日記4
オープンリールのテープは見つかったが、再生する機械は分からない。
滝沢氏は奥さんの帰りを待って聞いてみるが、たばこは出てきたが、オープンリールの機械は見つからないという。
どうも滝沢氏の母親が、テープだけを持っていたようだ。
別に、そんなものはどうでもいいようなものだったが、滝沢氏には時間が余っていた。
さいわい、PCはまだ見れる。通信販売で簡単なオープンリールを購入した。
数日後、機械が郵送されてきた。
冬休みの娘さんに手伝ってもらい、テープをセットした。
スイッチを入れると、誰のものとも知らない声が聞こえてきた。
奇妙な節をつけて、女の声が唸っている。
読経に近い物だが、訛りがひどくて、なんと言っているのか、聞き取れない。
娘さんは薄気味悪い、と逃げてしまったが、滝沢氏は聞き続けた。
長く聞いていると、それは伴奏も何も入っていない、民謡のようなものだと気が付いた。
そして、訛りには聞き覚えがあった。
確かに訛りは、この地方の古い言葉のようだった。
それから数日、パズルを見つけた子供のように、滝沢氏はその民謡と取り組んだ。
そして…。
「継子憎しと お山に捨てられ 合いの手
石のせに乗り お里に帰る
鷹の谷間に ほおって落とされ 合いの手
若に拾われ お里に帰る
船に乗せられ 島流し 合いの手
漁夫に見つかり お里に帰る
穴に落とされ 埋められて 合いの手
殿に知られて お里に帰る」
「継子って言うのは、義母さんってことなのかな?」
「まぁ、そうでしょうね」
安彦の疑問に、吹雪が答えた。
「しかし、ずっとお里に帰っているよなぁ」
牧名正は、呆れたように言うが。
「日本の古い童謡は、裏の意味がある場合もあるのよ」
白尾春奈ちゃんは言った。
皆が春奈ちゃんに注目すると。
「行きはよいよい、帰りは恐い、という、とうりゃんせ、の歌詞には、実は、もう帰れない、という裏の意味があるらしいのよ。
普通に言ったら罪になる、とか公には口にできない言葉を、童謡という形でボカしていっているのよ。
お里に帰る、という言葉が、生きて帰っているのかどうかなんて、どういう状態を歌っているのかが分からないと何も言えないのよ」
「確かに、山に捨てられたり、島に流されたり、生存率は低そうだよね」
伊沢直樹が声を潜めた。
「特に穴に埋められる、なんて、あとで知られたって普通、死んでるよな」
と牧名正。
「まぁ、先があるのだから、読みましょう」




