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神鳴りさんと夕立ちの午後  作者: 六青ゆーせー
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元服の儀式5

赤い球体が自分の横を通り過ぎていった。


安彦は、水中のような場所を、ただ漂っていた。


青いヒョウタンのようなものが、蠕動運動をしながら、安彦の前を進んでいく。

自分も進めるかと思って、試しに平泳ぎをしてみるが、全く進めない。

漂うだけだ。


眩しく光る点がいくつも飛び交い、数十メートルもの大きさの紅や薄緑の帯がひらひらと流れていくが、安彦だけは動かない。


と、白いユリの花弁を下に向けたような生き物が、花弁を器用に膨らませ、フワフワ安彦に近寄って来た。

白ユリと安彦は、しばらくお見合いをしていたが、ユリは、ふ、と離れていった。


周囲に何もない。


安彦は、不意に言いようのない寂寥感に襲われた。


涙が、浮かび、安彦の横を流れていった。


その涙が透明な液体の珠になった瞬間。


前に通り過ぎたはずの赤い球体が、遠くから一直線に安彦の元に飛び込んで来て…。






安彦は、お山の頂上で身を起こした。

どうも、社の下で寝ていたらしい。


十二時間も眠った後のように、スッキリとした気分で立ち上がった時。


社の向こうから朝日が差してきた。


夜明けだ…。


まだ本当に輝く前の、赤い太陽を、まるで初めて見た時のように嬉しく眺めたとき…。

安彦の横に、赤い球体が、フワフワと浮いていた。


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