1/2
気怠げな血
清野さんから『血、気怠い雰囲気』のお題でショートストーリー。
───そこはあまりにも悲惨で無惨だった。
何かもがごちゃまぜになって最早元の色が見えぬ赤黒い海。その中で唯一綺麗なままの彼は気怠げそうに前髪をかき上げた。露になった片目は見えていた夕焼けの紫色ではなく、まるで今この血の海に染まったかのような鮮やかなそれで。
色々浴びて穢れてしまった相手は思わずゴクリと息を呑んでしまう───彼のそれがあまりにも獣の如くきらめいているから。それでいて惹かれてしまうぐらいに艶を帯びている。
逃げるべきか何故か躊躇ってしまっている相手を見下ろしながら、彼は言った。興奮したふうに声を荒らげて。
「さて…最後に残ったのはお前か…不味そうだが仕方ない……うん、タイミング悪かったな?」
ニヤリと歪んだ黒唇から覗くは対の牙。
「恨むなら、お前を寄越した奴を恨めよ?」
そして、彼は目を細める───とてもとても愉しげに。