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箱庭物語  作者: カモミール
第1章 始まるサバイバル
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第2話 ~楽しむピエロと始まるゲーム~


 Dr.Seedからの説明から10分が経過した。俺は用を足したのち壁に背を預け座っている。他の人たちは部屋を調べる物、蹲って泣いているもの、様々だが不安そうな表情を浮かべ誰も喋らない。それは奴が言った言葉「(あなぁた達に『力』があると言っても・・)」。その言葉が原因だろう。『異端狩り』と『力』。俺が考える通りなら他の人たちも何かしらの『力』を持っていると考えられる。そのことを警戒しているからか迂闊に話す人もいない。きっかけを求めているんだと感じる。

 俺がそう考えていると一人の男が声をあげた。


「みんな!!少しいいか?」


 男は30代後半に見え細身の体つきで眼鏡をかけている、どこにでも居そうな優しそうな男性だった。


「俺の名前は藤原信也ふじわらしんや。金融機関で働いている。みんな何でこんな事になっているのか、分からないと思う。でもこういう時こそ力を合わせて問題に向かわないといけないと思う。あのピエロの言っていることが本当なら俺たちはサバイバルすることになるらしい。俺一人だと正直厳しい。誰か一緒に行動してくれる人はいないだろうか?頼む!」


 なるほど、確かにサバイバルをするにあたって一人より複数人の方が効率がいいだろう。問題はお互いが信用できるかどうかであるが。


 周りはなかなか行動に出れないみたいだった。お互い様子を窺って動かない。男が駄目かと肩を落とした時一人の女性が手を挙げた。


「私、これといった特技ないですけどいい・・ですか?」


不安気に話す女性はだんだんと声が小さくなっている。


「ああ!!勿論さ!!これから頑張っていこう!!他にもいないですか!!」


 男性も了承し握手を交わし、再び周りに呼びかけ始めた。このことをきっかけに様子を見ていた周りでもちらほらと、お互いに声を掛け合っている人たちが増え始めた。

 俺はどうするのかだが、暫くは様子見で一人で行動しようと思う。一人で旅行に行くことなど慣れたものだし、まずは自由に動いてみたいと考えたのだ。何より不謹慎ではあるが少しワクワクしている自分がいる。言っておくが、決して人付き合いが苦手というわけでは無い。得意でもないが。


 しばらく目を瞑り気持ちを静める。


「君はどうするんだい?」


 不意に誰かに話しかけられた。声の方を見ると一人の若い男性だった。肌は日に焼けて黒く、サングラスを頭にかけている。彼は座っている俺に目線を合わせるためかしゃがみ込んできた。


「暫くは1人で行動かな。」


「へぇ、サバイバルの知識とかあるの?」


「いや、ない。」


「おいおい、大丈夫なのかい?それとも自信に繋がる何か(・・)を持っているのかな?」


 明らかに『力』のことを指しているのが丸分かりである。彼も分かって強調して話しているみたいだった。


「なんのことか分からないな。」


「ふふっ。そうかい。」


「君、面白そうだね。一緒に「有難いけど遠慮しておく。」どう・・そうかい。振られちゃったね。」


 男は苦笑いを浮かべ、少し残念そうに立ち上がる。


「じゃあ名前だけでも聞かせてくれる?」


 肌黒にサングラスとワイルドな格好しているくせに喋り方は丁寧な奴ではあるが、嫌な雰囲気ではなかった。


「璃緒。櫻井璃緒さくらい りおだ。」


「よろしく。璃緒君。僕の名前は木谷蓮太郎きたに れんたろうだよ。また何処かで会えたらいいね。」


 木谷はそう言って人が多く集まっている方へ歩いて行った。


「何か・・ね。」


 少なくともあの言い方は木谷も『力』を持っている。もしくは知っていると見て間違いないだろう。やはりここに集められた人たちは全員・・。俺は気合を入れなおし、時間を確認すると丁度30分経過したところだった。そして画面が映し出される。


「やぁやぁやぁ!!皆さんさっきぶりだぁね!!元気にしてた?おトイレは済んだ?気持ちの整理は出来たかぃ?それではサバイバルゲームを始めるよぅ。今から画面に名前が表示された人はこの『パチンッ』扉の前へ来てくれるかぁな?その際チームがいるならその人も一緒に来てくれるかぁな。ではまずこの人から頼むよぉ。」


 指の音と同時に画面側の壁中央に扉が現れる。画面には朝霧柊真あさぎりしゅうまと表示され、青年と呼べるくらいの男がゆっくりではあるが歩いて行く。その後ろには別の男が数人おり、彼らがチームだということが分かった。


「君たちで全員かぁな?」


「ッチ、ああそうだよ。」


「OK、OK。扉Open♪」


ガチャっと鍵が空き合計6人が入っていった。


「さぁ、どんどん行くよ~♪」


 そして人がどんどんいなくなっていく。人数は3分の1程に減り部屋がやけに広く感じる。今のところ最大20人くらいのチームがあり、一人はまだいない。そして表示された名前は櫻井璃緒。つまり俺の名前だった。立ち上がり扉に向かう。


「おやおやぁ~?今回初の一人スタートだぁね?」


「問題ないんだろ?」


「Of course!!さぁ入りたまえ。」


 扉が開き中に入る。暫く薄暗い通路を進むと小部屋に繋がっていた。そして部屋の中央に台座があり、テレポと思われる端末が置いてあった。


「テレポ君を取ってねぇ。」


 台座に近づき端末を手に取る。側面に電源を入れるボタンが付いているだけで他に可笑しな点はない。しかしボタンを押してみても反応しない。


「つかないぞ?」


「大~丈夫、部屋を出たら使えるようになるかぁら。ん、んん。それでは今からワタァシの主催するサバイバルゲームの舞台となる『ティルナノーグ』に行ってもらいます。クリア条件は5つの鍵を集め何処かに持って行くこと。君の知識、経験、力、すべてを駆使してクリアを目指してぇね。君に幸あれ!!」


 Seedが話し終えると部屋中が光り出し目を開けてられなくなった。同時に少しの浮遊感が体を襲う。


「うっ!!」


 数秒程で光が収まり目を開ける。そうして俺の目に映ってきたのは、鬱蒼うっそうと茂る草花や木々。サァッと吹く優しい風の感触。土の香り。どこかで鳴いている鳥の鳴き声。信じられないがどうやら森の中にいるみたいだった。

 振り返ると扉もない。上を見上げても空を覆い隠す木々が見えるだけ。どうやってここに来たのか。先に行った人たちはどうなったのか。同じ場所からのスタートではないか。色々気にはなったが、大方テレポの機能と同じでワープさせたのだろうと軽く流し行動を開始した。今考えるのはそんな事じゃない。現状をどうするかだ。俺にはサバイバルの知識はないが、とりあえず身を隠せるところ。何より水の確保を優先するべきだ、と思う。次に食料。しかしどこへ向かったらいいのか・・。


「考えても仕方ないか。・・・・こっち・・か?」


何となく指をなめ、風が吹いてくる方向と逆に進むことにする。


「それじゃあ、行こうか。」


こうして俺のサバイバルは始まった。



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