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日記8
二月十二日
夕食時に、娘が帰ってきた。
一週間ぶりの親子三人の賑やかな食事になった。
話が弾み、そう言えば…、と双葉は話し出した。
「お父さん、お父さんの言っていた村に、今日、行ってみたわ」
ほぅ、どうなっていた?
と、私はさりげなく聞いたが、実は興味津々だった。
「川から水が入ったのね…、泥だらけの廃村になっていたわ。子供の神様、見たかったけど、ちょっと沼みたいになっていたから、村の中までは行けなかったわ」
滝沢氏も納得した。
ああいった村は、今の時代、そうなって当然だろう。
たぶん住人は、私のよく遊んだあの子たちも、きっと今は東京あたりで暮らしているのだろう…。
しかし、夜半、滝沢氏は考えた。
自分も長くここに住んでいるが、一つの村が泥に埋まる、等という話は聞いたことがない。
むろん大学から会社員時代は東京に暮らして、田舎のことなど忘れ果てていたので、その頃に何かあったのかもしれないな、ぐらいに思った。
「翌日、娘は私がオープンリールを見つけた祖母の部屋で、古い写真を見つけた、と喜んでいた。昭和初期の写真が珍しいらしい。
娘は平成元年の生まれなので、昭和というと、ずいぶん昔のもの、と感じるらしく、PCでも見れるようにCDに焼く、という。
なるほどPC画像であれば、私でもなんとか見れるし、娘に昔話もできるだろう」




