吹雪の怒り
カフェテリアのカウンター内では、調理の人々が仕上げを急いでいた。
安彦と吹雪は、テラスでお茶とコーヒーを飲みながら、話を続けている。
「ああ、そういえば、タゴサとマゴサって、調べてみたけど、なにもヒットしなかったよ。変な居酒屋とか出てきたけど」
「おそらく方言が入っているのよ。それに同じ神様でも別の名がある、なんてことは日本書紀にも書いてある通りだから、その地方だけの呼び名もある、と考えた方が良いんでしょうね。
タゴサ、マゴサだけでは何も分からないも一緒よ。師匠には話しておいたけど」
と吹雪は肩をすくめた。
「もう少し、情報が欲しいよね。
殿様に言って、滝沢さんが首を吊った家を調べさせてもらう、とか双葉さんの話を聞く、とかした方が良いんじゃないかな」
安彦は意気込んでいったが、吹雪は首を振り、安彦を睨みつけた。
「あのねぇ、あたしはプロの退魔師ですらないのよ。
これ以上首を突っ込んでも何の得もないの。
まして、知識も経験もないのに、面白半分で障ると分かっている案件に近づくもんじゃないわ。
あんたもよ。
人は容易く死ぬものなのよ。それは修業を積んだ退魔師でさえ死ぬのよ。
あんた、ちょっと霊を成仏できるからって、調子に乗ってるんじゃないわよ!」
そこで会話は打ち切りになった。
カフェテリアが開いたのだ。
吹雪の剣幕が凄かったので、安彦は一切、廃工場の話題を出せなくなっていた。




