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神鳴りさんと夕立ちの午後  作者: 六青ゆーせー
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滝沢邸

汚れた高い石ブロックの塀の中には無数の雑草が生い茂っていた。

沢山の庭木が伸び放題のまま家を覆い、滝沢邸を薄暗く、陰気な雰囲気にすべく五月の陽光をすべて遮っていた。


高く茂った雑草の先の滝沢邸は、荒廃してはいたが、建物自体は、どこかル、コルビジェを意識したような、モダン建築だった。

一つの大きな長方形を横に寝かせた灰色のコンクリート建築の上に、横にずらした長方形が乗っており、ずれた上の長方形部分が、ピロティとして一階部分を覆っている。


荒廃した庭は、雑草のため、どこに何があるとも知れなかったが、逆に勝手に入っても誰も気が付かなそうだ。

安彦たちは雑草を折らないように気をつけながら、滝沢邸のピロティ部分にある玄関ドアに忍び込み、伊沢直樹は玄関周囲を見回した。


「伊沢君、鍵を…」


安彦は声をかけたが、伊沢直樹は落ち着きはらった態度で、ポストを開けたりしていた。


「あ、あった」


玄関ドアの横に作られた飾り柱の上に、鍵が置かれていた。


「こういう家は、一年に一度ぐらい不動産会社が管理に入ったりするから、大抵わかりやすい場所に鍵を置いているんだよ。古い不動産屋の常套手段だよ」


滝沢邸の玄関ドアは、忍術を使うまでもなく開いた。

長年使用されていないドアは、猫の鳴き声のような音を立てて開いた。


「中も割と掃除されているようだね」


薄く埃をかぶった床の上を、伊沢直樹は住宅に侵入しなれているように、堂々と靴を履いたまま入った。


「う…」


安彦は入り口で思わず立ち止まった。


昭和の家ならではの広い石の玄関の奥は、約三十畳ほどの空間になっていて、その部分は吹き抜けだった。

小型のシャンデリアが吊るされた高い天井の横、二階廊下が部屋を横断して続いていて、右手奥からくの字に曲がって、階段になっている。

二階廊下は一つ一つ見事に装飾された手摺が続いていたが、その廊下と階段の際の部分こそが滝沢氏が首を吊った場所だと分かった。


なぜなら、今もまだ滝沢氏は、ぶら下がっていたからだ。


首を斜めに傾げるようにして、ほぼ真円に飛び出した眼球が、安彦たちを虚ろに見下ろしていた。

舌が、顎より長く垂れ下がり、首は三十センチ以上に伸びていた。


伊沢直樹には滝沢氏は見えていないようだったが、何かを感じたのか、ひょい、とぶら下がった氏を避けて、階段の下に続く廊下に進む。


その先のドアを開けて、伊沢直樹は滝沢氏越しに声をかけた。


「ここが書斎らしいよ…古いPCがある」


安彦は滝沢氏と目を合わせないようにしながら、霊のすぐ横を歩き抜けた。






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