64/94
日記10
二月二十日
「あなた、やめてください、と妻に言われ、私は自分が鼻歌を歌っていたことに気が付いた。
若い頃には、あまり本当のところ意味も分からずに、流行っているから、とジャズ喫茶になど通ったものだが、ラジオでセロニアス・モンクのピアノに出会い、最小の音でジャズを表現する、点描のような演奏に感激しCDを取り寄せていた。
ラジオ番組を通じて、他のジャズプレーヤーとも出会い、やはりピアニストのビル・エヴァンスも好むようになっていた。
ふとした瞬間、そうしたメロディが口に出ているらしい。
興味を持って聞いてみるとジャズは非常に奥が深く、多様な音楽だった。
ビル・エヴァンスも静かな演奏もいいのだが、アンダーカレントでは、ジム・ホールと組んで乗りのいい軽快な音楽も披露している。
当時のジャズ喫茶でも名盤として名高かったカインドオブブルーでは、名高いジャズトランペット、マイルス・デイビスともビル・エヴァンスは共演していた。
私自身にしてみれば、無意識に鼻歌を歌っている、などというのは、とてもいい気分なのだが、もともと私は音痴である。
妻にしてみれば、とても聞けたものではないのだろう」




