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08:『ぱ、ぱいるばんかー・・・(出番がありません)』

 白い髪の女性は王様ではなかった。

 

 「申し遅れました。竜王国第二王女クリスティーナ・アングルと申します。」


 王様ではなくお姫様だ。


 「冒険者のカンイチ・ハチヤです。」


 今居るのはトウキ達の村。その村長の家。

 あの竜(サイカと言うらしい。)の罰と、荷台の保障への保障という事でこうして話し会いの場を求められたのだけど、この村に着いた時はそりゃ大騒ぎだった。


 数年ぶりに帰って来たケインとマリル。

 二人が駆け込んで来ただけでも騒ぎになるのに、近くに竜が出たという大事件。

 対応を話し合っているうちにやって来た4匹の竜。

 場所を貸してくれと頼んだだけなのに村長一同土下座された。今も外は大騒ぎだろう。


 なんか申し訳ない。


 「この二人は私の護衛のセイカとアカリです。」

 「この度は妹がご迷惑をおかけした。」


 深々と頭を下げるのは先程サイカを殴った赤い髪の女性。

 サイカのお姉さんで、サイカが嫌がっていたのもこの女性。おっかないらしい。


 「それは他の方達に言ってあげて下さい。」


 僕は散々言ってもらったし。

 もちろんシェスタにも謝ってもらった。

 そう。決して俺の女を取るなとかではなく、シェスタを侮辱したから怒ったのだ。

 まったくも人を物扱いとか酷いよね?


 ナニルさん達には早馬を出してもらった。

 追いつかないかもしれないけれど、半日も行けば王都なので何かしら反応があるだろう。

 

 そのナニルさん達が来るまでに、サイカが襲って来た一連の流れを説明する。


 「そうでしたか・・・。」

 

 話しを聞き終わってアカリさんが外へ出て行くと、再び岩をぶつけた様な音がなり、引きずられたサイカが連れて来られた。


 「なによー。」

 「何もクソもあるか。お前は暴漢か!」

 「だってー。」

 「言い訳しない。」


 あ、また殴られた。

 人形に成ったサイカは小学生くらいに見える。

 髪の色も目の色も、竜であった頃の鱗と同じ黒色。

 こうして見ると日本人みたいだ。


 「サイカはこの度の武闘大会に出場する為に連れて来たのですけど、初めて国を出た為かちょっと目を離した隙に何処かへ行ってしまいまして。」

 「そして僕達を襲っていたと。」

 「はい。色々と先走ってしまったみたいです。」


 クリスティーナさんの言う所によると、竜族はある程度の年になったら人の世界で何年か過ごし、再び国に戻るらしい。

 その人の世界で過ごす上で決めている事が、パートナーとなる人を決める事。これは、人の世界の常識を知らない竜をフォローしてもらうのと、人との友好を深める目的があるのだとか。

 このパートナーを決める方法はいくつかあるが、大きく分けると二つになる。

 一つは王や親が決める場合。この場合は親のパートナーだった人の一族や、友好国の王族等が選ばれる。

 もう一つは自ら選ぶ場合。こちらは自分で探して出会わなければならないけれど、自ら選ぶ分上手くいく場合が多い様だ。その為、こちらを選ぶ竜が多い。

 そして、サイカも今回こちらを選んだ。彼女が望んだのは強い人間。この要望は少なく無いらしい。強大な力を持つ竜と付合う上では必要になる場合が多いし、赤竜や黒竜は力を望む傾向が多いのも一要因と考えられている。その為、友好国であるユリアス王国の武闘大会に参加して強い人間を見付ける予定だった。これまでも参加してパートナーを見付けた竜がいる為、それを求めて参加する人間も多いのだとか。

 僕は知らなかったけどね・・。


 そんな説明を聞いていると、ナニルさんが戻って来た。

 思っていたよりも早かったのは、逃げ出したけれど追っ手が来ないため、ある程度の距離で留まり王都へ救援を求めつつも僕達の回収を考えてくれていたらしい。


 三度の拳骨と共に謝罪と保障の話しは進み、壊れた馬車とその荷物だけでなく、慰謝料として皆にお金が支払われる事になった。

 一人頭金貨3枚。壊れた馬車に対しては積み荷と会わせて金貨20枚。

 この世界では一ヶ月過ごすのに金貨一枚あればお釣りが出るし、結局誰も怪我をしていなかった為、皆喜んでいた。

 サイカと退治した僕達四人には竜鱗をくれた。

 これまた僕は知らなかったのだけど、竜鱗はその字の通り竜の鱗で一年に一枚剥がれ落ちる。竜鱗は武器や防具に素材として使用される事が多く、その性能は高い。その性能の高さと希少性から高値で取引される。王侯貴族が所有している事が多く、滅多に市場に出回る物ではないらしい。

 売れば金貨100枚は下らないのだとか・・・。


 このように大盤振る舞いしてくれたのには訳がある。

 それは単に口止め料。

 他国において理由も無く暴れたというのは外聞が悪いだけですまないらしいし、竜が恐い物であるとされてしまう事を避けたいという考えもあってのことだそうだ。

 噂は広まるかもしれないけれど、当事者である僕達が黙ってさえいれば少なくとも問題にはならないらしい。

 貰える物を貰ったので言うつもりは無い。


 その夜は村を上げてのお祭りである。

 次期村長候補のケインと村を飛び出た若者が無事帰って来ただけでなく、珍しい竜の客人が泊まり、村には滅多に来ない商人が来て荷物を降ろした。それだけでお祭り騒ぎになるものらしい。

 ちなみにケインが村長候補というのは、ケインのお兄さんがケインが村を出た後、王都に行ってしまったかららしい。なんでも一目惚れで恋に落ちたのだとか。

 四台あった馬車のうち、壊れた一台は荷物ごと村に寄贈する事になった。対価は充分にもらったし、馬車を直す時間がもったいないからだ。そしてもう一台村に置いていく。これは村に残る三人以外から結婚する二人へのプレゼント。コボックも馬車も何かと役に立ってくれるはずと、ナニルさんに相談して決めておいた事だ。

 思わぬサプライズで二人共泣いていた。

 やったね。

 

 二人の結婚を聞いて、クリスティーナさんから送られた宝石の方が高かったけど・・。


 王族には勝てないよね・・・。





 翌日はゆっくり目に村を出た。

 別れがたかったのと、何人かが二日酔いだったから。

 それに半日程で王都に着くから、ゆっくりでも問題ない。


 クリスティーナさん達は先に飛んで行ってしまった。

 サイカの罰に付いては後で知らせてくれるらしい。

 ま、武闘大会ででも会うだろう。











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