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箱庭物語  作者: カモミール
第1章 始まるサバイバル
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第7話 ~遺跡探索と遺跡に住むもの~


「行くか。」


 悩んだ末に出した答えはマグ・メルト遺跡に挑むことだった。そこで必要になるのは光源だ。階段の下は暗く中がどうなっているか確認できない。そこでキャンプなどで使われるランタン型のライト(600TP)を購入した。これで残りは300TP。璃緒は捲っていた袖を伸ばし皮手袋を着ける。いつでも能力を発動できるように注意しながら階段を下りて行った。


 階段を下りた先は左右に延びる通路だった。遺跡の中はひんやりと肌寒いくらいの気温で、当然ライトの光が届く距離までしか見渡せない。道幅は狭くはなく大人が三人並べるほどの幅で、高さは2mくらいだ。璃緒は右に向かって通路を進む。時折吹く風の音と水が滴る音が静寂を強調するかのようだ。


「侵入者用の罠とかなければいいんだが。」


 璃緒は壁に手をつきながら進んでいく。すると古ぼけた扉が現れた。扉を開けると小さな広間だった。机と椅子、本棚などもあり誰かがここに住んでいたみたいだ。


「何かそれらしいヒントとか無いか?」


 本棚に近づき探る。しかし引き出しにも棚の中にも何も入っていなかった。ただここにもあの壁画と同じ絵が飾られていた。


「目ぼしいものは無いっと・・次に進もうか。」


 璃緒は他の部屋も調べてみる。しかし浴室と思われる場所だったり、子供部屋、物置と遺跡探索というか余所様の家を荒らしている気分になってくる。見つけたのは布切れ、何処かのコイン、古ぼけた人形と役に立ちそうになかった。そして目の前に在る部屋が最後で今までの流れからして寝室だろうと扉を開ける。やはりその予想は当たっておりベットが二つと衣装棚が二つ置いてあった。そしてここにも何もなかった。


「右の通路は外れだったか、戻って左に行ってみるか。」


 璃緒は来た道を戻ろうとしたとき微かに扉が開く音が聞こえた。そして響く足音。


「(誰だ?俺以外にも遺跡に入ってきたのか?)」


 璃緒はベットの下に身を潜め、ライトも消し息を殺し隠れる。コツっコツっと聞こえてくる足音がついに璃緒が潜む部屋の前で止まる。キィっと開かれたドアの向こうにいたのは蝋燭(ろうそく)を手に持った骸骨だった。


「(何だこいつ!!?)」


 咄嗟に口を押さえ様子を窺う。ボロボロの女性服を纏い赤く光る眼をした骸骨はそのまま寝室に入り衣装棚で何やらゴソゴソと探った後、扉を閉めて出ていった。


「ここに来てホラーか」


 足音が遠ざかるのを確認し、璃緒はライトをつけベットの下から這い出る。


「あの骸骨何かやってたな。」


 骸骨が開けた衣装棚を開けてみるとそこには小さな銀の鍵が仕舞われていた。


「さっきは無かったから、あの骸骨が置いてったのか。取りあえず貰っていくか。」


 璃緒は小さな銀の鍵を手に入れると慎重に扉を開く。そのまま来た部屋や通路を抜けていくと丁度骸骨が子供部屋に入っていくところだった。これ幸いと璃緒は足音に気を付けながらあの骸骨の住処から脱出した。



 璃緒はそのまま最初の分かれ道の左側に進む。すると地下に続くと思われる階段があった。璃緒が階段に足を踏み込んだその時、遠くの方からバタンッと大きな音が聞こえ通路からカッカッカッと何かが走る音が響いてきた。


「っ気づかれたか?」


 急いで階段を下りる。バンッと上の部屋のドアが開けられた音がする。璃緒は走ってそのまま通路を突き進む。後ろからはあの足音。璃緒は右に左に進んでいる内に、足音は聞こえなくなったのでどうやら撒くことに成功したものの、自分の居場所が分からなくなってしまった。


「はぁはぁ、どうするかな。」


 息を整え来た道を振り返る。そこには暗い通路が見えるだ。


「進むしかないか・・」


 もう来た道を引き返すことは出来ないと璃緒は覚悟を決めて先に進むことにした。ライトがあるとはいえ少し先は何も見えない暗闇、そんな中を当てもなく歩き回るのは予想以上に璃緒の精神を消耗させる。時間の間隔も日が差し込まない地下だと分からなくなる。もう1時間以上歩き回っているのかもしれないし、ほんの10分かもしれない。通路に変化はなく、同じ道をぐるぐる回っているのかとも考えてしまう。


「駄目だ、しんどい。休憩にしよう。」


 璃緒は壁に背を預け座り込む。テレポを起動し水を購入する。これで残りの所持TPは250となった。口に含む程度の水を飲みリュックにしまう。そして体力の回復を図った。


「(ここ広すぎだろう。何のために作られたんだ?)」


 かなり動き回ったはずだった。歩き疲れるくらいなのだから相当だろう。もし昔上の居住スペースに誰か住んでいたのなら絶対この地下迷路で迷子になるはずだ。歩き始めて最初は何処かにヒントでもあればと壁や天井を注意深く見ていたが、特におかしなところは無く、探すのを諦めた。


「よし、行くか。」




――――カーンッ――――――カーンッ―――――




「・・ん?」


 いつまでもここに座っていても仕方がない。璃緒は行動を開始しようとしたとき金づちでものを叩くような音がが微かに聞こえたのだ。


「こっちか?」


 反響して分かりにくいが、音のする方へ歩いていく。例えあの骸骨が何かしらしていたとしても音の方へ向かうのに躊躇はなかった。今のままではどうせ餓死するのは目に見えている。ならば可能性のある方に賭けるしかないのだ。


 段々と音が近づくにつれ璃緒にも緊張が走る。曲がり角の向こう側から淡い光も漏れているのが確認できた。璃緒は壁に引っ付き角から様子を窺う。


「何してんだ?あいつ。」


 璃緒が覗き込むと奥に今までとは雰囲気が違う黒い鉄製の扉とあの骸骨がいた。扉は南京錠で閉じられておりその南京錠に向かって骸骨が石を叩きつけている音だった。響いてきた音は南京錠に石が叩き付けられている音だったのだ。骸骨はひたすら南京錠を破壊しようとしている。ただその骨だけという見かけ通り力がないのか南京錠はびくともしない。それでもあきらめず微かに震える手で骸骨は南京錠を破壊しようとしていた。その後ろ姿はどこか悲しさと必死さが伝わってくる。あの扉の向こうにあそこまで必死にさせる何かがあるのだろう。


「~~っなあ!!」


「!?」


 璃緒は声を掛けてしまった。骸骨の悲しき背中に何やら言い知れぬ感情が沸き上がったのだ。璃緒に声を掛けられた骸骨は動作を止め驚いたようにこちらに振り向く。そして璃緒の姿を確認すると腰からボロボロのハサミを取り出し璃緒に向ける。その姿は酷く不格好で手もプルプルと震えていた。


「その南京錠、これで開くのか?」


 璃緒は警戒する骸骨を刺激しないようにゆっくりとした動作で寝室から拝借した鍵を取り出す。こちらの言葉が通じたのかカチャカチャと口を動かす骸骨。骨だけの姿で何故か動けるみたいだが発声機能は無いみたいだ。手に持ったハサミは下ろすことはない。


「鍵を返すから俺もその先に行っていいか?」


 骸骨は困惑した様子でカチャカチャ喋る。


「何言っているか分からんけど、俺に危害を与えないならお前に何かする気はない。俺はこの遺跡の奥に用があるんだ。」


 璃緒は骸骨の目をしっかり見て話しかける。これでダメだったならば、ハサミを奪って無力化を図るしかないかと物騒なことが頭を(よぎ)るが、あの必死さを見てしまった後では少々やりずらくなってしまった。骸骨の方も悩んでいるみたいだが、決心したのかハサミを下ろし扉の前からズレる。


「いいのか?」


 一応確認を取る。骸骨は無言で頷き南京錠を指さす。璃緒は骸骨を視界から外れないようにし扉にゆっくり近づく。そして前についた時、扉の模様に驚く。今までこの遺跡にあった絵は宙を飛んでいる人らしき者が、何か食料らしきものを下にいる者たちに与えているという絵だった。花が舞い散るとても幸せそうなだった。だがこの扉に描かれているのはその飛んでいる人を襲う下の者たちと異形の化け物だった。辺りは倒れる者と逃げ惑う人々。地獄と化していた。


「何だこの絵は・・」


 一体この扉の向こうに何があるのか、隣の骸骨に目を向けると悲しそうに下を向くだけである。璃緒は困惑しながらも扉に鍵を差し込んだ。何の抵抗もなくガチャリと南京錠は開いた。




璃緒

所持TP250

〔内訳〕

           900

水         - 50

ランタン型ライト  -600

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