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箱庭物語  作者: カモミール
第1章 始まるサバイバル
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第5話 ~TP増加と森中の争い~


 サバイバル二日目の朝。璃緒は池で顔を洗い目を覚ました。太陽がまだ上ってきていないので、辺りはまだ薄暗い。今日は青梨(命名)を取りに行った後、昨日より広範囲で探索する予定だ。暫く装備が揃うまでここを中心に行動して『鍵』を探しに行こうと考えていた。

 昨日の記憶と跡を頼りに青梨が生っていた木に到着する。すると昨日には感じなかった甘い匂いが辺りに充満していた。


「あれだけ甘いんだから当然だな。うん、匂いを嗅いでたら腹が減った。早く取ろう。」


 早速木に登る。ここに来てまだ数回だが、だいぶ木に登るのが早くなったと感じる。


「(まるで野生児だな。)・・!?」


 森の中で生活しているのだからあながち間違いではないのでは?木に登りながらどうでもいいことを考えていた璃緒だが、瞬時に木から手を放し飛び降りる。


「何だ?」


 見上げるといつの間にか青梨の木の上に数匹の猿がいたのだ。先ほどは手を引っかかれそうになった。猿たちはキーキーと騒ぎ顔を赤くして興奮している。明らかに歓迎ムードではない。

 

「(刺激するのはよくないか)」


 残念ではあるが今は武器を持っていないし、数の上でも不利なので戦いたくはなかった。そこで相手の様子を窺いながらそろそろと後退していく。猿たちもむやみやたらと襲って来ないみたいだ。非常に残念だが今は諦めるしかないようだった。夕方また来よう。璃緒は振り返り歩き出そうとしたとき、ドンっと何かにぶつかってしまう。


「いたっ、何な・・んだ?」


 木かと思い前を見る赤い何かが道を塞いでいた。訝し気に視線を上に向けると先ほどの猿たちよりも遥かにでかい2m級の赤い猿・・いやゴリラがいた。


「ガァァァアァァ!!」


「ちょ、危な!!?」


 赤ゴリラは腕を振り上げそのまま璃緒に叩き付けようとする。とっさに右に飛び込むことで直撃を避ける璃緒。流石はゴリラといったところか、打ち下ろされた地面は少し凹んでいた。


「っあいつらの親玉かよ!!」


 すぐさま距離を取って赤ゴリラの様子をみる。全身赤い毛で覆われており、腕は左右合わせたら動体よりも太い。完全にこちらをロックオンしているのかじっと見つめてくる。すると両腕を振り上げ胸を叩き出した。ドラミングというやつだろう。


「ゴアァァァ!!」


 そして手をつきこちらに赤ゴリラが突進してくる――――――前に璃緒は一目散に逃げだした。


「(今は無理だ、逃げよう)」


 木の間をスルスルと走り抜ける。本来野生動物に背中を見せるのは危険だったがそんな事を考えていられる余裕はなかった。むしろすぐに動けたことを評価してほしい。自分より大きい獣の雄たけびを目の前で聞いたのだ。気の弱い人なら腰を抜かすだろう。

 赤ゴリラの雄たけびが後ろから聞こえてくるが無視して走る。幸いあまり走るのは速くないのかすぐに引き離すことに成功する。そして璃緒は少し遠回りしながら拠点に到着した。


「ふぅ、やっぱり他の生物いるよな。」


 呼吸を整えテレポを開く。すると右上の所持TPが増えていることに気が付く。昨日の寝る時点では150TPだったが今見ると2150TPになっていた。いきなり10倍以上増えているのである。


「こんなに貰えるのか?だったら確かに飢えることは無いし、思ったよりも不自由はしなさそうだが。」


 まあ貰えるものは貰っておこう。あまり深く考えず、池の水を手のひらで掬い喉を潤す。リンゴ(10TP)を購入し齧りながら川下に向かって歩き出した。


「他の生物がいるとなると、武器は必要か。」


 見たことも無い生き物ではあったが、生物はちゃんと生息している。ならば肉食動物も現れるだろう。そうでなくとも身を守る道具は必要になってくる。そこで璃緒は道具欄からリュックサック(500TP)と革製の手袋(300TP)を購入。まだまだ必要なものはあるが、今はこれくらいしか揃えることができないのだからしょうがない。最低限の準備は良しと、歩き出した。





「ふんっ!!」


「ギッキィ!?」


 飛び掛かってくる猿目がけて拳を叩きこむ。ボキッと何かが折れる手応えと音を最後に猿は痙攣し動かなくなった。川を下ること2時間。璃緒は時たま遭遇する猿に襲われるがすべて返り討ちにしていく。早朝見かけた猿と同じ種類だが酷く弱い。こちらを見ると一直線に飛び掛かってくることしかしてこないのだ。森の中で視界も良くはない状況だが、こいつらは飛び掛かるとき必ず声を出す。最初の方は驚いたが慣れれば問題なかった。あとは動きにタイミングに合わせるだけなので簡単であった。


 璃緒は跳び猿(命名)を倒しながらあることに気づいた。所持TPが少しではあるが増えているのだ。だいたい跳び猿一匹で10TPだ。そのことに気が付いた璃緒は積極的に跳び猿を狩っていった。不思議なことに跳び猿たちは、倒してしばらくすると体が黒い塵のようにボロボロになって跡形もなく消える。本来ならばあり得ない死に方である。恐らくこいつらは生き物ではなくDr.Seedによって作られた何かなのだろう。『生き物を殺す』これがTPを増やす方法の一つだった。


「いい趣味してる。Seedにとってこれは本当にゲームなんだな。」


 ゲームの設定でよくある話である。敵を倒し経験値を得る。経験値がTPに変わっただけ、生きるために殺さないといけない状況に自分が陥るとは夢にも思わなかった。


 そのまま歩き続けるけること1時間、太陽は昇り切っており朝からリンゴしか食べていない璃緒のお腹はさすがに限界だった。森の中を流れる川を下ってきたのだが、周りの景色は特に変わった様子もない。探索を終了して引き返すことにした。適当な木に傷をつけ、昨日の弁当とは違いおにぎり3つ(50TP)を食べながら歩く。そしてそのまま何事も無く時々襲い掛かってくる跳び猿を蹴散らしながら拠点にたどり着いた。



 

 

 日が赤く染まり出した頃、璃緒はもう一度青梨の木に向かっていた。跳び猿は苦も無く倒せることが分かった。問題は赤ゴリラだ。自分より大きい動物と戦うのは出来るなら避けたいところではあるのだが、そうは言ってもTPは稼いでおきたいのだ。跳び猿で10TPならばそれよりも格上であろう赤ゴリラが何TPになるか・・・まあただそれよりも璃緒は青梨が食べたいのだ。一日一個は最低食べたい。


「もし居座っていたら何かで気を引かせて、その隙にってのが定石か?」


 木に隠れ、ソロ~ッと青梨の木を見る。奴はいた。太く枝分かれしている境目で器用に眠りこけていた。木の下には食い散らかされた青梨たちが落ちている。


「・・・あのゴリラ結構食いやがったな、このやろう。」


 青梨の数はかなり減っており下からでは4、5個ほどしか確認できない。朝方は数えきれないほどあったというのに一体どれだけ食べたのか。


「寝ているみたいだから静かに登れば行けるか・・?」


 身を隠しながら青梨の根元に辿り着く。下までくれば赤ゴリラの大きな(いびき)が聞こえてくる。璃緒はゆっくりと慎重に木に登り始めた。


「ゴ、ゴガッ!?」


「!!」


「・・・・ンゴォォォ・・」


「(脅かせるなよ・・)」


 赤ゴリラの高さまで登ったところで鼾が止まるなどヒヤッとする場面はあったが無事通過。そのまま登り青梨に手が届いたと同時に小さな手が青梨を掴む。


「キキ?」


「ん?」


「キキャッ!?」


「お前っ!?」


 恐らく跳び猿も機会を窺っていたのだろう。まさか同じタイミングで同じ実を誰かが手に取るとは予想していなかった。それは相手も同じなのだろう驚いた表情を浮かべ声をあげた。更に残念なことに二人とも青梨から驚いて手を放したのである。丁度下には鼾をかいて寝ている赤ゴリラがおり、落下した青梨が額に見事に直撃する。


「ゴア?」


 目を覚ます赤ゴリラ。そして目の前というのか頭の上には自分の縄張りに侵入している小猿と中猿。怒るのは当たり前であった。


「ガアァアァァァァァ!!」


「仕方ない!」


 赤ゴリラはすぐに手を伸ばし掴みかかってきたが、璃緒は木の上から飛び降りることで回避する。戦うにしても木の上は不利である。地面に着地し振り向いたところに、赤ゴリラが跳び猿をその手に掴んで飛び降り、そのまま力強くドラミングを開始する。握られたままの跳び猿は無残にも潰され塵と化した。


「今度は逃げないからな?さぁ来い!!」


 璃緒は拳を構え赤ゴリラと対峙した。




璃緒

所持TP1350

内訳       2150

リュックサック  -500

革製手袋     -300

リンゴ      -10

おにぎり×3    -50

跳び猿×6     +60


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