石の顔
三人の子供が、ほぼ無表情に立っている、古い写真。
子供たちは、皆、着ぶくれするほどに着物を重ね着し、遠景には木造家屋が見えている。
ただ、問題はそこではなかった。
子供たちの背後に大小の石を積み上げた、何の意味があるのか、無いのか分からないものが建っている。
大きさは、子供たちよりも高い。
残念なことに、大昔の子供なので、髪型からも、人相からも年齢の特定が難しかった。
中学生、というほどの歳ではないのだろうが、体型も着物を重ね着していることで、よく分からない。
「二、三年生ってところかなぁ」
安彦は首をひねった。
「ここまで昔の写真だと、年齢が分からないね」
伊沢直樹も困り顔だ。
「隣に大人でもいればいいのだろうが、他に人物が映っていないからな。
だが、今問題なのは…」
背後の石だった。
牧名正の、というよりは元々白尾春奈ちゃんが言い出したのだが、子供たちの背後の石を積み上げた原始的な石の塔。そこに、一つ一つ、よく見れば顔が浮き出して見えていた。
一部、子供に隠れて見えない石もあるが、見えるものには、みな顔が浮かんで見えた。
顔がある、と思うと急に、無表情な子供たちまで、何か恐ろしいような気がしてくる。
「普通、少しは笑う、とかするんじゃないかな…」
そこに恐ろしさの源泉がある、とでも言いたげに伊沢直樹が囁いた。
「単に写真がまだ、珍しい時代だったんだろう。
明治大正ぐらいの写真の日本人は、あまり笑顔でピース、なんてしてなかったんだよ」
牧名正は、そういう本を見たことがある、と話し、やがて技術論を語りだした。
「ほら、ここにはスキャナーとかないだろ。一度コピーをした、とか、昔の写真の場合は、フィルムに光を焼き付けて撮影していたんだけど、ネガフィルムが無い場合、写真を、もう一度写真で撮影して、ネガを作ったんだ。
そういうのを複写って言うんだけど、その再撮影の技術が未熟だったり、または元の写真を拡大して撮影した、なんていう場合に、少し荒い画像になってしまったりするんだ。
それで、普通の影だったものが、繋がって、こういう人の顔に見えたりするわけだ。
なんにしろ、デジタル映像をスクショで保存、みたいなわけにはいかないのさ」
確かに画像は、素晴らしく鮮明、とはいっていない。
かといって、ドット画のように荒れているほどでもなかった。
「でも、確かに、一つ一つ見てみても、全ての石に顔が見えるよ。
隠れミッキーじゃあるまいし、こうも都合よく全てに顔が浮き出るものなのか?」
安彦は首を傾げた。白尾春奈ちゃんも乗っていたのか。
「あるいは、本当に心霊写真とも取れるけど、どう?」
と吹雪ちゃんの顔を見た。
「さぁ。
テレビとかでは、これは加工したもので、こっちは本物、とかいう人もいるけど、あたしが習った退魔の術には写真の真贋を判別する法なんて無かったわね。ましてパソコンの壁紙に霊障があるのか、なんてさっぱり分からないわ。
まぁ、色々流派はあるのだし、はっきりないとは言い切れないけど…」
ふむふむ、と白尾春奈ちゃんは頷き。
「と、なると心霊写真か偶然か、もしそうじゃないとするなら…」
指を持ち上げた。
「本当に顔があるのか、よ」
「えっ! 本当に顔がある?」
安彦は驚いた。
「そう。
彫ってあるのか、書いてあるのか判然としないけど、やはり全部にある、っていうのは普通じゃないわ。
推測に過ぎないけど、全ての石に、本当に顔があるんじゃないかしら」
唖然とする全員に、白尾春奈ちゃんは笑って。
「単なる推測よ。
本当のところは分からないんだから。今のところ。
たぶん、このDIARYってところにヒントがあるんじゃないかしら」
ウインドウズのデスクトップには、見慣れないアイコンが幾つか並んでいたが、確かにDIARYとあるアイコンを調べないわけにはいかなかった。
マウスでアイコンをクリックすると、ワープロソフトが起動した。




