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神鳴りさんと夕立ちの午後  作者: 六青ゆーせー
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日記3

その口調は、徐々に切迫した哀願のように、私には思えてきていた…」


滝沢氏が、こうした日々の不安や困窮をPCに綴っているのは、PCの画面は光っているので、滝沢氏にも見えやすい、せいだった。紙は、もう見ることも書くこともできない、という。


むろん身に付けたブラインドタッチで、手元を気にする必要がない、せいでもある。


滝沢氏は、大学を出て大手百貨店に就職し、若い頃から、当時の日本語ワードプロセッサーを、そしてウインドウズを使って事務仕事をこなし、仕入れなども担当していた。生鮮食料品のうち、メンチ、ハンバーグといった挽肉系の食品は、レストランで食べるのと食品売り場に並ぶ物とでは品物の品質の差が大きい、と感じた。


銀座にアメリカのファーストフード店、マクドナルドがオープンし、日本でも急速にハンバーグが子供たちの好きな食べ物として取り上げられるようになっていた。


品質の良いものを生産できれば、必ず当たる。


その思いから独立し、以来、成果を上げてきた。


今も工場は五十嵐さんという専務が良くやってくれていて、業績は維持しているが、後の世に言うバブル景気に向かっていく日本では、次々と海外の新しい文化や食べ物が紹介され、世間に広まっていた。


このままでは、後れを取る。

その位は、滝沢さんには分っていたが、外に出るのが怖かった。

今や、車のエンジン音でさえ、「…お歌、歌ってけろ…」と、囁く声に聞こえるのだ。


一月十五日

私はパイプの煙草を切らしていることに気が付いた。

だが、家内は近所の友達と外出していた。


東京の煙草屋から、段ボールで取り寄せているので、おおよその場所は分かる。そう思い、今は物置になっている、亡き母の部屋に入った」


滝沢氏は、手探りで煙草を探したが、何かに躓き、転倒してしまう。


「その時、ガチャと金属的な音がして、私は偶然に、何か丸いものを手に取ってしまった。

しばらく触っていて、それがテープ、おそらくオープンリールだと気が付いた」


「なんだろう? オープンリールって?」


安彦の問いに牧名正が答えた。


「磁気テープだよ。音を録音する、古い機械だ。まぁカセットテープの古いタイプだと思えばいい」


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