょっと待てよ…」


牧名正が慌てて独り言のように言った。


「昭和十九年に沈んだって、さっき見た滝沢さんの日記では、確かに仲の良い沼倉村の三人の子供と遊んだって、村にも行って、トウモロコシの団子をもらったって…」


「そうですか…。

社長も会いましたか…。沼倉村にはカシマサマがお祭りしてあったせいか、三人の子供に会った、遊んだ、という地元の子供が、今でもたまにいるようなのです。


いえ、カシマサマは子供の神様、決して悪いことは無いので、私らも何も言わんのですが…。

しかし、沼倉村に行ったとはねぇ。

トウモロコシの団子、など私ら昭和一桁でも、本当に戦争の悪い頃に食べた程度ですよ。

トウモロコシを粉にして、サツマイモを餡の代わりに入れて、ねぇ…」


確かにそれこそが、滝沢さんが食べたというトウモロコシの団子だった。

滝沢さんは貧しい村だと思ったようだが、昭和十九年のトウモロコシの団子は、村の精一杯のご馳走だったのかもしれなかった…。


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