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箱庭物語  作者: カモミール
第1章 始まるサバイバル
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第6話 ~能力発動と島の謎~


「ガファアアア!!!」


 最初に動いたのは赤ゴリラだった。自分の縄張りに侵入した目の前の敵に突進する。璃緒は右に飛び込み回避する。素早く起き上がり、振り向いた赤ゴリラの背中に跳び蹴りを繰り出す。


「ウゴッ!」


 だが流石ゴリラなのか多少怯んだが大したダメージになっていない。腕を振り上げて叩き付けてくる。璃緒はバックステップで躱しすぐさま赤ゴリラの顔面に拳を叩きこんだ。ボキッと赤ゴリラの牙の一本が折れる。赤ゴリラは驚きと痛みのあまり叫びながら腕をめちゃくちゃに振り回す。


「動物の歯くらいの硬さなら、問題なく叩き壊せるな。」


 璃緒は皮手袋をつけた両手を開いたり閉じたりしながら調子を確かめる。普通ならばどれだけ鍛えても動物の牙を素手でへし折るなんて芸当簡単には出来ない。何かしらの道具を使えば別だが璃緒の手に付けられている手袋は普通の皮手袋だ。それを可能とするのは璃緒の能力である【硬化】である。璃緒は自身が触れている物質を固くする力を持っていた。これにより例え薄い紙であったとしても、丸めれば鉄と同じ硬度まで高めることが可能なのだ。即ち今の璃緒の拳は鉄の以上の強度を誇る。因みに璃緒の幼い頃の実験ではシャープペンシルの芯で、家の柱(木製)に穴を空けることが可能だった。(手に持った芯を金づちで打ち付けた)


「ゴ、ゴアァァアアア!!!」


 赤ゴリラは怒りで満たされていた。朝に何やらいい香りのする方向へ歩いていると、自分より小さい猿がぶつかってきたのだ。軽く脅してやるとすぐにどこかへ行ってしまったが、それよりもあの美味しそうな食い物だ。食べてみるととても旨い。目障りな小猿を追い払いこの場所を自らの縄張りに決めた。腹いっぱいに食べしばらく眠って起きてみると朝の小猿と中猿がいるではないか。更には俺の食い物にまで手を出している。


 すぐさま攻撃を仕掛けた。小猿は捕まえることに成功したが、中猿は逃げ出した。逃がすものかと自身も飛び降りると奴は逃げずにこちらを見て鳴いている。どうやら戦う気のようだった。上等だ!と戦ってみるとチョロチョロと動き回り攻撃が当たらない。更には蹴りつけ、自慢の牙をへし折ってきたのだ。今まで同属の争いを勝ち抜いてきた自慢の牙をだ。許さない、絶対に殺してやると。ただそれだけを考えていた。

 


 赤ゴリラは怒りに身を任せ突撃を繰り返す。璃緒は単調になった攻撃を冷静に躱し、打撃を顔、脇腹に与え、怯ませる。そして動きが鈍くなった赤ゴリラの顎に一撃加える。顎が揺れると脳も揺れる。生物の弱点を撃ち抜かれ赤ゴリラの目はグルんと上を向き、そのままズシンッと倒れたのだった。



「討伐」


 倒した赤ゴリラを満足げに見ながら璃緒は頷く。しかし赤ゴリラは気絶させただけで死んではいない。璃緒は落ちていた木の枝に能力を使い硬化させる。


「ごめんな。」


一言呟き、大口を開けて倒れている赤ゴリラにその枝を突き立てた。





 塵となった赤ゴリラをしっかりと見送り、テレポを起動させる。所持TPが1350から1550に増えていた。跳び猿15匹分である。見た目のインパクトは相当だったが、いざ戦ってみると突進と腕を振り回すことしかしてこなかった。冷静に対処すれば倒せなくても攻撃を躱すことは難しくなかった。


「青梨とって帰るか。」


 璃緒は青梨の木に登る。先ほどの戦いはこれのために戦ったのだ。存分に味わおう。ワクワクしながら登っていたが、おかしい。一つも見当たらないのだ。跳び猿と取り合ったときはまだ数個残っていたはずだが・・・・そういえば跳び猿()はどこへ行った?あの時捕まったのは一匹だけだ。しかし朝方に見たときまだ8、9匹はいた。


「まさか・・!?」


 バッと薄暗くなってきている周囲を見渡す。すると少し離れた場所に跳び猿が一匹いた。手には青梨。すると視線に気づいたのかこちらを見る跳び猿。


「ウキッ♪」

 

 それはもういい笑顔だった。ありがとよ!とでも言っているかのように。そのまま跳び猿は逃げるように消えていった。


「あの糞猿次会ったらただじゃおかねえ。」


 結局璃緒が得たものは赤ゴリラの強さと獲得TP量、そしてどっと来た疲れだった。そして拠点に帰った璃緒は食事を済ませ眠りについた。





 3日目の朝。璃緒はTPを確認する。表示されている現在の所持TPは2900となっていた。初日ほどではないが2倍である。このことから考えると1日1500TP貰えるらしい。

 璃緒は刃渡り14cmのペティナイフ(2000TP)を購入した。武器のナイフは5000TP~と高価だが、日用道具の包丁ならば少し安く手に入るということに昨日寝る前に気が付いたのだ。武器として扱うには強度が不安だが璃緒の能力によりその心配はいらない。ベルトの位置に固定しいつでも取り出せるようにしたあと、行動を開始した。


「北、南ときて今日は東側だな。何とかTP稼げたらいいんだが。」


 服もそろそろ替えが欲しいところ。身体は池で洗ってはいるが服は洗っていない。汗も昨日は掻いたので匂いも気になる。サバイバルで贅沢なとは言わないでほしい。TP購入という欲しいものが手に入る今、見過ごせない問題なのだ。

 暫く歩くと、木に飲み込まれた岩が多くなってきた。消えかかっていたり、苔で隠れてはいるが岩には何か模様が描かれている。


「こんなところに人がいたのか?」


 考古学など分からないので状態をみて何年経過しているか知らないが、最近のものではないだろう。新たな発見に少しワクワクしながら進んでいくと木々の数は減っていき、気が付けば石でできた道に躍り出た。


「森の中に何でこんなものがあるんだ?祭壇に続く道って感じだな。」 


 道の片方向は森に飲み込まれていたが、反対方向はしっかりと道は続いていた。取りあえず璃緒はこの道に出てきた目印となるように石を積み上げたり、岩に傷を付けたりしておく。そして周りの景色をしっかりと覚えることで、帰ってきたとき同じ場所から戻れるようにしておく。

 

 石畳の道を進んでいくと見えてきたのは草木に覆われたかなり古いだろう建築物と入口である石造りの門、その先は下に続いているのか暗くて何も見えなかった。


「まさかこんな立派な建造物まであるなんて、いったいどこなんだ?この島。」


 これだけの人工物があるのだ、遥か昔ここに人がいたのだろう。もしかしたらDr.Seedの演出かもしれないが。璃緒は地下には行かず建築物の周りを観察していく。すると裏側に絵が描かれていた。


「これが壁画って言われてるものなのか?初めて見るな。空飛ぶ人が何かを下の生き物に与えてるような絵か。どんな意味だ?」


 その壁画にはその通りの絵が描かれていた。全く持って意味が分からない。まあここに描かれている世界は平和で幸せだったのだろう。そう結論付けて再び入口に戻ってきた璃緒。目の前には地下に続く階段。


「ここは危険を冒すべきではないか。TPが溜まったらまた来よう。」


 そう思い遺跡を(あと)にしようとしたとき。


〈ピコーン・ピコーン〉


「何だ?」


 璃緒のテレポから謎の音が鳴り出した。一体何なんだと開いてみると画面に赤い文字が表示されていた。


〈クエスト発生 マグ・メルト遺跡の最奥に辿り着け〉  

 ・成功報酬1000TP 機能拡張 『地図』 

 ・失敗条件 マグ・メルト遺跡から離れる


「クエスト・・・?」


 突然送られてきたそれは20秒ほどで消えてしまった。しかし画面には通信と購入の他にクエスト受注中と表示されていた。タップするとクエスト内容を確認できるみたいだ。


「この遺跡に何かあるのか?それとこの報酬・・」


 璃緒は報酬の『地図』に悩まされた。この機能はぜひとも取っておきたい。これから鍵を探していく上で必ず必要となるだろうし、いちいち目印をつけなくても拠点に帰ることができるのだ。更に言うとこの地図機能、意外とお高く普通に購入すれば5000TPとなっている。所持TPは900TP。無茶はしたくないが地図機能は欲しい。う~んと璃緒は10分ほど悩み続けた。



璃緒

所持TP900

〔内訳〕 

前日      1350  

ボーナス   +1500

赤ゴリラ討伐 + 150

弁当     - 100

ペティナイフ -2000

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