殿様のお願い
下校時間になり、安彦が校門にさしかかると、ニコニコと笑った小柄な老人が待っていた。
「あ、今井の殿様!」
「いやぁ、安彦君、ちょっと困ったことが起こってね。君に相談できないかと思ったのだが、どうかね」
「えっ、ええ、それは大丈夫ですけど一体どういう…?」
「それがねぇ、君は覚えているかね、昨日わしの部屋に部屋に来ていた中島永信という退魔師のことを」
「ええ、もちろん覚えていますよ。かなり強烈なキャラクターの人でしたよね」
「あれに依頼した廃工場で、また事故が起こってしまったのだよ。
中島は、完全に祓っているのだから、自分たちのせいではない、と言うのだがわしは信じられん。
と、いってわしが見たところで何も分からんし…、安彦君ならば神に憑かれた身、何か分かるのではないかと思ってな…、安彦君も専門外とは思うが、この手のことは、いい加減な輩に依頼もできんだろう。
こっちは何も見えさえしないのだから。
わしと秩父まで行ってくれないかと思ってなぁ…」
困り顔で殿様は言ったが、安彦も困った。
何しろ安彦は霊感ゼロなのだ。霊が運動会を開いていても分らないだろう。
かと言って、殿様がわざわざ自ら足を運んでくれているのに、無下に断るわけにもいかない。
そう思った時、校門を吹雪ちゃんが通り過ぎた。
「あ、吹雪ちゃん、吹雪ちゃん、こっちこっち!」
大声を上げた安彦に、吹雪は本気で嫌な顔をしたが、大人の老人も隣にいるためか、近づいてきてくれた。
「彼女は退魔師なんです。彼女に見てもらいましょう」
「おお、そうか、退魔師か。
むろん、手数料ははずむよ」
お金がもらえる、と思ったからか、急に吹雪ちゃんの顔が輝いた。




